緑内障のレーザー治療や手術を医師が解説 手術のタイプや長所・短所とは?
緑内障は視神経にダメージを与え、放置すると視力低下や失明のリスクを伴う疾患です。そんな緑内障にはいくつかのタイプがあり、また、治療法もいくつか選択肢があるのだそうです。そこで、緑内障のタイプやその治療法などについて、川口前川眼科クリニック蕨院の林雄介先生に解説してもらいました。
監修医師:
林 雄介(川口前川眼科クリニック蕨院)
緑内障ってどんな病気? 医師が解説
編集部
緑内障について教えてください。
林先生
私たちは、目の中の「網膜」という部分に写った映像を視神経から脳に伝えることで、見たものを認識しています。緑内障は、この視神経が障害されて、視野が狭くなってしまう病気です。
編集部
「眼圧」と関係があると聞いたことがあります。
林先生
そういったイメージが強い人もいるかもしれません。確かに、眼圧が高いと視神経が圧迫されてしまうため、緑内障を引き起こします。しかし、実は、日本人の緑内障患者の約70%は眼圧が正常なのにも関わらず、緑内障を発症してしまう正常眼圧緑内障だと言われています。
編集部
それは知りませんでした。日本は緑内障になる人が多いのですか?
林先生
非常に多いと思います。日本人の40歳以上のうち5%(20人に1人)が緑内障を有していると言われており、さらに、この割合は、年齢が上がるにつれて増加していきます。また、日本人の中途失明(生まれつきではなく、病気や事故などによって目の機能が著しく低下して、日常生活に支障をきたした状態)原因の第1位というデータもあります。
緑内障は治るの? 治療法を教えて
編集部
緑内障の治療について教えてください。
林先生
緑内障の治療は眼圧を下げて、視力や視野を維持することが目標となります。つまり、狭くなった視野を元に戻して緑内障自体を治すのではなく、あくまでも緑内障の進行を遅らせることが治療の目標になります。
編集部
具体的にどのような治療があるのですか?
林先生
緑内障の治療は基本的に、目薬などの薬物療法から始めます。点眼による治療で十分に眼圧が下がらない場合などには、レーザー治療や手術なども検討されます。
編集部
それぞれについて教えてください。
林先生
薬物治療では、1日1~数回の点眼を行います。眼圧の高さは、目の中にある「房水(ぼうすい)」の流れ具合によって決まるのですが、まずはこの房水で圧がパンパンにならないように「房水の排出を促す目薬」や「房水の産生を抑える目薬」などを使って眼圧を抑えていきます。
編集部
目薬での治療の注意点はありますか?
林先生
患者さんの中には「自覚症状がないから」という理由で治療を中断してしまう方もいらっしゃいますが、先述の通り完治する疾患ではないので、基本的には継続的な治療が必要です。一度、緑内障と診断された人は、症状がなくても治療を継続することが大事です。
緑内障手術ってどんな手術? 種類があるってホント?
編集部
では、レーザー治療について教えてください。
林先生
「房水」は、「隅角(ぐうかく)」というところから目の外に排出されるのですが、この「隅角」が狭くなると、房水が排出されにくくなり眼圧が上昇します。この「隅角」を広げたり、目詰まりを取ったりして房水の排出をスムーズにするために、レーザーが用いられることがあります。
編集部
緑内障の手術はどんな手術ですか?
林先生
方法としては①隅角の「線維柱帯」を切開して房水の排出を促す「線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)」と、②房水を流す排出路を作る「流出路再建術(トラベクロトミー)」の2種類があります。
編集部
どのような違いがあるのですか?
林先生
①の線維柱帯切除術の方が、眼圧を下げる効果は高い一方で、②の「流出路再建術(トラベクロトミー)」は、近年眼内法による低侵襲緑内障手術が主流となり、手術の侵襲が少なく短時間でできるという長所があります。また、白内障手術と同時手術をすることも増えています。くわえて、近年では様々な手術デバイスも開発され、小切開緑内障手術のバリエーションもさらに増えています。それぞれにメリット・デメリットがありますので、手術をする際は医師とよく相談した上で術式を決めていただけたらと思います。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージをお願いします。
林先生
緑内障は視野が徐々に狭くなるため、自覚しにくい病気です。これは、水晶体がゆっくりと濁っていく白内障も同様です。そのため、眼科検診や健康診断を通じて、こうした目の疾患を早期に発見し、早期に治療することが重要になります。また、緑内障の治療は一度開始したら、自己判断で中断せず、医師の指示に従って継続することが大切です。目の健康を守るためにも、40歳を過ぎたら定期的な眼科受診を心がけましょう。
編集部まとめ
緑内障のタイプと治療法について解説していただきました。緑内障には、薬物療法やレーザー治療、手術など、病状に応じた治療が行われますが、最も大事なのは、早期に発見し、適切な対処をすること、そして治療を継続することなのだそうです。視野の狭まりや視力の低下は、進行するまで自覚しにくいため、病気の早期発見のためにも、定期的に眼科検診を受けましょう。
参考文献:
医院情報
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診療科目 | 眼科 |