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「前庭神経炎」という突然めまいが起こる病気はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/08/09
「前庭神経炎」という突然めまいが起こる病気はご存知ですか?医師が監修!

立ちくらみや貧血など、めまいを経験したことがある人も多いのではないでしょうか。

ひと言でめまいといっても、その症状には「ふらつく」「くらくらする」「バランスがとれなくなる」などがあります。

めまいの症状には思わぬ病気が隠れていることもあり、悪化してしまうと日常生活に支障を来たしかねません。

めまいの症状が出る病気にはいろいろなものがありますが、この記事では前庭神経炎について解説していきます。

前庭神経炎は命に関わるほどの病気ではありませんが、症状や原因について知り、正しい対処方法をしていきましょう。

五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。現在は「竹内内科小児科医院」の院長。日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医。

前庭神経炎 (ぜんていしんけいえん)の原因と症状

横になる

前庭神経炎はどのような病気ですか?

突然強いめまいに襲われ、吐き気や嘔吐が起きる病気です。めまいの症状の中でも前庭神経炎はぐるぐると周りが動いているような回転性のめまいが現れます。原因については後述しますが、めまいが繰り返されることはなく、1度めまいを感じると安静にしていてもなかなか治まらないのが特徴です。
めまいの症状が数日間続く場合もあり、回復後も約60%の人が歩く時に不安定さを感じたり日常生活の中で浮動感をおぼえたりするという報告もあります。症状は次第に良くなっていきますが、1度なってしまうと長期化する病気といえるでしょう。

原因を教えてください。

耳の奥には身体のバランス感覚を調整する、前庭神経と呼ばれる繊細な神経があります。この前庭神経がウイルスや細菌など、なんらかの原因により炎症を起こすことによって引き起こされるのが前庭神経炎です。はっきりした原因は特定されていませんが、前庭神経炎になる人の多くが前駆症状として風邪や上気道感染を発症していているため、ウイルス感染が原因だといわれています。
しかし前庭神経節に潜伏感染している単純ヘルペスウイルス1型(HSV‐1)が起因している症例や、小児の場合アデノウイルス感染が原因とされる症例もあり、原因を1つに絞るのは難しいといえるでしょう。

症状を教えてください。

前庭神経炎の主な症状は、突然起こる「めまい」「吐き気」「嘔吐」です。めまいにはさまざまな種類がありますが、前庭神経炎の場合は回転性のめまいが起こり、ぐるぐると周囲が動いているような感覚になります。歩くときにバランスが取りにくい、浮遊感があると表現される場合もあります。
しばらく安静にして休んでもなかなか治まらず、めまいや浮遊感が数日間続くのが特徴です。メニエール病で併発される耳鳴りや難聴の症状や、脳卒中でみられる意識障害や四肢麻痺はなく重症化するものではありません。また、繰り返しめまいが起きることはなく、1度だけ猛烈なめまいに襲われます。

前庭神経炎になりやすいのはどのような人ですか?

発症年齢は40代から50代に多く、発症する性別の比率に男女差はありません。
前庭神経炎の原因ははっきりしていないとはいえ、めまいが起きる前に風邪や上気道感染になっている方が多いことを考えると、風邪をひいた後などはご自身の体調を注意深く観察する必要があるでしょう。

前庭神経炎 (ぜんていしんけいえん)の診断と治療

救急車

医療機関を受診する目安を教えてください。

突然強いめまいや吐き気に襲われたら動くのをやめ、医療機関を受診しましょう。めまいの症状の中には安静にしていると症状が落ち着くものもありますが、前庭神経炎の場合、安静にしていても良くならないのが特徴です。動くと症状が悪化するだけではなく、前庭神経炎のめまいは猛烈で、救急車で運ばれる方も多くいらっしゃいます。
我慢し続けると回復が遅くなるだけではなく、そのまま入院する方もいらっしゃいます。症状が長引く場合は重大な病気が隠れている可能性を疑い、早めに医療機関を受診するのがよいでしょう。

前庭神経炎はどのように診断されますか?

特徴的な症状である突発性のめまい・強い吐き気・嘔吐がある場合、前庭神経炎と診断されます。原因を探るためにはめまいが起きた時期・耳の聞こえ方・以前に風邪を引いていたかなどを聞いていきます。同じめまいの症状が出る病気の中でも、他との違いは「反応が鈍い」「ろれつが回らない」「難聴・耳鳴り」の症状がないことです。
しかしながら、めまいの症状の中には脳卒中やメニエール病などの大きな病気が隠れている場合がありますので、注意深く原因を探っていくことが大切です。前庭神経炎と判断するポイントはいくつかありますが、他の病気との判別は医師しかできません。自分で判断せず早めに医療機関を受診しましょう。

検査方法を教えてください。

病院での検査には「カロリックテスト」と呼ばれる温度眼振検査が行われます。温度刺激検査とも呼ばれ、耳に刺激をあたえることでめまいを誘発し、どちら側の耳に異常があるのかを診断する方法です。カロリックテストでは冷水または温水を使用して刺激を与えていきます。
異常がない方の耳の場合、体温との温度差で内耳が刺激されめまいが起こります。耳に水を入れると聞くと最初は驚くかもしれませんが、異常が起きている原因を探るために重要な検査です。カロリックテストによるめまいは、数分から数時間でなくなりますので安心してください。

前庭神経炎の治療方法を教えてください。

病院での診察後の治療は症状に合わせて行われます。症状がめまいや吐き気といった場合は、鎮静剤制吐剤重曹などを使用します。炎症が起きている場合に使用されるのがステロイド剤です。
吐き気や嘔吐による脱水症状にも注意が必要で、嘔吐の症状により水分補給が難しい場合には点滴による水分補給の治療も行われます。発症後も約60%の方が歩行時の不安定を感じており、長期的に続くめまいの症状に悩む方も多いことから、症状が落ち着いた後に歩行のリハビリが行われる場合もあります。

前庭神経炎 (ぜんていしんけいえん)の予防

寝る

前庭神経炎は早期発見できますか?

めまいの症状のある病気には「脳卒中」や「メニエール病」がありますが、前庭神経炎との違いはめまい以外の症状の有無で判断できます。脳卒中の場合はめまい以外に意識障害や四肢麻痺の症状があり、メニエール病の場合は難聴・耳鳴り・耳閉感などの症状が現れます。しかし、前庭神経炎にはそれらの症状がありません。
脳卒中やメニエール病に似た症状がなく、強いめまいが1度だけの場合はすぐに病院に行きましょう。自分で判断せずに、しっかりと検査をすることが早期発見に繋がります。

前庭神経炎の予防方法はあるのでしょうか?

先述したようにめまいが起きる原因は、はっきりしていません。風邪や上気道感染を発症しても、前庭神経炎になる人もいればならない人もいます。そのため、具体的な予防方法を示すことは難しいといえるでしょう。
しかし、なんらかのウイルス感染により前庭神経が炎症を起こすという報告があるため、普段から健康管理に気をつけ免疫を高めておきましょう。突然強いめまいに襲われたときに慌てないよう、前庭神経炎という病気を知っておくことも大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

めまいの症状だけを考えると、珍しい症状ではないかもしれません。安静にしていると回復することもあるため、意識障害などが起きなければ、我慢して過ごしてしまう方もいらっしゃると思います。
しかし、放っておくと知らず知らずのうちに症状が悪化し、回復するのに長い時間が必要になるだけでなく、入院することになりかねません。めまいや吐き気などの症状を感じたら、自分で判断せず早めに医療機関を受診しましょう。症状が落ち着いてきたら、平衡感覚を取り戻すためのリハビリも始めていくとよいでしょう。

編集部まとめ

女医
前庭神経炎は、耳の奥にある神経がウイルス感染など何らかの原因により炎症を起こしてしまい、めまい・吐き気・嘔吐などの症状が現れる病気です。

前庭神経炎のめまいは猛烈で、立っていることすらままなりません。安静にしていてもなかなか治まらず、長時間にわたってめまいや吐き気が続きます。

めまいの症状が出る病気にはいろいろなものがありますが、他の病気との違いはめまいに反復性がないこと、意識障害や難聴・耳鳴りなどの症状がないことが挙げられます。

突然、周りがぐるぐると回転するようなめまいに襲われたらパニックになるかもしれませんが、慌てずに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師