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「出生前診断」の5つの検査方法とは? NIPTや羊水検査などの精度やリスクを医師が解説

 公開日:2024/10/10

出生前に、赤ちゃんの遺伝的な異常を見つける検査を受けるか迷っている妊婦さんも多いのではないでしょうか。実際のところ、様々な検査項目があり、どれを受けたらいいのか迷っている人も少なくないでしょう。そこで、出生前診断の5つの検査方法の特徴や内容を解説します。「ミネルバクリニック」の仲田先生が各検査のリスクを含め、わかりやすく説明していただきました。

仲田 洋美

監修医師
仲田 洋美(ミネルバクリニック)

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高知医科大学医学部(現・高知大学医学部)卒業。その後、高知医科大学内科・外科、兵庫医科大学病院臨床遺伝部などで経験を積む。2014年、「新宿ミネルバクリニック」を開院。2018年、「ミネルバクリニック」を北青山に移転、現在に至る。日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医。

出生前診断の種類

出生前診断の種類

編集部編集部

まず、出生前診断について教えてください。

仲田 洋美先生仲田先生

赤ちゃんを出産する前に、病気がないか、何かリスクはないか、などを確認する検査です。出生前診断により、赤ちゃんの状態に合わせた分娩方法や子育て環境を、事前に考えることができる点がメリットとして挙げられます。

編集部編集部

具体的に、どのような検査があるのですか?

仲田 洋美先生仲田先生

大きく分けて、以下の5種類があります。

  • 羊水検査
  • 絨毛(じゅうもう)検査
  • クアトロテスト
  • 胎児ドック
  • NIPT(新型出生前診断)

編集部編集部

いくつか種類があるのですね。

仲田 洋美先生仲田先生

はい。様々な出生前診断の分類法があります。代表的なものに「母体や胎児に対して侵襲的であるかどうか」といった分類法があります。なぜこうした分類がされるのかというと、検査の中には子宮に針を刺すなど侵襲性の高いものもあるからです。そのため、侵襲的検査と非侵襲的検査に分類されるのです。

編集部編集部

そのほかにも、分類する方法はあるのですか?

仲田 洋美先生仲田先生

検査をおこなう目的によって分類するやり方もあります。ある検査では胎児の病気の可能性を見つけることができますし、またある検査では、胎児の病気を確定することができます。そのため、出生前診断は「非確定検査」と「確定検査」の2つに分けることができます。

出生前診断の様々な検査方法

出生前診断の様々な検査方法

編集部編集部

非確定検査には、どのようなものがありますか?

仲田 洋美先生仲田先生

主におこなわれているのが、クアトロテスト、胎児ドック、NIPTです。クアトロテストは、妊婦さんの血液を採取して、血液中に含まれる4つの成分を調べる検査です。これにより、21トリソミーや18トリソミー、開放性神経管奇形などのリスクを調べます。

編集部編集部

トリソミーとはなんですか?

仲田 洋美先生仲田先生

トリソミーとは、染色体が通常より1本多く、3本ある状態のことです。よく知られている先天的な疾患にダウン症がありますが、これは21トリソミーと言われ、21番染色体が1本余分にあることで発生します。

編集部編集部

続いて、胎児ドックとは何ですか?

仲田 洋美先生仲田先生

超音波(エコー)を使用して、お腹の中の赤ちゃんに健康状態や先天性の異常があるか、調べる検査のことを言います。一般的な妊婦健診よりもさらに詳しく胎児の状態を調べるもので、赤ちゃんの骨や脳、心臓の発達や発育に異常はないか、むくみや形態異常がないか、などを見つけることができます。妊娠中期からは、トリソミーなど染色体異常を見つけることもできます。

編集部編集部

最後に、NIPTについても教えてください。

仲田 洋美先生仲田先生

母体の血液から胎児の染色体異常、主にトリソミーの可能性について調べる検査です。具体的には母体から採血した血液のなかに浮遊しているDNAの断片を測定します。これにより、染色体異常を原因とする疾患リスクを判定するのです。NIPTでわかることは非常に多く、また検査精度が高いのが特徴です。

編集部編集部

検査精度はそれぞれ異なるのですか?

仲田 洋美先生仲田先生

はい。非確定検査のなかでは、NIPTが最も精度が高くなります。クアトロテストの場合、的中率は7割程度とされており、また、年齢が高くなると確率も高く出てしまうというデメリットがあります。加えて、胎児ドックは胎児が先天性異常を持つ可能性が高いかどうかを確認するためのものであり、染色体異常を調べる精度はNIPTに劣ります。

編集部編集部

NIPTの的中率はどれくらい高いのですか?

仲田 洋美先生仲田先生

施設によって幅はありますが、9割以上の的中率とされています。

編集部編集部

これらの検査にリスクはないのですか?

仲田 洋美先生仲田先生

血液を採取するだけなので、特にリスクはありません。もちろん、注射をするときに多少の痛みを感じるかもしれませんが、胎児に対してもリスクになることはありません。

確定検査の精度とリスクは? いつ、どの検査を受ければいい?

確定検査の精度とリスクは? いつ、どの検査を受ければいい?

編集部編集部

一方、確定検査にはどのようなものがあるのでしょうか?

仲田 洋美先生仲田先生

一般的におこなわれているのは、羊水検査と絨毛検査です。羊水検査はお腹に針を刺して羊水を採取する検査である一方、絨毛検査は胎盤の一部である「絨毛」に針を刺して採取して調べる検査です。どちらも胎児の細胞や胎盤の成分を採取して調べるので、検査の精度が非常に高いという特徴があります。

編集部編集部

どれくらい精度が高いのですか?

仲田 洋美先生仲田先生

一般に羊水検査では、ほぼ100%の的中率とされています。その一方で、絨毛検査は羊水検査と比べて的中率が劣るとされています。なぜなら、絨毛検査では胎盤の組織の一部である絨毛から細胞を採取して検査しますが、絨毛は完全に胎児由来のものではありませんし、胎児と胎盤では異なる染色体型を持つことがあります。例えば、胎児だけがトリソミーで胎盤は正常な場合もあります。この場合は絨毛検査では見つかりません。また、正常と異常が混ざった状態である「モザイク」という結果が絨毛検査で出た場合、実際に赤ちゃんがどういう状態かを知るために、赤ちゃんの細胞が取れる羊水検査をすることになります。羊水検査の方が精度は高いので、現在では「NIPTで異常が見つかったら羊水検査が推奨される」というのが一般的な流れになっています。

編集部編集部

NIPTで異常があったら、必ず羊水検査を受けなければいけないのですか?

仲田 洋美先生仲田先生

いいえ、必ずしもそういうわけではありません。なぜかというと、検査で細胞を採取するため、0.1〜0.3という非常に低い確率ではあるものの、流産する可能性はゼロではありません。医療機関によっては、NIPTで異常があったら羊水検査を推奨しているところもありますが、私は「羊水検査を受けるかどうかは妊婦さんやご家族の判断に委ねるべき」と考えています。

編集部編集部

そもそも出生前診断を受けるかどうかや、NIPTで異常が見つかったときに確定検査を受けるかどうかなどは、妊婦さん自身の判断に委ねられるべきなのですね。

仲田 洋美先生仲田先生

そう思います。出生前診断を受けることによって胎児に異常が見つかった場合、「心の準備をすることができてよかった」という人もいれば、「異常について知りたくなかった」と後悔する人もいます。そのため、出生前診断を受けるかどうかはパートナーとよく話し合い、万が一、異常を指摘されたときにはどう対応するかなど、事前に検討しておくことが大切です。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

仲田 洋美先生仲田先生

たしかにNIPTは有用な検査ですが、その一方で「NIPTを受けたら胎児ドックは不要」と考えている人も少なくありません。しかし、NIPTと胎児ドックは調べる対象が異なります。NIPTでは染色体や遺伝子の異常を見つけることができますが、胎児ドックでは染色体異常などに由来しない形態異常といった先天的な問題を見つけることもできます。そのため、「妊娠初期ではNIPT、18週くらいの中期になったら胎児ドック」を受けるのが理想と考えています。たとえ胎児ドックで異常が見つかっても、実際には問題がないものも多く含まれています。あまり心配しすぎず、安心して出産に臨むために検査を受けてほしいと思います。

編集部まとめ

出生前診断には様々な検査方法がありますが、必ずしも受けなければならないものではありません。受ける目的や、万一異常を指摘されたらどうするかなど、しっかり決めてから検査を受け、その結果を出産に役立てるようにしましょう。

医院情報

ミネルバクリニック

ミネルバクリニック
所在地 〒107-0061 東京都港区北青山2-7-25 神宮外苑ビル1号館2階
アクセス 東京メトロ「外苑前駅」 徒歩1分
東京メトロ「青山一丁目駅」 徒歩9分
東京メトロ「表参道駅」 徒歩11分
診療科目 遺伝子診療外来、内科、呼吸器内科

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