【闘病】定期的に眼科検診を受けながら「緑内障」になっていたワケ
スポーツをしていると、ある種「怪我はつきもの」と考えられていますが、その多くの場合「治るもの」というイメージだと思います。今回は、怪我をして整形外科を受診したところ、遺伝性の病気を指摘され、そこから思わぬ形で「緑内障」という完治しない病気が発覚したというNorikoさん(仮称)に、これまでの話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年12月取材。
体験者プロフィール:
Norikoさん(仮称)
1974年生まれ。北海道在住。職業は会社員。2019年12月に緑内障と診断され、治療が始まる。現在は、レーザー治療の効果が出なかった為、再度新しい点眼薬にて治療を続けている。
記事監修医師:
伊藤 裕紀(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
目次 -INDEX-
膝の怪我で受診したら…
編集部
緑内障の診断に至るまでの経緯を教えてください。
Norikoさん
小学生のころからバレーボールを続けていて、社会人になってからもミニバレーをしていたのですが、ある時、膝を怪我してしまって、整形外科に行ったのです。そこでレントゲンを撮ったところ、膝蓋骨と呼ばれるいわゆる「膝のお皿」が低形成だと言われ、爪の形成不全もあったので「ネイルパテラ症候群」ではないか、と言われました。
編集部
緑内障は眼の病気だと思いますが、それは関係があるのですか?
Norikoさん
初めて耳にする病名だったので、自分で病気の事を調べていると、爪や膝のほかに、肘関節や骨盤の骨にも異常が見られるといったほか、「緑内障の発症率が高い」と書いてありました。なんとなく気になって眼科を受診し検査したところ、すでに緑内障を発症している事がわかりました。緑内障は何らかの原因で視神経に障がいが起きる病気で、眼圧が高くなるのが要因のひとつと言われています。本当に少しずつ視野が狭くなっていくほかには目立つ症状もないため、気づいた時にはかなり病気が進行しているといったケースも多いようです。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
Norikoさん
緑内障で一度傷ついた視神経は、回復することがなく、完治することのない病気だそうです。進行を食い止める、または遅らせることが治療目標となるので、まずは毎日の点眼で眼圧を下げ、定期的に検査で視野の状態を見ていくと言われました。
編集部
そう告げられたときの心境を教えてください。
Norikoさん
治ることはないのか、これから一生点眼していかなきゃいけないんだな、と少し落ち込みました。でも自覚症状がない状態でわかって、早く治療に入れたことは本当に良かったと思いました。あとは、コンタクトレンズをしているので、定期的に眼科で検診も受けていましたが、何も指摘されることはなかったので、すでに緑内障を発症していたという事実に驚きました。自分から「緑内障の検査をしてほしい」と言い出さないと緑内障の診断に必要な検査がそもそも行われないことが多く、診断に至らない可能性があるのだということを皆さんにも知ってもらいたいです。
進行性の病気
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
Norikoさん
現在は緑内障専門診療をしている病院に通院しています。2年間、きちんと点眼治療を続けていましたが視野欠損の進行は止まらず、少しずつ進んでいるようです。先日行ったレーザー治療の効果も出ておらず、今は新しい目薬で様子を見ているところです。膝の怪我に関しては、半月板損傷との診断を受け、手術をすることになりました。術後の経過も順調で、リハビリに通いながら少しずつ活動性を高めているところです。
編集部
レーザー治療も受けられたのですね。
Norikoさん
緑内障と言われて2年程たった定期検査時、今までの視野検査の結果を振り返ってみたところ、特に右の視野障害がかなり進んでいました。これ以上進むと生活に支障が出てくる可能性があるので、レーザー治療を試したいと先生からお話がありました。緑内障と診断された時、眼圧は24mmHgもあったのですが、点眼治療を始めてから17〜18mmHgまで下がり安定していました。しかし私の場合、視野欠損の進行が止まらないため、レーザー治療をしてもう一段階眼圧を下げたいとの事でした。
編集部
具体的にはどのような治療になるのですか?
Norikoさん
まず、点眼麻酔をしたあと、暗室で眼に小さなレンズを当て、眼の一部にレーザーを照射するという治療でした。治療前に準備の点眼をして1時間置き、数分間レーザーを当てて、また1時間後に眼圧を測定するという流れでした。まずは右眼を行なって、10日後に左眼も受けました。治療をしても3割くらいの人には効果が出ない、と事前に説明を受けてはいました。残念ながら私の場合も治療後全く眼圧が下がらず、新しい点眼薬でもう少し様子を見て、それでも進行が止まらないようなら手術になるかもしれないと言われました。
編集部
病気の前後で変化したことを教えてください。
Norikoさん
緑内障は症状がほとんどないため自分から検査をしなければなかなか見つかることはなく、症状がかなり進まないと気づきません。その上、症状は進行することはあっても軽減することはない、ということから、周りの人達に自分の病気の話をして、検査を促すようになりました。特に、40歳を過ぎると発症率は上がるそうです。また、先ほどのレーザー治療は、健康保険の3割負担でも3万円、両眼で6万円と少し高額な治療ですが、手術扱いになるようなので、加入していた医療保険でカバーされました。緑内障と診断された後では入れる医療保険が限定されるので、保険の重要性も感じました。
医師も患者側も知識は大切です
編集部
今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?
Norikoさん
自分の知識がなかった為、緑内障の検査をするという発想は今まで全くありませんでした。検診は毎年受けてはいたのですが、緑内障に限らず、年齢的に注意した方が良い病気や受けておいた方が良い検査などの知識を持っているべきであったと後悔しています。また、膝のリハビリをしながら感じたことは、大人になってからのスポーツは準備体操や筋トレなどを十分に行わずにプレイに入ることが多かったと反省しています。体の使い方の癖をそのままにしていたことも怪我につながったのではないかと思います。再発防止のためにも、筋肉をつけ、正しく体を使うということがとても大切だと感じます。
編集部
医療機関や医療従事者に望むことはありますか?
Norikoさん
私はたまたま膝の怪我をした時に、「ネイルパテラ症候群」というかなりレアな遺伝性の病気を指摘され、そこから緑内障が発覚しました。実を言うと、それまでも膝のレントゲンは何度か撮っていたのですが、指摘をされたことはありませんでした。ネイルパテラ症候群は、海外では5万人に1人、日本ではもっと少ないという珍しい病気で、先生によっては病気自体を知らないそうです。そのため、膝のお皿や爪を見ても気づかない人の方が多い、と言うネット投稿を目にしたことがあります。私の場合は、運良く素晴らしい医師に出会い、指摘をしてもらったおかげで、緑内障にも気付く事が出来ました。怪我をしてこの先生に出会わなければ、私は今でも緑内障に気づかず、もしかしたら失明していた、なんて事もないとは限りません。先生が幅広い知識を持っていると、専門外の病気が見つかり、救われる患者がいるという事を是非知ってもらいたいと思います。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
Norikoさん
緑内障はゆっくり進行することも多いのですが、痛みなどが生じることは少ないため、気づいていない方が沢山いる可能性があります。特に私の場合は、コンタクトで定期的に眼科検診を受けていたにも関わらず、緑内障の診断に必要な検査は行われませんでした。一度ダメージを受けてしまった視神経は回復する事はないですが、早期発見ができれば、早期治療につながり、失明に至る確率を減らすことができます。40歳を過ぎたら、また家族に緑内障を発症している方がいたら、緑内障の可能性が高くなることを考えて定期的に緑内障の検査や健康診断の眼底検診を受けることを強くおすすめします。
編集部まとめ
一般的に、結膜炎などの診察やコンタクトレンズの定期検診の際に、緑内障を調べる眼圧、眼底検査をするとは限らないそうです。そのため医学的知見が浅い私たちが、「眼科で何も言われていないから緑内障の不安はない」と考えてしまうのは危険かもしれません。緑内障は、進行してからでないと症状が現れにくい病気です。Norikoさんが言うように、早期発見のためにも、意識して検査や健康診断を受けた方が良いでしょう。