「血尿」が出る原因はご存じですか? 考えられる病気や対処法も医師が解説!
トイレで血尿が出たら、誰でもドキッとするもの。血尿が出る原因には様々なものがあり、それに応じて対処法や治療法も変わります。今回は、血尿の原因や治療法について、「きたじま腎泌尿器科クリニック世田谷烏山院」の北島先生に解説していただきました。
監修医師:
北島 和樹(きたじま腎泌尿器科クリニック世田谷烏山院)
血尿が出る原因は?
編集部
血尿について教えてください。
北島先生
尿の中に赤血球が混ざっている状態を血尿と言います。血尿は、腎臓や尿路など泌尿器系に何らかの異常が起きているサインなので、適切な治療を受ける必要があります。
編集部
尿が赤かったら「血尿が出た」と考えていいのでしょうか?
北島先生
そうとも限りません。血尿には、「肉眼的血尿」と「顕微鏡的血尿」の2種類があります。肉眼的血尿とは、実際に目で見て血尿を確認できるものです。場合によっては、尿中に血の塊が見えることもあります。
編集部
もう一方の顕微鏡的血尿とはなんですか?
北島先生
目で見てわかる肉眼的血尿とは異なり、顕微鏡で調べなければ血液が混ざっていることに気づかないタイプの血尿を、顕微鏡的血尿と言います。その多くが健康診断でおこなう尿検査で判明し、陽性と判断されます。
編集部
目に見えて血液が確認できないからといって、油断はできないのですね。
北島先生
そのとおりです。例えば、膀胱がんの約85%は肉眼的血尿により発見されますが、顕微鏡的血尿もがんをはじめ、重要な疾患のサインであることが少なくありません。そのため、健康診断などの尿検査で陽性と判断された場合には、さらなる検査が必要となります。
血尿は病気のサイン!? どんな病気が考えられる?
編集部
血尿には、どのような原因があるのですか?
北島先生
血尿が出る原因には様々なものが考えられます。そもそも人間の尿は、腎臓で作られて腎盂(じんう)から尿管を通り、膀胱へ送られます。そして、膀胱から尿道を通って排尿されます。この経路を「尿路」と言い、血尿が出るということは尿路やその周囲になんらかの異常があるということです。そのため、様々な部位で原因が考えられます。
編集部
具体的に、どのような病気が隠れているのでしょうか?
北島先生
例えば、腎臓の病気では「腎炎(IgA腎症など)」「腎臓結石」「腎がん(腎細胞がん)」などの疾患が考えられます。そのほか、腎臓内の血管に異常があるときに、血尿がみられることもあります。
編集部
腎臓以外では?
北島先生
尿路に異常がみられる場合、血尿が出ることもあります。具体的には、「尿路感染症(腎盂腎炎・膀胱炎)」「尿路結石(尿管結石・膀胱結石)」「腎盂尿管がん」「膀胱がん」などが原因として考えられます。
編集部
ほかにもありますか?
北島先生
男性の場合、男性の生殖機能と深い関わりを持つ「前立腺」に異常があると、血尿が出ることもあります。前立腺は膀胱や尿道と隣り合わせているため、「前立腺炎」「前立腺肥大症」「前立腺がん」などの疾患があると、血尿を起こしやすくなるのです。
血尿が出たときの対処法
編集部
血尿が出たらどうすればいいのでしょうか?
北島先生
血尿が出たり、健康診断などで陽性反応が指摘されたりしたら、早めに泌尿器科を受診しましょう。泌尿器科では精密な尿検査のほか、「超音波検査」もおこなって血尿の原因を確認します。
編集部
精密な尿検査では、どのようなことを調べるのですか?
北島先生
例えば、尿に含まれる赤血球や白血球の数値を調べる「尿沈渣(ちんさ)検査」をおこないます。また、「尿細胞診検査」で尿中にがん細胞が含まれているかを調べることもあります。
編集部
検診などでおこなう尿検査よりも、さらに細かいことがわかるのですね。
北島先生
はい。尿沈渣検査では尿路上皮細胞を直接見ることができるので、異形細胞があるかどうか、すなわち、がんがあるかどうかを調べることもできます。場合によっては、尿沈渣検査は尿細胞診検査よりも精度が高く、がんの有無を見つけられることもあります。
編集部
一方、超音波検査ではどのようなことがわかるのですか?
北島先生
腎臓や膀胱、前立腺などを超音波で観察し、腫瘍や結石の有無、前立腺の大きさ、膀胱内の残尿量などを調べます。なんらかの疾患が疑われた場合には、腎炎の有無を調べる血液検査や尿生化学検査、腫瘍や結石を確認するCT検査やMRI検査、膀胱内を直接観察する内視鏡検査など、必要に応じて詳細な検査をおこないます。
編集部
様々な検査が必要なのですね。
北島先生
そうですね。これらの検査は侵襲性が少なく、体への負担がほとんどありません。そのため、特に構えることなく、気軽な気持ちで受診していただければと思います。
編集部
原因を確認してから治療を始めるのですね。
北島先生
はい。特に肉眼的血尿は、がんをはじめとする重要な疾患のサインとされています。早期発見が最大の治療効果を生むのは、医学が進歩した今でも変わらない大原則なので、症状が重くならないうちに治療をおこなうことが大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
北島先生
血尿が出たのが一度だけでも、そのまま放置せずに泌尿器科を受診することが大切です。特に40代以降の男性で、喫煙習慣のある人は「尿路悪性腫瘍」になりやすいので、1回の血尿でも検査をした方がいいでしょう。その際、かかりつけの泌尿器科でもいいのですが、より精度の高い結果を得るためには、「尿沈渣検査をおこなっているか」と「内視鏡の設備が整っているか」の2点に注意し、受診先を選択するのがおすすめです。
編集部まとめ
精密検査と聞くとドキッとして、つい二の足を踏む人も多いと思います。しかし、早期発見・早期治療には、今回紹介した検査が欠かせません。異常が見つからなかった場合には安心して日常生活を送ることができるので、一度でも血尿が出たら念のため検査を受けましょう。
医院情報
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診療科目 | 泌尿器科 |