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心の病気のリハビリに最適な「ショートケア」をご存じですか? 利用方法と効果を医師が解説

 公開日:2025/08/14

心の病気を抱える人にとって、日常生活に戻るためのリハビリテーションはとても重要です。そういった人のための「ショートケア」は、社会生活機能の回復を目的とし、グループごとに個々の患者さんに適したプログラムを実施する治療法です。具体的にどのようなプログラムがあり、どのような効果が期待できるのでしょうか? 精神科ショートケアの利用方法や効果について、佐竹良樹先生(こころからだクリニック)に解説してもらいました。

佐竹良樹

監修医師
佐竹良樹(こころからだクリニック)

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名古屋市立大学医学部卒業。一宮市立市民病院、豊田厚生病院、松蔭病院などを経て、こころからだクリニックを開院。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医・指導医、日本東洋医学会漢方専門医、臨床心理士。

ショートケアとは? 精神科専門医が解説

ショートケアとは? 精神科専門医が解説

編集部編集部

ショートケアとは何ですか?

佐竹 良樹先生佐竹先生

精神科ショートケアは、精神疾患を持つ人が地域社会に適応しやすくなるよう支援するためのプログラムのことです。デイケアに対して短時間であるためショートケアと呼ばれます。社会生活機能の向上を目的として様々な活動をおこないます。集団心理療法でストレスに対処するためのスキルを学んだり、依存症や死別悲嘆など特定の同じ課題を抱える仲間同士で支え合いながら回復を目指したり、社会生活から離れて久しい人は生活リズムを整えたり、対人リハビリテーション(以下、リハビリ)をおこなったりします。

編集部編集部

どのような人が対象になりますか?

佐竹 良樹先生佐竹先生

精神疾患に悩む人であれば、どのような診断名であっても対象になります。たとえば、うつ病や適応反応症の人は社会復帰に必要な社会的スキルを習得するためのグループワークや認知行動療法などを利用したり、不安症の人は不安との付き合い方を学ぶための認知行動療法や森田療法に参加したりします。自閉スペクトラム症や注意欠如多動症などの神経発達症では、特性を理解し、付き合っていくための特別プログラムをおこなったりします。依存症では同じ問題を抱える仲間と克服に向けてグループワークをしていきます。それ以外にも、ヨガ、マインドフルネスなどのプログラムはとくに診断名に関わらず、心身のセルフケアとして用いられます。

編集部編集部

どのようなプログラムがありますか?

佐竹 良樹先生佐竹先生

たとえば当院でおこなっているプログラムは、大きく4つに分けられます。一つ目は、認知行動療法や森田療法などの集団の心理療法です。人生にストレスは絶えませんが、そのストレスをスパイスとしてうまく付き合い、逆にパワーに変えていけるように支援する講座です。うつ病や適応反応症では、休職前の悪循環に気が付き、復職後にどのようにストレスと付き合っていくのがよいのかなども学んでいきます。二つ目は、特定の悩みや課題を抱えた人のグループです。死別による悲嘆グリーフのグループがこれに当たります。

編集部編集部

対象や目的によって選べるのですね。

佐竹 良樹先生佐竹先生

そうですね。三つ目は、疾患の枠を超えておこなっている心身を整えるセルフケアタイプのグループです。ヨガやマインドフルネスがこれに当たります。ヨガはトラウマの治療にも用いられており、そのような人におすすめするケースもあります。最後の四つ目は、芸術療法のグループです。自分の心のうちを言葉で表すのが苦手な人のための講座で、心理的に安全な場所で自由に表現することで、心の浄化を目指していきます。仲間との関係構築も社会復帰への第一歩になります。

ショートケア、期待できる効果は?

ショートケア、期待できる効果は?

編集部編集部

どのような効果が期待できますか?

佐竹 良樹先生佐竹先生

それぞれのプログラムによっても異なると思いますが、集団の心理療法の最もよいところは、グループでの体験が、自分自身を理解するきっかけになることだと思います。個別の心理療法では得られない集団ならではの気づきがあり、自分の心の癖を相対化・客観視することができ、自己洞察が深まります。

編集部編集部

ほかにはどのようなことが?

佐竹 良樹先生佐竹先生

同じ悩みを持つ人々と交流することで孤独感が和らぎますし、仲間との関わりで対人スキルを構築することにもつながります。同じ悩みや課題を抱えるグループ療法では、とくに「自分だけじゃない」という相互の扶助の心がとても、弱っているときほど助けになります。

編集部編集部

精神科デイケアとは違うのですか?

佐竹 良樹先生佐竹先生

復職準備のリワークを目的とした精神科デイケアは1日単位のプログラムが中心で、朝から夕方まで長時間の支援を受けることができます。一方、ショートケアは短時間のプログラムが主で、比較的気軽に通える点が特徴です。また、ショートケアは比較的少人数でおこなわれるという特徴もあります。

編集部編集部

仕事や学校に通いながらでも利用できますか?

佐竹 良樹先生佐竹先生

可能です。午前・午後のプログラムがあり、スケジュールに合わせて参加できます。就労や通学をしながらリハビリを進めたい人にも適した支援が受けられます。

編集部編集部

すぐに効果を実感できるのでしょうか?

佐竹 良樹先生佐竹先生

効果の実感には個人差がありますが、数週間から数カ月続けることで、少しずつ生活の変化を感じる人が多いです。焦らず、自分のペースで継続することが大切です。

ショートケア、どこで受けられる? 費用も気になる!

ショートケア、どこで受けられる? 費用も気になる!

編集部編集部

ショートケアはどんなところで受けられますか?

佐竹 良樹先生佐竹先生

精神科や心療内科を受診し、医師の判断の下で紹介されることが一般的です。実施している医療機関は限られているため、事前に確認するとよいでしょう。

編集部編集部

どのくらいの頻度で通うのですか?

佐竹 良樹先生佐竹先生

当院の場合は、週に何回という縛りは全くありません。その人にとって必要なものだけに参加してもらっています。週に1回の人もいれば、週4回程度通っている人もいます。個人の状態や目標に応じて調整ができるので、自分のペースで無理なく続けてもらっています。

編集部編集部

費用はどのくらいかかりますか?

佐竹 良樹先生佐竹先生

精神科ショートケアは保険適用のため、自己負担額は3割程度となります。また、自立支援医療制度を利用すれば、1割負担(自治体によって0割)となり、さらに負担を軽減できます。具体的な費用については医療機関で確認してみてください。

編集部編集部

最後に読者へのメッセージをお願いします。

佐竹 良樹先生佐竹先生

精神科ショートケアとは、精神疾患を持つ人が社会に適応しやすくなるよう支援するためのプログラムです。外来治療や薬物療法だけでは不安を感じる人が、生活のリズムを整えたり、対人関係のスキルを身につけたりする場として活用できます。依存症や発達障害など、疾患や目的に応じたさまざまなプログラムが用意されているため、自分に合ったプログラムを受けることが可能です。興味のある人は、まずはショートケアを提供している医療機関を探し、気軽に相談してみてください。

編集部まとめ

ショートケアは、精神疾患を持つ人が社会復帰を目指すための支援プログラムです。保険適用で利用しやすく、就労や通学と両立しながら治療を受けることも可能です。気になる人は、まずはお近くの精神科や心療内科に相談してみてはいかがでしょうか。

医院情報

こころからだクリニック

こころからだクリニック
所在地 〒464-0850 名古屋市千種区今池1丁目2-7 健康文化館7階8階
アクセス 地下鉄東山線「千種」駅より徒歩2分
診療科目 心療内科、精神科、漢方内科

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