その肘・肩の痛み、パソコンの使い過ぎかも!? 「マウス肘」「マウス肩」の症状・対処法を医師が解説!
パソコンを使うことで、資料作りや調べ物など、私たちの作業は格段に楽になっています。しかしその一方で、長時間のパソコン作業による体の負担に悩む人も多いのではないでしょうか。現代社会では、マウスによるパソコン作業で肘や肩を痛める人が増えています。今回は、マウスの使用によって肘や肩を痛める原因や症状、そして対策などについて、「とだ小林医院」の小林 慎一郎先生に解説していただきました。
監修医師:
小林 慎一郎(とだ小林医院)
パソコンの使いすぎで肘・肩が痛くなる!?
編集部
パソコン作業で体が凝ってしまいます。
小林先生
現代社会において、そういう悩みを抱える人は非常に多くいらっしゃいます。パソコン操作の有無にかかわらず、デスクワークを長時間続けていると血行が悪くなり、「筋疲労」が溜まってしまいます。
編集部
座って作業しているだけでも筋疲労になるのですか?
小林先生
そうですね。筋疲労と聞くとスポーツや肉体労働など、体を動かした後に起こるイメージがあるかもしれませんが、じっとしていても起こります。筋肉は動かさないでいると血流が悪くなり、硬くなって凝りが生まれるからです。それに加えて、パソコン操作という動作を続けていると、「パソコン作業に特徴的な症状」が出てくることもあります。
編集部
パソコン作業に特徴的な症状とは?
小林先生
「マウス肘」や「マウス肩」と呼ばれる症状が挙げられます。痛みや凝りだけでなく、動かしにくさや痺れなどを生じることもあります。また、肩や肘だけでなく、手首に症状が表れる「マウス腱鞘炎」と呼ばれるものも出てきています。そして、これらを総称して「マウス症候群」と呼びます。
編集部
パソコンやマウスの使い過ぎで起こる疾患なのですか?
小林先生
基本的にはそうですね。いずれも正式な病名・疾患名ではありませんが、パソコンやマウスの使い過ぎで、似たような症状を訴える人が多いことから、このように呼ばれることがあるのです。
「マウス肘」「マウス肩」とはどんな状態?
編集部
マウス肘について詳しく教えてください。
小林先生
マウス肘の多くは、外側上顆炎などの「OVERUSE(使い過ぎ)」に起因する症状です。肘の周囲に痛みやこわばりを感じるようになり、悪化すると前腕の張り感なども強くなります。さらには、手先にも影響を及ぼすこともあり、物を握ったり持ち上げたりする際にも支障をきたします。
編集部
マウス肩についてはいかがでしょうか?
小林先生
いわゆる肩凝りですね。肩から首にかけての筋肉が凝り固まる感覚があり、次第に痛みを生じるようになります。悪化すると、首や肩の可動域制限を起こすこともあります。
編集部
マウス肘やマウス肩になりやすい人の特徴はありますか?
小林先生
パソコン・マウスを長時間使う人はもちろんのこと、パソコン作業時、より体に負担のかかる姿勢をしている人は特になりやすいと思います。首の角度が少し前のめりになるだけで、首への負荷がかなり増大します。ほかには、筋力が少ない人もなりやすいですね。女性は僧帽筋の発達が弱いので肩凝りをきたしやすいです。
「マウス肘」「マウス肩」を放置するとどうなる? 予防法や対処法は?
編集部
マウス肘やマウス肩は、放置しても大丈夫ですか?
小林先生
可能な範囲でパソコン作業を控えて、こまめに休息をとれば、徐々に改善することもあります。しかし、多くの人は痛みを抱えながらパソコン作業を続けざるを得ないため、症状が徐々に悪化することが考えられます。また、肘や肩だけでなく自律神経にも影響を及ぼすこともあり、頭痛や吐き気、様々な自律神経症状などが出現することも考えられるので要注意です。
編集部
そうならないためには、どうしたらいいのでしょうか?
小林先生
まずは、パソコン作業を長時間続ける場合は、1時間続けたら休息をとることを意識してみましょう。1回大きく伸びをするだけでもかなり変わると思います。また、可能であれば少し歩くとさらに効果的です。少しでも痛みや違和感があった場合は、しばらくパソコン作業をお休みした方が、長い目で見ると作業効率が上がると思います。それでも症状が出る場合は、医療機関を受診しましょう。
編集部
医療機関ではどのようなことをするのですか?
小林先生
医療機関にもよると思いますが、例えば私の治療方針としては、凝りを緩和してなるべく早期に除痛をはかることを第一としています。疼痛が改善されたら理学療法士や作業療法士などによるリハビリテーションやストレッチの指導、生活指導などをおすすめしています。適切な治療をすることで、スムーズな職務復帰が目指せます。
編集部
実際のところ、マウス肘やマウス肩に悩んでいる人は多いのでしょうか?
小林先生
はい。最近、デスクワーク関連でのマウス肘やマウス肩の受診が増加しています。また、姿勢不良による頚部痛も非常に多く、小学生が受診するケースもあるほどです。マウス肘やマウス肩は、スマホやデスクワークによる現代病のような印象です。そして、レントゲンなどの画像検査ではあまり目立った異常がないので、痛み止めや湿布などで放置されてしまうことも多い病態です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
小林先生
「肩や肘の痛み程度で受診するのは気が引ける」と思う人は多いかもしれません。特に仕事を休まないと受診する時間が取れない人は、仕事が滞ってしまうことを心配して放置しがちです。しかし、将来的に痛みなどで仕事ができなくなったり、仕事はできてもパフォーマンスが著しく落ちたりする可能性を考えると、やはり早めの受診がおすすめです。仕事のパフォーマンスを保つためにも、定期的なメンテナンスや早めの受診を心がけ、早期の改善を目指してほしいと思います。
編集部まとめ
パソコンの使いすぎによるマウス肘やマウス肩について解説していただきました。どちらもパソコンを長時間使用することが原因で発生することが多いとのことでした。適切な姿勢の保持や定期的な休憩などで、ある程度の予防や症状の改善が期待できます。対策を講じても痛みが続く場合や症状が悪化する場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
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