「ICL」は合併症リスクが多い? 安全に治療を受けるための注意点や手術の流れを眼科医が解説!
安全性が高く、近視や乱視などを矯正する治療として注目を集めている「ICL」。しかしその一方、手術後に合併症が起きるといった話もあります。一体、どのようにしたらICLの合併症を防げるのでしょうか。「水天宮藤田眼科」の藤田先生に教えていただきました。
監修医師:
藤田 浩司(水天宮藤田眼科)
ICLの手術の流れ
編集部
ICLの手術の流れについて教えてください。
藤田先生
まずは目薬で瞳孔を拡大させ、点眼麻酔をして角膜の淵を約3mm切開します。その部分からコンタクトレンズを目の中に挿入します。コンタクトレンズはロール状に小さく折りたたんで目の中に入れるため、切開創は小さくて済みます。
編集部
「目の中に入れる」とは?
藤田先生
具体的には、コンタクトレンズを虹彩と水晶体の間に固定します。虹彩は瞳孔の周りにあって茶色く色がついている部分で、水晶体は透明で虫眼鏡のレンズのような形をしている器官です。水晶体は、目の中でレンズの役割を担っています。
編集部
コンタクトレンズを目の中に入れた後は?
藤田先生
瞳孔を収縮させ、手術は終了です。院内でしばらく休んでいただき、目の状態を検査し、問題がなければ帰宅できます。手術時間は、両目で20分程度です。基本的に入院の必要はなく、日帰りで受けることができます。
ICLの手術後の注意点
編集部
ICLの手術後、注意すべきことはありますか?
藤田先生
- 洗髪・洗顔
- シャワー・入浴
- 化粧・アイメイク
- 飲酒
- 運転
- 運動
- プール
編集部
手術当日や翌日、痛みや違和感はありますか?
藤田先生
異物感や充血、かすみがみられることもあります。ただし、傷口が治癒し、炎症が治まることで、時間とともに自然に改善していきます。
編集部
ほかに、手術直後の注意点はありますか?
藤田先生
なかにはレンズを装着したために、一時的に眼圧が上がる人もいます。眼圧が上がると頭痛がしたり、目が痛くなったり、吐き気がしたりするといった症状がみられます。これらを予防するため、当院では事前に飲み薬を服用していただきます。
編集部
視力はすぐに回復するのですか?
藤田先生
手術当日は、あまりはっきり見えないと思いますが、翌朝にはかなり改善しているでしょう。さらに、術後数日くらいでクリアに見えるようになってきます。手術が終わった直後にあまり見えないからといって、心配する必要はありません。ただし、術後1週間くらいは目が炎症を起こしやすくなっており、視力が変動することがあります。時間の経過とともに回復し、視力も安定してきますが、完全に回復するまでは直接目を触らないように注意しましょう。
編集部
ほかに、見え方についての注意点はありますか?
藤田先生
手術後、暗いところで明るいライトなどを見た時に光の周りににじんだ輪が見えたり、ギラギラと光ってとてもまぶしく感じられたりする「ハロー・グレア」という現象が出現するかもしれません。こうした症状の出現には個人差がありますが、多くの場合、手術後数カ月経つと自然と気にならなくなります。
ICLの手術後の合併症リスクは?
編集部
ICLの手術後、ハロー・グレアのほかに合併症が起きることはあるのでしょうか?
藤田先生
原因は不明ですが、稀に眼内炎が起こり、一時的に視力が下がる人もいらっしゃいます。その場合、炎症を鎮めるため、通院治療が必要になります。ただし、炎症がおさまれば視力が戻ることが多いのでそれほど心配はいりません。
編集部
ほかにも、考えられる合併症はありますか?
藤田先生
コンタクトレンズの作用により、長期的に見て眼圧が上がる人がいます。その場合には、稀ですがコンタクトレンズを入れ直す手術をすることもあります。
編集部
「ICLを受けると白内障になる」と聞いたことがあります。
藤田先生
たしかに、ICLが開発されたばかりの頃は手術後、眼内の水の流れが妨げられてしまうことから、水晶体が濁って白内障や緑内障を引き起こす可能性もありました。しかし現在では、コンタクトレンズが改善されたことにより、そのようなリスクはほとんどないとされています。
編集部
そのほか、合併症のリスクはありますか?
藤田先生
稀ですが、外傷などによってコンタクトレンズがずれたり、脱臼したりする「レンズ偏位」になることがあります。レンズ偏位になった場合には、再手術をおこなってコンタクトレンズの位置を修正します。特に、乱視を矯正するためには、コンタクトレンズの位置が非常に重要です。脱臼や外傷をしなくとも、目を少しこするだけで微妙にコンタクトレンズの位置がずれてしまうこともありますし、場合によっては何もしていないのに、コンタクトレンズが回転してしまうこともあります。
編集部
その場合、どのように対処するのでしょうか?
藤田先生
再度手術をして、コンタクトレンズの位置を調整することもあります。ただし、そうしたずれ(軸ずれ)が起きないように当院含め、手術時はずれにくい位置にコンタクトレンズを挿入するといった工夫をしている医療機関もあります。事前に医師に確認することをおすすめします。
編集部
細菌感染などのリスクはありますか?
藤田先生
はい。非常に稀ですが、手術の傷口から細菌が侵入し、感染症を起こす場合があります。そのため、傷口が完全に塞がるまで、約1週間は手で目を触ったり、こすったりしないようにしてください。
編集部
様々な合併症のリスクがあるのですね。
藤田先生
そのほか、コンタクトレンズのサイズが大きいと虹彩を持ち上げてしまうため、眼圧が上がりやすくなりますし、小さいと目の中でずれを起こす原因になります。また、水晶体に触れると白内障になるなど、コンタクトレンズのサイズによって生じる合併症もあります。術後にこうした合併症が起こらないよう、事前にしっかり医師に確認しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
藤田先生
基本的に、ICLは非常に合併症が少ない治療法であり、合併症が起きたとしても一時的なものがほとんどです。視力の改善率が非常に良い優れた手術方法なので、安心して受けてほしいと思います。ただし、術後に何か不安になる症状や痛みなどがあるときは、ぜひ遠慮なく医師に相談してください。
編集部まとめ
安全性に優れ、海外でも広く普及しているICL。しかし、どんな手術にも合併症はつきもので、ICLも同様にそのリスクはあります。不安があれば事前に医師に相談し、問題を解決してから治療に臨むようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町 1-39-5 水天宮北辰ビル7階 |
アクセス | 東京メトロ「水天宮前駅」 徒歩0分 東京メトロ「人形町駅」 徒歩2分 都営浅草線「人形町駅」 徒歩5分 |
診療科目 | 眼科 |