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「胎児ドック」と「出生前診断」の違いを医師が解説 検査を受ける上で知っておきたい大事なコト

 公開日:2023/11/07
「胎児ドック」と「出生前診断」の違いを医師が解説 検査を受ける上で知っておきたい大事なコト

妊娠はとても喜ばしいことですが、その反面お腹の赤ちゃんが元気かどうか気になるでしょう。赤ちゃんの健康状態を調べるには、通常の妊婦検診のほかにも胎児ドックと出生前診断などがありますが、はたして何が違うのでしょうか。今回は、胎児ドックと出生前診断の違いを「ミネルバクリニック」の仲田先生に、解説していただきました。

仲田 洋美

監修医師
仲田 洋美(ミネルバクリニック)

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高知医科大学医学部(現・高知大学医学部)卒業。その後、高知医科大学内科・外科、兵庫医科大学病院臨床遺伝部などで経験を積む。2014年、「新宿ミネルバクリニック」を開院。2018年、「ミネルバクリニック」を北青山に移転、現在に至る。日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医。

出生前検査・胎児ドックとはどのような検査なのか

出生前検査・胎児ドックとはどのような検査なのか

編集部編集部

まず、出生前検査について教えてください。

仲田 洋美先生仲田先生

出生前検査とは、出生前に胎児の状態を確認する検査で、検査方法がいくつかあります。例えば、NIPT(新型出生前診断)は、母体の血液から胎児の染色体異常、主に「トリソミー」の可能性について調べる検査です。通常2本で1対の染色体が、何らかの要因で、3本で1対となる状態がトリソミーで、何番目の染色体にトリソミーがあるかによって、出現する病気は異なります。具体例を挙げると、13番はパトー症候群、18番はエドワーズ症候群、21番はダウン症候群となります。

編集部編集部

胎児ドックでは何を調べるのですか?

仲田 洋美先生仲田先生

出生前検査の一種が胎児ドックで、赤ちゃんの「姿」を詳細に見ていくことで、形態的な異常を発見する検査です。通常の妊婦検診で受ける超音波(エコー)検査の、より詳しいバージョンだと考えていただければと思います。より詳しく丁寧に、鮮明な画像で、赤ちゃんの骨や脳、心臓の発達や発育、むくみや形態異常を見つけることができます。また、妊娠中期からは、トリソミーのような染色体異常を見つけることも可能です。

編集部編集部

どんな人が受けるのですか?

仲田 洋美先生仲田先生

出生前検査は、やはり赤ちゃんの先天性の病気を気にされている人が多く受けています。また、高齢で妊娠された方も出生前検査を受けられる人が多くいらっしゃいます。高齢での妊娠は、赤ちゃんの染色体異常のリスクが高まるとされているためです。そのほか、以前の妊娠で赤ちゃんに疾患が見られたり、上の子どもに発達障害や先天性の病気があったりして、胎児ドックを受けようと決めたケースも多いようです。

出生前検査とは? 検査の種類をご紹介

出生前検査とは? 検査の種類をご紹介

編集部編集部

出生前検査には、種類があるのですか?

仲田 洋美先生仲田先生

そうですね。出生前検査には、胎児の病気の可能性がわかる「非確定的検査」と、胎児の病気を確定する「確定的検査」の2つに分けられます。胎児ドックは、前者の非確定的検査に分類されます。あくまでも「病気の可能性」の検査であるため、病気を確定するには確定的検査を受けていただく必要があるのです。

編集部編集部

具体的に、どんな検査を受けるのですか?

仲田 洋美先生仲田先生

厚生労働省は確定的検査として、「羊水検査」と「絨毛検査」を挙げています。羊水検査はお腹に針を刺して羊水を採取する検査で、絨毛検査は胎盤の一部である「絨毛」に針を刺して採取して調べる検査です。

編集部編集部

羊水検査や絨毛検査と比べたとき、胎児ドックのメリットとデメリットを教えてください。

仲田 洋美先生仲田先生

胎児ドックはお腹の中にいる赤ちゃんの姿をはっきりと確認できて、お腹に針を刺す羊水検査や絨毛検査と違って子宮に侵襲しないため、流産あるいは死産の危険性が低い点がメリットです。一方で、羊水検査や絨毛検査、新型出生前診断と比較すると精度が低いこともあり、病気を確定することはできないというデメリットがありますね。ただし、「無脳症」など、脳や心臓などの重要な臓器に明らかな形態異常が見つかった場合は、羊水検査や絨毛検査を待たずに確定診断となることもあります。

編集部編集部

検査を受けられる時期も違うのですか?

仲田 洋美先生仲田先生

胎児ドックが受けられる時期は比較的幅が広く、妊娠初期(妊娠10〜13週)、妊娠中期(妊娠18~20週)、妊娠後期(妊娠28~30週)の期間で受けることができます。例えば、妊娠初期は首の後ろのむくみなどを確認、中期だと臓器が形成されているかの確認というように、同じ胎児ドックでも目的が異なっているからです。ほかの出生前検査だと絨毛検査が11~14週、羊水検査が15~19週と、時期が約1カ月に限定されていますね。

編集部編集部

出産前から色々な方法で、赤ちゃんの健康状態を知ることができるのは便利ですね。

仲田 洋美先生仲田先生

そうですね。医療技術や医学研究の進歩により、妊婦さんは出産前の時点で多くの情報が得られるようになってきています。しかし、検査を受ける前に知っていただきたいことや、考えておいていただきたいことがたくさんあります。

出生前検査を受けるにあたって、私たちが考えるべきこととは

出生前検査を受けるにあたって、私たちが考えるべきこととは

編集部編集部

どんなことを考えておく必要がありますか?

仲田 洋美先生仲田先生

まず出生前検査は、胎児の状況を正確に知り、将来の予測を立てて妊婦とパートナーの意思決定を支援することを目的とする検査です。検査を受ける妊婦さん、そして家族やパートナーが、「出生前検査がどのような検査か」を正しく理解した上で、検査を受けるかどうかを判断していただきたいですね。結果が「陽性」だった場合、パニックになったり、妊娠の継続を望めなくなったりしてしまう人もいらっしゃいます。また、夫婦での意見の対立も起こり得ます。検査を受ける医療機関は、陽性になったときのサポート体制がどのようになっているかを、必ず確認して選んでください。

編集部編集部

例えば、どんなサポートがあるのですか?

仲田 洋美先生仲田先生

当院では、検査で陽性となった場合、無料で何度でも相談に乗る体制を取っています。本当は相談したいのに「お金がかかるのであれば、自分たちでなんとか決めよう」と、お金が理由で躊躇するケースも多いので、無料で対応しています。また、不安でいっぱいであるにも関わらず、「産婦人科医に落ち着いて相談できない、言いたいことが言えない」という声も現場ではよく耳にします。そんなときに「出生前診断のトレーニングを受けた臨床遺伝専門医に、何度でも話を聞いてもらえる」だけで、少しでも不安が和らぐのではないかと思っています。実際、米国産婦人科学会のガイドラインでは「胎児染色体異数性のスクリーニング検査結果が陽性であった患者は、遺伝カウンセリングを受け、結果を確定するための診断検査の機会を持つ包括的な超音波評価を受けるべきである」と、カウンセリングの大切さを謳っています。

編集部編集部

サポート体制が整っている医療機関で受けるのがいいのですね。

仲田 洋美先生仲田先生

「NIPTを受けたら胎児ドックは要らない」と思っている人もいるかもしれませんが、NIPTでわかることと胎児ドックでわかることは違います。例えば、「二分脊椎」や「先天的な心臓の奇形」は、超音波検査で見ないとわかりません。また、重要な臓器に形態異常がないかは、妊娠初期にはわからないことが多いので、初期の胎児ドックで問題がなくても、妊娠中期以降に再度胎児ドックを受けることをおすすめします。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

仲田 洋美先生仲田先生

どんな検査であろうと「100%」ではないことをご理解いただきたいです。「100%大丈夫」という考えで臨むと、いざ生まれた子どもに異常があった場合、「こんなに検査したのに!」と、より大きな衝撃を受ける可能性があります。実際に「4人目を妊娠中で、妊婦健診のエコーは異常なしだったけれど、上の3人とは違う。赤ちゃんがむくんでいる」という患者さんが来院しましたが、その子どもは結局ダウン症候群でした。妊婦健診のエコーは短時間で赤ちゃんの大きさや心拍など大まかな所しか見ていないため、こうしたことも起こり得るのです。「妊婦健診でエコーしているから大丈夫」ではなく、きちんと専門家のもとで胎児ドックを受けてほしいと思います。

編集部まとめ

今回は、胎児ドックと出生前検査の違いについて解説していただきました。赤ちゃんの状態が出産前にわかるのはとても便利ですが、検査を受ける前に考えなくてはならないことや知っておかなければいけないこともたくさんあるようです。「こうすれば正解」という答えはありませんが、後悔のない選択ができるよう、まずは信頼できる医療機関を見つけるのが重要ですね。

医院情報

ミネルバクリニック

ミネルバクリニック
所在地 〒107-0061 東京都港区北青山2-7-25 神宮外苑ビル1号館2階
アクセス 東京メトロ「外苑前駅」 徒歩1分
東京メトロ「青山一丁目駅」 徒歩9分
東京メトロ「表参道駅」 徒歩11分
診療科目 遺伝子診療外来、内科、呼吸器内科

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