尿の出方がおかしいのは病気のサイン! これってホント?
もし、尿を出しきれていない感じや勢いのなさ、頻繁に訪れる尿意などの自覚があったとしたら、医師に診てもらうべきでしょうか。こうした、加齢や体調の変化でも起こりそうな泌尿器系の兆候について、「くぼたクリニック松戸五香」の窪田先生に解説いただきました。
監修医師:
窪田 徹矢(くぼたクリニック松戸五香 院長)
獨協医科大学卒業。国立病院機構千葉医療センター、成田赤十字病院にて研修。その後、国保松戸市立病院(現・松戸市立総合医療センター)泌尿器科、千葉西総合病院泌尿器科などの勤務を経た2017年、千葉県松戸市に「くぼたクリニック松戸五香」開院。地域に根差したおもいやりの医療を提供している。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医、日本プライマリ・ケア連合学会、日本透析学会正会員。
「ホース」と「蛇口」の組み合わせで考える
編集部
病気などの体調の変化は、尿に現れるものでしょうか?
窪田先生
健康診断の項目に「尿検査」がありますよね。このように、尿は病変の指標として用いられます。ただし、病気とは関係のない水分摂取量や代謝の変化、運動量などによっても変わりますので、「尿の様子が普段と違う」=「病気である」とは言いきれません。
編集部
尿の様子というと、色や成分の話ですよね?
窪田先生
健康診断でおこなう尿検査の観点は「色や成分」ですね。例えば、尿に血液が混じる尿潜血が認められた場合、膀胱や尿道などの炎症を疑います。また、尿の「出方」も、気を配るべきサインです。
編集部
出方というと、つまり尿の「勢い」ということでしょうか?
窪田先生
「勢い」と「量」の両方です。勢いについては、水道のホースを思い浮かべてみてください。ホースの途中に詰まりが起こったり、管が狭くなったりするとチョロチョロとした細い水流になってしまいます。
編集部
なるほど。「量」の変化についてはいかがでしょうか?
窪田先生
こちらは水道の「蛇口」に例えられるでしょうか。膀胱の弾力が失われて硬くなると、十分に収縮できず、尿を出しきれません。元栓が十分に開いていないようなイメージですね。また、「過活動膀胱」により頻繁に尿意を感じるようになると、1回あたりの排尿量が減少します。
「勢い」と「量」の変化から考えられる各疾患
編集部
では、いよいよ出方に関わる各疾患です。代表的なところを教えてください。
窪田先生
まず、勢いはあるのに量が少ない場合は、「過活動膀胱」かもしれません。蛇口そのものは元気ですが、頻繁に開閉しているようなイメージです。原因としては、結石による刺激や心因によるものなどが考えられます。
編集部
逆のパターンで、勢いがなくチョロチョロとした尿がずっと続く場合は?
窪田先生
男性の場合は「前立腺肥大症」や「前立腺がん」が疑われます。前立腺は尿道を囲むように位置していますので、異常が起こると、尿道を圧迫しかねません。その結果、尿の出にくさや残尿感といった自覚が出ます。ほか、女性を含めると、「神経因性膀胱」が考えられます。これは、膀胱と脳の情報交換がうまくいかなくなる神経障害の一種で、ストレスや事故などをきっかけとして発症します。
編集部
勢いと量、どちらも少ないとしたら?
窪田先生
蛇口もホースも異常だとしたら、「過活動膀胱」と「前立腺異常」の併発かもしれません。ただし、前述のように、尿の出方は水分摂取量や生活習慣によっても左右されます。病名にこだわることなく、いつもと違った尿の状態が続いていたら、遠慮なく受診してみてください。
編集部
いつもと違う状態といえば、ときどき尿が二股に分かれることがあります。
窪田先生
考えられるのは、やはりホースの異常ですよね。前立腺は、水分やお酒の摂取によってむくむことがあるので、「ときどき」であれば気にしないでいいでしょう。二股の状態がずっと続くようであれば、「前立腺肥大症」や異物混入の可能性があります。
放置していると、自分で尿を出せなくなる可能性も
編集部
尿に関して、成分と出方以外の変化はあるのでしょうか?
窪田先生
頻度も変化に含まれるでしょう。何度もトイレに行きたくなるのは「過活動膀胱」の典型症状なのですが、生活習慣病の一種と考えていいと思います。加齢も大きく関わっていて、夜間頻尿を気にされる患者さんも少なくありません。
編集部
変化の自覚から受診したとして、どうやって検査するのですか?
窪田先生
エコー検査をすれば、膀胱内にたまっている尿の量がわかります。勢いに関しては、トイレなどで簡易におこなえる「ウロフロメトリー検査」というものがあります。これらの検査結果と問診などから、病名を鑑別していきます。もちろん、病気ではなく、生活習慣などが原因である場合も判明できます。
編集部
各疾患の治療方法は?
窪田先生
「前立腺肥大症」は、手術による治療方法が確立されています。「過活動膀胱」や「神経因性膀胱」は、手術というより投薬療法ですね。また、「神経因性膀胱」には、カテーテルをご自身で尿道から膀胱へ入れる「自己導尿」という方法もあります。医院で治療としておこなうのではなく、医師や看護師と練習しながら、最終的にはご自宅でできるようにします。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
窪田先生
尿は、出なくなることがあります。その原因としては、「出す力が失われること」と「尿道の異常」です。体の老廃物の行き場がないということですから、そうなる前に、治療を開始しましょう。
編集部まとめ
尿の出方は、水分摂取量や運動量によっても左右されるそうです。ただし、このような日常要因なら、心当たりがあるはず。もし、原因不明なら、尿の「勢い」と「量」に注目してみましょう。普段とは違う状態がずっと続いていたら、迷わず泌尿器科を受診してください。
医院情報
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