頭を打ったときの注意点・対処法はご存じですか? 「頭部打撲」の放置リスクを医師が解説!

頭をぶつけた後に「痛みが引いたからもう大丈夫」と油断している人はいませんか? じつは、痛みが引いたからといって安心できない場合もあるそうです。一体どんな危険があるのか、放置しておくとどんなリスクがあるのかなど、「なかめぐろ脳神経外科・内科 頭痛クリニック」の青山先生に解説していただきました。

監修医師:
青山 尚樹(なかめぐろ脳神経外科・内科 頭痛クリニック)
頭をぶつけたとき、痛みが引いても油断はできない?

編集部
頭をぶつけたときは、痛みが引いても油断はできないと聞きました。本当ですか?
青山先生
はい、頭をぶつけることを「頭部打撲」と言います。頭部打撲の症状は頭を打った直後に出る場合と、しばらくしてから出現する場合があるため、症状がなくても要注意です。場合によっては1~2カ月後に症状が出現することもあります。
編集部
それでは、頭をぶつけたときにはどうしたらいいのですか?
青山先生
まずは、意識がしっかりしているか確認してください。意識の有無は、なかなか評価しづらいかもしれませんが、話しかけてみてきちんと応答があるかどうかで見極めます。また、傷や腫れがあるかも確認しましょう。意識があり、傷や痛みがほとんどない場合には経過観察をおこないます。
編集部
もし、頭が痛む場合にはどうしたらいいでしょうか?
青山先生
頭がズキズキと痛む際は、安静にして様子を見ます。たんこぶができている場合は、冷やすと効果的です。痛みが続くようであれば早めに受診をしてください。
編集部
そのほか、怪我をしているときの対処法はいかがでしょうか?
青山先生
頭から出血している場合、清潔な布で止血します。その後に医療機関を受診し、医師による処置を受けるようにしましょう。
編集部
呼びかけても応答がなければ?
青山先生
意識がない場合にはすぐに救急車を呼んで病院へ搬送します。また、経過観察中、数時間後に何らかの症状が出現することもあります。そうした場合に備え、異変がないかどうか注意深く観察を続けるようにしましょう。
頭部打撲の受診の目安

編集部
頭部打撲の受診の目安を教えてください。
青山先生
例えば、「頭が痛い」「元気がない」「吐き気がある」「嘔吐した」「ものが見えにくい」「耳や鼻から出血がある」といった症状がみられる場合には、できるだけ早く受診してください。「手足がしびれる」「麻痺している」「痙攣(けいれん)がみられる」といった場合にも受診が必要です。
編集部
頭を打った場合、どのような疾患が考えられるのでしょうか?
青山先生
脳震盪や外傷性くも膜下出血、脳挫傷、急性硬膜下血腫や急性硬膜外血腫といった疾患の可能性が考えられます。場合によっては緊急性が高く、命のリスクになることもあります。
編集部
頭を打つことで命に関わることもあるのですか?
青山先生
はい。例えば、急性硬膜下血腫や急性硬膜外血腫は危険性が高い疾患です。硬膜とは脳を覆う3層の膜のうちの1つで、硬膜と脳の間で出血するものを硬膜下血腫、骨と硬膜の間で出血するものを硬膜外血腫と言います。急性硬膜下血腫は受傷直後から意識障害、手足の痺れ、麻痺、嘔吐などの症状がみられることがある一方、急性硬膜外血腫は外傷後数時間が経過してから症状が表れるのが特徴です。場合によっては緊急手術になることもあるので、このような症状がみられたら、ただちに病院へ搬送するようにしましょう。
編集部
そのほかに気をつけたい疾患は?
青山先生
外傷性くも膜下出血はくも膜と脳の間で出血が起こるもので、場合によって入院が必要になります。また、脳挫傷は記憶障害など、高次脳機能障害を引き起こす可能性があります。「嘔吐が続く」「記憶障害がみられる」「痙攣をしている」などは危険な症状の一例であり、これらの疾患のサインかもしれません。症状や事故の状況をしっかり把握し、おかしいなと思うことがあれば早めに医療機関を受診するようにしましょう。
頭部打撲で受診する際の注意点

編集部
頭部打撲の際は、何科を受診すればいいのでしょうか?
青山先生
まずは脳の異常を調べるため、脳神経外科を受診しましょう。そのほか、骨の異常が考えられる場合には整形外科、顔面を打った場合には眼科や耳鼻咽喉科、歯科などの受診を検討する必要があるかもしれません。
編集部
受診の際の注意点はありますか?
青山先生
いつ、どのような状況で、どのようにして頭を打ったのかを正確に伝えられるようにしましょう。特に受傷直後の症状が重要です。現在はしっかりしていても、「受傷直後に意識障害があった」「痙攣していた」などの情報は正確に伝えてほしいと思います。
編集部
頭部打撲では、どのような検査をおこなうのですか?
青山先生
状況によりますが、基本的にはレントゲン検査やCT検査などをおこないます。場合によってはMRIなどの検査が必要になることもあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
青山先生
頭部打撲で受診することが特に多いのはお子さんです。「台から落ちた」「ぶつかった」などの理由で頭をぶつけることが多いのですが、お子さんも大人と同様、意識があり、顔色もしっかりしていて特に怪我がない場合には、ひとまず経過観察をおこなってください。丸1日様子を見て、異常がなければ問題ないと思いますが、万が一、嘔吐したり意識障害がみられたりしたら、すぐに病院へ連絡・受診してください。夜間の場合には、脳神経外科医が当直している医療機関を受診しましょう。そうした病院がみつからない場合にはコールセンターなどに相談し、対応を指示してもらいます。場合によっては緊急の処置が必要なこともあるため、油断せずに少なくとも丸1日くらいは注意深く観察することが必要です。
編集部まとめ
頭をぶつけた場合、頭痛が長引く、意識が朦朧とした状態が続くなどの症状がみられる場合はすぐに受診を。直後は症状がなくても、しばらく時間が経ってから嘔吐などが起きることもあります。特に子どもの場合には自分で症状を適切に訴えることが難しいケースもあるので、周囲の大人が注意して観察することが大切です。
医院情報
所在地 | 〒153-0051 東京都目黒区上目黒3-6-18 WIND NAKAMEGURO BLDG. 3階 |
アクセス | 東急東横線・東京メトロ日比谷線「中目黒駅」 徒歩2分 |
診療科目 | 脳神経外科、脳神経内科 |