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多職種連携、チーム医療で患者に寄り添う「在宅医療」とは?【医師解説】

 公開日:2025/05/05

在宅医療では、医師だけでなく、多くの職種が関わりながら患者さんを支えています。多職種が連携することで、より質の高い医療を提供することが可能になります。そこで、在宅医療の現場で具体的にどのような連携がおこなわれているのか、多職種が関わることでどのようなメリットがあるのかなどについて、ハーモニークリニックの中井 秀一先生に解説してもらいました。

中井 秀一

監修医師
中井 秀一(ハーモニークリニック)

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福島県立医科大学医学部卒業。その後、自治医科大学附属さいたま医療センターで初期研修を受け、自治医科大学附属病院でプライマリ・ケアと家庭医療学を学ぶ。2020年、医療法人明医研 ハーモニークリニックの院長となる。日本プライマリ・ケア連合学会新・家庭医療専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本専門医機構認定総合診療専門医、日本専門医機構総合診療専門研修特任指導医、日本リハビリテーション医学会認定臨床医。現在、日本プライマリ・ケア連合学会埼玉県支部支部長も務める。

医師・看護師だけじゃない 在宅医療の多職種連携

医師・看護師だけじゃない 在宅医療の多職種連携

編集部編集部

在宅医療における多職種連携とは何ですか?

中井 秀一先生中井先生

医師を中心に、看護師、薬剤師、リハビリスタッフなどが連携し、患者さんの在宅療養を支える仕組みです。医療職に限らず、ケアマネジャーや訪問ヘルパー、さらには医療秘書、事務スタッフなども連携し、患者さんの状況に応じたサポートをおこないます。

編集部編集部

状況に応じたサポートとは、どういうことでしょうか?

中井 秀一先生中井先生

在宅医療と一口に言っても、治療だけでなく食事やトイレ、服薬などたくさんの要素から成り立っています。治療や日々の全身状態管理などを医師や訪問看護師がおこない、食事や排泄などの介護やケアは訪問ヘルパーが担当し、トイレなど生活における動作訓練は理学療法士や作業療法士、嚥下や言語障害などは言語聴覚士、服薬指導や多処方・残薬などの確認については薬剤師など、それぞれの場面でそれぞれの専門職が介入します。さらに、患者さんの歯などに問題がおきた場合などは、訪問歯科医が介入することもあります。

編集部編集部

それぞれの専門家が関わっているのですね。

中井 秀一先生中井先生

そうですね。現場では、看護師が歩行練習のリハビリをしたり、理学療法士が排泄介助に入ったり、薬剤師が全身状態の相談を受けるなど、各々の専門以外のことを担うなど、全人的に対応が必要とされることもあります。

編集部編集部

なるほど。そうしたサポートがあると安心です。

中井 秀一先生中井先生

さらに、多くのスタッフが関わることで、多方向からの視点で患者さんの状態を把握できるため、例えばAという職種では気が付かなかった細かな状態の変化も、Bという職種が見ることで早期に発見できるなど、見落としのない適切な治療・ケアをおこなうことができます。

チーム医療のメリット

チーム医療のメリット

編集部編集部

ほかに多職種連携にはどのようなメリットがありますか?

中井 秀一先生中井先生

チーム医療では、多くの職種が一人の患者さんに関わるため、支援体制が充実し、より手厚いケアが可能になります。関わるスタッフが多いことで、患者さんと接する時間も増え、より細やかな対応ができるのが大きなメリットです。

編集部編集部

医療と介護の連携も必要なのではないですか?

中井 秀一先生中井先生

その通りです。例えば、医師や看護師が健康状態を確認し、それを基に介護スタッフが生活支援をおこなうことで、患者さんの安全を確保できます。また、介護スタッフが日常の様子を記録し、医療スタッフと共有することで、早期に異変に気づくことができ、迅速な対応が可能になります。

編集部編集部

具体的に、どのように情報共有しているのでしょうか?

中井 秀一先生中井先生

最も基本的な方法は多職種カンファレンスなどによる対面の情報共有です。そのほかにも、訪問診療や訪問看護の記録を電子カルテで共有したり、適宜電話連絡をとったり、そのほかのICTツールを使ったりしながら情報共有することで、より細やかで質の高い医療を提供できています。

多職種のサポートで不安を軽減 在宅医療を始めるには?

多職種のサポートで不安を軽減 在宅医療を始めるには?

編集部編集部

多職種連携に課題はありますか?

中井 秀一先生中井先生

多職種が関わることで、ときに情報共有の難しさや、役割の調整、それぞれの職種のバックグラウンド、個々の価値観などから方針の統一などが課題になることがあります。チーム医療の強みを最大限に発揮するためには、多職種がそれぞれの専門性を尊重しながら対話し、合意を得ながら協力する意識を持つことが重要です。そして何より大切なのは、利用者さん、患者さんを中心に考えることです。

編集部編集部

在宅医療を受けたい場合は、どうすればよいですか?

中井 秀一先生中井先生

まずはかかりつけ医や在宅医療を提供しているクリニックに相談するのがよいでしょう。また、地域包括支援センターなどでも在宅医療の相談が可能です。

編集部編集部

最後に読者へのメッセージをお願いします。

中井 秀一先生中井先生

最近では在宅医療も施設入所者の増加で、訪問施設、複数の訪問看護、介護ステーション、保険薬局と連携するケースも増えており、多施設・多職種連携が重要になっています。利用者中心を常に忘れず、ほかの職種、施設事情も意識しながら地域一丸となって利用者を支えていくことが求められます。当面在宅医療のニーズは増えると予想されますので、教育、人材育成も責務と考えます。早いうちから多職種連携も教育することで、これから先安心できる在宅医療多職種連携が展開されていくことでしょう。

編集部まとめ

多職種が連携することで、より細やかで質の高い在宅医療が可能になります。患者さん一人ひとりのニーズに合わせたサポートを受けるためにも、まずはお近くの在宅医療をおこなっている医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。

参考文献:

医療保健福祉分野の多職種連携コンピテンシー Interprofessional Competency in Japan
https://www.hosp.tsukuba.ac.jp/mirai_iryo/pdf/Interprofessional_Competency_in_Japan_ver15.pdf

厚生労働省「チーム医療の推進について(チーム医療に関する検討会 報告書)」2010.
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0319-9a.pdf

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ハーモニークリニック

ハーモニークリニック
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診療科目 内科、家庭医療・総合診療科、消化器内科、呼吸器内科、脳神経内科、小児科、整形外科、在宅医療

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