【闘病】低身長・手足短い「軟骨無形成症」 人に見られることが嫌だった時期も…(1/2ページ)

生後3カ月のときに「軟骨無形成症」と診断された土井唯菜さん。軟骨無形成症とは、成長に関わる軟骨という部分の異常により低身長や四肢の短さが引き起こされる病気です。唯菜さんの病気がわかるまでの経緯やお母様の心情、物心がついたときにお母様から病気のことを伝えられた際の唯菜さんの気持ちなどを話してもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年4月取材。

体験者プロフィール:
土井 唯菜
1993年生まれ。生後間もない頃に母親が異変に気づき、病院で「軟骨無形成症」と診断を受ける。現在は会社員をしていて、特に治療などはしていない。

体験者プロフィール:
土井さんの母

記事監修医師:
白井 沙良子(小児科医)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
小学5年生の1年間で両足の延長手術を行った

編集部
まず初めに、軟骨無形成症がどういった疾患なのか教えていただけますか?
土井さん
成長に関わる軟骨の変化により、低身長や四肢の短さが特徴的な症状として表れる病気です。脊柱管狭窄のため、両下肢麻痺、変形性関節症を発症し、歩行障害が生じることもあります。2万人に1人の割合で生まれるとされています。頭部が相対的に大きいことから、首のすわりやおすわり、歩行などに遅れも出る疾患です。
編集部
お母様に質問です。病気が判明した経緯について教えてください。
土井さんの母
生後3カ月くらいの時に、体重が増えない、ミルクを飲まない、不機嫌で泣いている時間が長いことなどに疑問を感じました。近隣の病院や大きな病院に行ってみましたが、「特に問題なし」と言われ、検査もしてもらえませんでした。「お母さんが神経質になりすぎているのかも? 様子を見てください」と言われることもありました。
編集部
どのように診断がついたのでしょうか?
土井さんの母
その後、知り合いの紹介で訪ねた病院の先生に見ていただいたところ、一目見てほぼこの病気だと見当がついたようで、レントゲンやホルモン分泌など詳しい検査をしてもらったところ、軟骨無形成症と発覚しました。当時は認知度の低い病気であったことと、この病気の身体の特徴がそこまで大きく出ていなかったので、それまでに診てもらったドクターは見つけられなかったのではないかと説明を受けました。
編集部
唯菜さんのどのような症状に異変を感じたのでしょうか?
土井さんの母
当時の症状としては、ミルクが飲めない、呼吸が苦しそう、激しい泣き方(空腹や息苦しさからと思われる)、首がすわらない、寝返りが打てない、全体的な成長の遅さといったことがありました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
土井さんの母
当初、治療方法はないとのことでしたが、治すのではなく成長をフォローしていくために、ある程度の年齢になったら、成長ホルモンの投与を受ける選択をされる方もいるという説明を受けました。そして専門の先生がいる病院を紹介していただき、3才から成長ホルモンを毎日、注射で投与することになりました。
編集部
唯菜さんもそれを選択したのですね。
土井さんの母
はい。小学5年生の1年間で両足の延長手術をし、約10cm伸ばしました。そのほか、アデノイド肥大を小さくする手術や、慢性中耳炎による耳のチュービング手術を受けましたが、今でも難聴はあります。鼻が低く、鼻腔が狭いため耳鼻が弱いです。この病気は、水頭症、手・足、背骨の変形、歯並びなどにも影響が出ます。中学生の頃には、歯の矯正も受けました。
人に見られることが嫌になった時期もあった

編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
土井さんの母
母の立場としては、病院を何院も周り、「早く見つけなければならない病気だったら、早期に治療しなければならない病気だったらどうしよう」と不安でした。なので、病名がついたことに、ホッとしました。ただ、治療がないと聞いて落胆したのも事実です。自分の無力さを感じ、この先の育児・将来への不安、治療がない中で「自分は何をしてやれるのか? 本当に、何もないのか?」という葛藤がありました。
編集部
唯菜さんは時間の経過とともに、どのような困難がありましたか?
土井さん
物心がついて母親から、自分は人より成長が遅く、みんなみたいに大きくなれないと聞きました。学校で新入生に「なんで小さいの?」と聞かれることが多く、その都度説明しますが、なかなか理解してもらえないことにモヤモヤしていました。また、外出していると同い年くらいの子に見られたり、付きまとわれたりすることも多く、それが苦痛でした。小学生低学年の頃は小さくて可愛いと言われることもあり、そんなに嫌な思いをした記憶はありませんが、みんなと同じ身長に少しでも近づきたいと小学5年生の1年間で足の延長手術をしました。それでもクラスの中で一番小さいことには変わりなく、足には手術の傷が残ることでファッションを楽しめないなど、コンプレックスが増えてしまいました。
編集部
なるほど。ほかにもあれば聞かせてください。
土井さん
同じ年頃の子が成長し、身体的に出来るようになることが増えてくる中で、それに対する遅れを感じたり、不自由を感じたりすることもありました。また、低身長で手足が短く、頭が大きく、身体のバランスも悪く、筋肉もつきにくいため、よく転んでいました。やれることや見た目など、他者との差がはっきり出てくることで、人に見られることがより嫌になった時期もありました。
編集部
病気に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。
土井さん
身の回りにいる家族や友人が、特別扱いすることなく、娘として、姉として、友達として接してくれたことで、学校生活も、大人になってからも明るくマイペースな今の自分がいるのだと思います。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
土井さん
「嫌な思いもするけれど、その分いいこともある。人生の中で“幸せ”と“不幸”は同じくらい起きるから乗り越えてきてほしい」ですね。
自分の弱音を吐き出すことで、相手も心を開いてくれることを知った
