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新出生前診断の年齢制限を撤廃へ

公開日:2022/03/01

妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新出生前診断について、日本医学会の運営委員会は35歳以上に限ってきた検査を35歳未満にも認める新たな指針を公表しました。このニュースについて前田医師に伺いました。

前田 裕斗 医師

監修医師
前田 裕斗 医師

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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

日本医学会による新出生前診断の新たな指針とは?

日本医学会の運営委員会が新たに示した指針の内容について教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

今回、日本医学会の運営委員会が示した新たな指針は、妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新出生前診断についてのものになります。これまでは検査対象年齢を35歳以上に限っていましたが、新たな指針では35歳未満にも認める形になりました。

新指針では検査の主な対象として、胎児のダウン症などのリスクが上がる高齢の妊婦や母体結成マーカー検査で胎児が染色体異常を有する可能性が示唆された妊婦、過去に染色体異常のある子どもを妊娠した経験がある人などが記載されていますが、遺伝カウンセリングを実施しても不安が解消されない場合は、本人の意思決定が尊重されるべきであるとして、対象年齢が全年齢に変更されました。

新たな指針では実施にあたって、この診断はマススクリーニングとして一律に実施されるものではなく、あくまでも選択肢の1つであることを説明する必要性や母体年齢が低下するほど陽性的中率は低下し、偽陽性例が増えるなどの検査の限界を十分に説明することが必要であるとも指摘しています。

新出生前診断とは?

今回、新しい指針が示された新出生前診断について教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

新出生前診断は、妊娠10週以降の早い時期に妊婦の血液に含まれる胎児のDNAを調べ、ダウン症などの原因になる3種類の染色体異常を判定する検査です。確定診断には羊水検査が必要となります。日本では2013年に導入されましたが、日本産科婦人科学会は対象者を原則35歳以上とするなど限定し、認定を受けた施設でのみ実施を認めてきました。

新たな指針の受け止めは?

今回示された新出生前診断の新たな指針への受け止めを教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

個人的には望ましい動きであると感じます。そもそも、新出生前診断の存在自体に生命倫理の観点から異論があると思います。しかし、検査そのものが存在する以上、染色体異常に不安を持つ妊婦さんが検査を求めることは避けられません。結果としてこれまで35歳未満で検査を希望する人が、本来認定されていない施設で新出生前診断を受ける事態が多発しました。そのような施設では十分に、場合によっては全く説明のないまま検査結果のみが渡され、その解釈がわからない妊婦さんが困って認定施設に解説してもらいに訪れるという混乱がこれまでしばしば見られました。そうした事態を防ぐためにも年齢制限撤廃はいい流れであると考えます。なお、検査は説明とセットでおこなわれることが原則です。新出生前診断も同様に、必ず検査に対する説明を受け、理解した上で受ける必要があります。対象年齢制限が撤廃された今後は一層、新出生前診断について理解して受けてもらう体制作りが進むことでしょう。

まとめ

妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新出生前診断についてこれまで35歳以上に限ってきた検査を35歳未満にも認める新たな指針が出たことが今回のニュースで明らかになりました。新たな指針を示した日本医学会の運営委員会は、適切な遺伝カウンセリングを通じて十分な情報提供をおこない、検査を受けない選択肢も提示するなど丁寧に対応したいとしています。