レーシックとの比較でわかる「ICL」 角膜を削らない治療を医師が解説【近年注目】
近視を治療する方法はさまざまありますが、なかでも近年注目を集めているのがICL。角膜を削らず、また侵襲が少ない治療法として多くの人が選択し始めています。ICLの内容や特徴、メリットなどについて、きくな湯田眼科の湯田先生に話を聞きました。
監修医師:
湯田 健太郎(きくな湯田眼科)
ICLとはどういうもの?
編集部
ICLとはなんですか?
湯田先生
近視・遠視および乱視矯正を目的に開発された比較的新しい治療法になります。日本では2003年から臨床試験が開始され、臨床成績が良好であることから、2010年に国内において厚生労働省の認可を得ました。
編集部
どのような治療法ですか?
湯田先生
正確には有水晶体眼内レンズといい、文字通り目の中にレンズを埋め込んで、近視などを矯正する治療法です。有水晶体眼内レンズはさまざまな種類が存在しますが、後房(こうぼう)に埋め込むタイプの柔らかいレンズが一般的です。
編集部
もう少し詳しく教えてもらえますか?
湯田先生
目にある茶色い部分を虹彩といい、目の奥にあるラグビーボールのような形をした透明な組織を水晶体といいます。ICLは虹彩と水晶体の間にレンズを固定します。虹彩の裏側を後房といい、その部分に固定されるため外見的にはわかりません。
編集部
そのレンズを固定することで、どのような効果が得られるのですか?
湯田先生
近視や遠視のほか、乱視を矯正することができます。自由診療となりますが、視力の矯正に優れ、術後の見え方の質がよく、患者の満足度も高いことから現在、多くの人がICLを選択するようになってきています。
ICLのメリットとデメリットは?
編集部
ICLはレーシック手術とどう違うのですか?
湯田先生
レーシック手術では角膜をレーザーで削り、角膜の形状を変えることによって視力を矯正します。しかし、ICLでは角膜を削る必要がないため、万一の場合にはレンズを除去することで元に戻せるというメリットがあります。
編集部
そのほか、ICLにはどのようなメリットがありますか?
湯田先生
レーシック手術の場合、角膜が薄い人は手術の適応外となることが多かったのですが、ICLの場合には角膜の厚みに関係なく治療を受けられるというメリットがあります。また、強度近視や強度乱視の場合にはレーシック手術を受けることができませんが、ICLにはそうした制限がありません。
編集部
レーシック手術と比べてさまざまな違いがあるのですね。
湯田先生
そのほかにも、レーシック手術の場合にはドライアイになるリスクがありますが、ICLにはそうした心配が少ないとされています。また、レーシックの場合には視力が回復するまで1週間くらいかかることもありますが、ICLの場合は手術直後からよく見えるようになることもあり、視力の回復が早いのが特徴です。
編集部
安全性はどうですか?
湯田先生
ICLの安全性は非常に高く、生体適合性に優れているので安心して受けることができます。ICLは75カ国で販売されていて、現在、200万人ほどの人が治療を受けているとされています。手術による感染症や合併症のリスクはゼロではありませんが、そうした事象が起きる確率は非常に低いとされています。
ICLの治療を受けるときの注意点
編集部
ICLを受ける上での注意点はありますか?
湯田先生
自由診療となるため、治療費が高額になるという点には注意が必要です。治療費はどのレンズを使用するかによっても異なりますが、両眼で50〜80万円程度が目安になります。
編集部
レンズを入れたあと、手入れは必要ですか?
湯田先生
いいえ、レンズを一旦挿入したら汚れることはないので、手入れの必要はありません。またレンズを使用することによる痛みや違和感もなく、目に優しいとされています。
編集部
そのほかに何か注意点はありますか?
湯田先生
治療後、夜間に光が滲んで見えたり、まぶしく感じられたりする現象が起きることがあります。こうした現象をハロー・グレアといいます。レーシック手術よりも発生の頻度は少ないものの、夜に運転する機会の多い人は注意が必要です。ただし、ハロー・グレアは時間とともに減ってきて、ほとんどの方は半年ほどで目立たなくなります。
編集部
ICLの治療を受けられない人はいますか?
湯田先生
レンズを入れるスペースが狭い人は、治療を受けられない場合があります。また中等度以上の緑内障など、目に疾患のある人も治療を受けられないことがあります。
編集部
ICLはどのような人に適した治療法ですか?
湯田先生
中等度~強度の近視や遠視、乱視に悩んでいる方にはおすすめの治療法です。ただしICLの適応年齢は、原則として21歳以上から45歳程度とされています。あまり年齢が高いと老眼や白内障など、加齢に伴う見え方の変化が起きる可能性があるからです。そのためICLを考えている場合にはできるだけ早めに医師に相談することをおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
湯田先生
前述のICL治療費は高額と感じるかもしれませんが、たとえば1日使い捨てタイプのコンタクトレンズを使用している方なら、10年間分のコンタクトレンズ費用で手術費用が相殺する、といわれています。2週間で使い捨てるタイプのコンタクトレンズなら20年ほどで手術費用と相殺します。長期で考えれば、コストパフォーマンスに優れた治療法です。こうした点も、ICL治療を受けるなら早い方が良いとされている理由の一つ。もしICL治療を受けようか考えている方がいらしたら、一度専門医に相談することをおすすめします。
編集部まとめ
レーシック手術と比べて目の負担が少なく、見え方も優れているICL治療は次世代の視力矯正治療として注目を集めています。世界基準でも安全性が評価されているので、気になる方はぜひ、専門医のカウンセリングを受けてみては?
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診療科目 | 眼科 |