「頻尿」の原因はご存じですか? トイレが近いときの対処法や膀胱訓練のやり方を医師が解説!
トイレの回数が多く、「乗り物に乗れない」「旅行に行けない」などの悩みを抱えている人はいると思います。しかし、頻尿は膀胱訓練をおこなうことで改善が期待できることをご存じですか? 今回は、膀胱の正しい訓練法を「成増まちかど泌尿器科」の永田先生に教えていただきました。
監修医師:
永田 卓士(成増まちかど泌尿器科)
目次 -INDEX-
なぜ、頻尿は起きる?
編集部
トイレの回数が多くて悩む人がいますが、一体なぜでしょうか?
永田先生
トイレの回数が多くなることを頻尿と言い、その原因は様々です。例えば、男性の場合は「前立腺肥大症」が原因となって頻尿を引き起こしていることがあります。また、男女ともに「過活動膀胱」が原因となって頻尿が生じていることもあります。
編集部
それぞれについて、もう少し詳しく教えてください。
永田先生
まず、前立腺肥大症は男性特有の疾患であり、膀胱の隣にある前立腺という臓器が加齢とともに少しずつ大きくなることで尿道が圧迫されて、尿が出にくくなります。放置すると膀胱の機能が低下して、やがて腎臓の機能障害が起きることもあります。
編集部
過活動膀胱についてはいかがでしょうか?
永田先生
簡単に言うと過活動膀胱は、膀胱が老化など様々な影響を受け、落ち着きをなくす状況を指します。そのため、尿のたまり具合とは別に突然の強い尿意を感じることがあり、そのような状況を「尿意切迫」と呼んでいます。
編集部
最近、過活動膀胱という病名を耳にする機会が増えました。
永田先生
現在は高齢化に伴い、過活動膀胱に悩む人の数が増えています。また、前立腺肥大症の患者さんの多くが過活動膀胱も併発しています。そのため、男女とも過活動膀胱の患者数は増加しており、日本排尿機能学会の報告によると「40歳以上の日本人男女で過活動膀胱のある人は14.1%に及ぶ」とされています。高齢になるほど患者数は多くなります。
過活動膀胱の原因は?
編集部
なぜ、老化によって過活動膀胱が起きるのでしょうか?
永田先生
膀胱や尿道などのほか、女性であれば子宮を支える筋肉である「骨盤底筋」が老化で弱くなることによっても起こります。加齢によって骨盤底筋が衰えると、尿道を締める力が弱まって、尿漏れや頻尿の原因になります。
編集部
男性の場合、なぜ前立腺肥大症が過活動膀胱の原因になるのですか?
永田先生
前立腺肥大症によって尿道が圧迫され、尿の勢いが弱くなると、膀胱は一生懸命尿を出そうとして、いわば働きすぎの状態になります。すると、膀胱に負担がかかって膀胱の筋肉が異常な働きを見せるようになり、少しの刺激にも過敏に反応をするようになって、過活動膀胱になるのです。
編集部
過活動膀胱を放置するとどうなるのですか?
永田先生
過活動膀胱を放置すると、トイレが心配で外出することが苦手になったり、仕事に集中できなくなったりして、QOLが著しく低下します。また、自分で過活動膀胱と思っていても、じつは尿管結石や膀胱がんなどが原因となって頻尿が起きていることもあります。
編集部
受診の目安は?
永田先生
排尿回数が1日に8回以上だったり、夜間に2回以上トイレで目を覚ましたりする人は、念のため泌尿器科を受診することをおすすめします。そのほか、尿意切迫がある人も受診した方がいいと思います。
過活動膀胱の治療法
編集部
過活動膀胱は、どのようにして治療するのですか?
永田先生
一般的にはまず、薬物療法がおこなわれます。カプセルや錠剤など飲むタイプの薬と、皮膚に貼るタイプの薬があり、これによって膀胱の過活動を抑えて症状を和らげます。そのほか、行動療法として膀胱訓練や骨盤底筋体操があります。
編集部
膀胱訓練はどのようにしておこなうのですか?
永田先生
簡単に言うと、排尿の間隔を少しずつ長くしていき、膀胱が尿を溜める力を養っていく訓練です。はじめはトイレへ行きたくなっても5分我慢して、それを1週間続けたら、翌週は10分我慢してみるなど、少しずつ我慢の時間を伸ばしていきます。
編集部
どれくらい我慢できればいいのですか?
永田先生
一般的には、2〜3時間程度我慢できるのが目標とされています。膀胱訓練をおこなうときには、排尿した時間や尿量などを記録する排尿日誌を一緒につけると、自分の排尿の傾向をつかみやすく、さらに効果が期待できるようになります。
編集部
骨盤底筋体操についても教えてください。
永田先生
文字通り、骨盤底筋を鍛える体操です。肛門を引き締め、陰部を引き上げる体操をおこなうと骨盤底筋が鍛えられ、過活動膀胱の改善を見込むことができます。骨盤底筋体操と聞くと「女性がおこなうもの」というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、実際には男性でも効果が期待できます。
編集部
膀胱訓練や骨盤底筋体操で改善が期待できるのですね。
永田先生
ただし、これらの行動療法をおこなっても、あまり効果が出なければ、膀胱がんなどの疾患が隠れていることも考えられます。気になったら医師の診察を受けましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
永田先生
頻尿の改善には、膀胱訓練や骨盤底筋体操が有効である一方、すぐには効果が出ないかもしれません。特に、加齢が原因の場合にはなかなか期待した効果が得られず、途中で諦めてしまう人も少なくありません。しかし、これらの訓練や体操は長期的におこなうことが大切です。気長に、そして気軽な気持ちで続けていきましょう。しばらく続けても効果がみられない場合は、ぜひ泌尿器科へご相談ください。
編集部まとめ
頻尿のために外出できないなど、日常生活で困っていることがあれば、まずはセルフケアとして、骨盤底筋体操や膀胱訓練を始めてみるのがおすすめとのことでした。生活習慣として定着すれば、やがて効果が期待できるかもしれません。しかし、それでも改善がみられなければ、積極的に泌尿器科へ相談してみましょう。
医院情報
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診療科目 | 泌尿器科 |