「訪問診療」はどんな人が受けられるかご存じですか? メリットも医師が解説

高齢化が進む中で、訪問診療の重要性はますます高まっています。しかし、「訪問診療って高いの?」「実際はどんな人が対象なの?」と疑問に思いながらも、漠然としかイメージできない人も少なくないと思います。そこで、訪問診療の概要や対象者、メリットなどについて「医療法人明医研」の市川聡子先生に解説してもらいました。

監修医師:
市川 聡子(ハーモニークリニック)
訪問診療って? 誰でも受けられるの?

編集部
訪問診療について教えてください。
市川先生
訪問診療とは、医師が定期的に患者さんの自宅や入居施設を訪問し、診察や治療をおこなうことをいいます。患者さんの体調を確認し、必要な検査や医療処置、薬の処方などをおこないながら、病状を管理します。家族や介護者へのアドバイスや精神的なサポートもおこないます。訪問診療を受けていると、医師が普段の体調を把握しているため、急な体調変化時にもスムーズに対応してもらえるというメリットがあります。
編集部
どんな人が訪問診療を受けられるのですか?
市川先生
病状や身体的な理由で通院が困難で、定期的な病状管理を必要とする人が訪問診療の対象となります。例えば高齢で移動が困難な人をはじめ、在宅酸素療法や経管栄養などの医療行為が必要な人、がんなどの疾患で緩和ケアを必要とする人、心身障害を持つお子さんなど、年齢や疾患の種類を問わず、さまざまな人が対象となります。
編集部
訪問診療ではどのような医療が受けられるのでしょうか?
市川先生
「家で受けられる医療」というと、かなり限られた範囲の医療というイメージがあるかもしれません。しかし、血液検査から新型コロナ、インフルエンザなどの検査といった基本的な検査はもちろんのこと、訪問診療の医療機関によっては、簡易的なレントゲンやエコー検査、心電図などもご自宅で受けられます。そのほか点滴や薬の処方、褥瘡(床ずれ)の処置、在宅酸素療法や胃ろうの管理・交換なども自宅で可能です。
訪問診療のメリットを教えて

編集部
訪問診療のメリットはどんなところにあるのでしょうか?
市川先生
移動が困難な人でも自宅で診察を受けられるため、患者さんや家族の負担を減らすことができます。さらに、患者さんの生活環境を医師が直接確認することができるため、生活に即した医療やアドバイスを受けることもできます。また、病院では診療科ごとに診察を受ける必要がありますが、訪問診療の場合、診療科にとらわれない相談ができる点もメリットです。さらに、医師が患者さんの全体像を把握していることにより、看護師や薬剤師、歯科医師、リハビリテーションスタッフなど、ほかの医療職や介護ヘルパー、地域のケアマネージャーとの連携がスムーズになる点もメリットだと思います。
編集部
もし自宅で状態が急変したときなどはどうすればいいですか?
市川先生
体調が急変した場合に備えて、事前に対応を確認しておくことが大事です。多くの場合、訪問診療をおこなっている医療機関や看護ステーションに連絡するなど、何かあったときの連絡先が決まっていると思いますので、そちらに連絡を入れて指示を仰ぎましょう。いざというときも落ち着いて行動できるよう、連絡先は目立つところに貼っておく、家族全員が共有しておくなど、普段から備えておきましょう。病状によっては、「こういう場合は救急車を呼ぶ」と医師から指示されているケースもあります。その場合は落ち着いて救急車を呼びましょう。
編集部
家族と同居していないと、訪問診療を受けるのは難しいのでしょうか?
市川先生
そんなことはありません。訪問診療を受けている一人暮らしの人も大勢いらっしゃいます。患者さん本人が自分の状態をしっかりお話しできる人でない場合は特に、体調をどう把握して医師に伝えるか、医師からの説明をどう家族に伝えるか、緊急時の対応や入室の仕方といった点について、事前に打ち合わせしておくとよいと思います。訪問診療を提供する医療機関やケアマネージャーに相談しながら、最適な方法を考えましょう。
訪問診療はどうやったら利用できる?

編集部
訪問診療を始めるにはどうすればいいですか?
市川先生
「通院が難しい」と感じたら、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。介護認定を受けている場合はケアマネージャーにも相談できますし、介護認定を受けていない場合は地域包括支援センターなどに問い合わせてみるのもよいと思います。
編集部
訪問診療は外来診療よりも費用が高くなるのでしょうか?
市川先生
訪問診療の費用は、患者さんの病状や医療処置、在宅医療を提供する医療機関の体制などによって異なります。詳細は医療機関に確認してみるとよいでしょう。
編集部
最後に読者へのメッセージがあればお願いします。
市川先生
通院が大変になってきたと感じたら、訪問診療を検討する時期かもしれません。まずはかかりつけ医に相談し、選択肢を知ることが大切です。また、将来の治療やケアについての希望を話し合って決めていくことを「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」といいますが、訪問診療の導入を機に、ACPを進める方が多い印象です。訪問診療を進める際には、今後の治療やケアについても、家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
訪問診療について解説していただきました。訪問診療には多くのメリットがあります。通院が難しくなってきたと感じたら、一度かかりつけ医に相談してみると良いでしょう。また、そこから患者さんやそのご家族が、今後の治療やケアの方針を話し合うACPのきっかけにもしていただけたらと思います。
医院情報
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