「PRP療法」と「幹細胞治療」の違いを医師が解説! 整形外科で受けられる“再生医療”とは?
メジャーリーグで活躍する選手も受けたとして話題になった「PRP療法」。整形外科の領域でおこなわれている再生医療の1つですが、同様の治療法に「幹細胞治療」というものもあります。どちらも再生医療ですが、一体どのような違いがあるのでしょうか。「リペアセルクリニック東京院」院長の藤間先生に解説していただきました。
監修医師:
藤間 保晶(リペアセルクリニック東京院)
目次 -INDEX-
「膝や関節が痛い……」整形外科でどんな治療が受けられる? 検査や治療法の判断基準も解説
編集部
膝や関節が痛いときに、整形外科ではどのような治療が受けられるのでしょうか?
藤間院長
疾患によって異なりますが、例えば膝の関節が痛くなる代表的な疾患に「変形性膝関節症」があります。変形性膝関節症に対しては、まず運動療法(筋力訓練)、リハビリテーション、状態によってはヒアルロン酸の注射、装具療法、内服や外用剤などの保存療法をおこないます。
編集部
それらは根本的に疾患を治癒することができるのですか?
藤間院長
いいえ、主に痛みの改善を目的とした治療です。そのため、変形性膝関節症の場合には、これらの治療を続けても将来的に軟骨のすり減りが進んだり、膝関節の変形が進行したりします。その結果、歩行が困難になるなど、日常生活に支障が出ることもあります。
編集部
そのほかには、どのような治療法がありますか?
藤間院長
自分の関節を温存する「骨切り術(O脚矯正術、X脚矯正術)」や、損傷した関節を人工関節に置き換える「人工関節置換術」をおこなうことで、機能を回復させることができます。しかし、「手術は受けたくない」「入院するための長期休暇が取れない」という場合もあるでしょう。その場合には、「再生医療」という選択肢もあります。
編集部
再生医療を選択することで「手術をしなくても済む可能性がある」ということですね。
藤間院長
はい。そのほか、「ヒアルロン酸の注射では効果が得られない」といった場合にも、再生医療は有効です。
「PRP療法」とは? 整形外科での適応症例・効果・治療の流れ・費用
編集部
膝や関節の痛みに対しておこなわれる再生医療には、どのようなものがあるのですか?
藤間院長
代表的なのはPRP療法です。PRP療法は多血小板血漿療法とも呼ばれ、患者さん自身の血液を使います。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
藤間院長
体に傷ができると、血液の中に含まれている血小板が出血を止め、その傷を修復します。PRPは血液を採取して、血液中の血小板を濃縮したもので、患部へ注射することで膝の痛みや炎症を抑えます。
編集部
どのような効果が得られるのですか?
藤間院長
血小板には様々な成長因子(グロースファクター)が含まれています。成長因子には多くの種類が存在し、炎症の抑制、細胞の増殖促進、傷ついた組織の修復・再生促進、血管の新生、コラーゲン・ヒアルロン酸の産生など、その機能は多岐にわたります。そのため、PRPを注射すると自然治癒力が高まり、組織や細胞の修復が促され、痛みが軽減されるのです。
編集部
どれくらいの効果が期待できるのですか?
藤間院長
「血小板を濃縮したPRPには通常の3~5倍の成長因子が含まれる」と言われており、PRPを注射すると炎症や痛みが抑制され、QOLが向上します。一般に痛みや炎症を抑制する効果はヒアルロン酸注射よりも高く、従来の治療法では十分な効果が得られなかった患者さんに対して適応があるとされています。
編集部
具体的な治療法を教えてください。
藤間院長
まずは採血をして、血液を遠心分離した後に、血小板を多く含んだ血漿部分だけを抽出します。そして、これを患部に注射します。メスなどを使う必要がなく、日帰りで治療を受けられるのがメリットです。また、自分の血液から抽出・精製したものを注射するので、アレルギー反応や拒絶反応といった副作用の発生が極めて少ないという特長があります。
編集部
日帰りで治療を受けることができるのですね。
藤間院長
ただし、最近では「PRP-FD療法」という抽出した成長因子を活性化させ、さらにフリーズドライ加工したものを注射する治療法もあります。PRP-FD療法は、加工に約3週間の時間を要します。一方、半年間の保存が可能であり、好きな時期に注射を受けられるメリットもあります。
編集部
PRP療法の費用はどれくらいですか?
藤間院長
PRP療法は自由診療となるため、費用は医療機関によって異なります。また、「通常のPRP療法か、それともPRP-FD療法か」「遠心分離を何回おこなうのか」など、PRPの種類や抽出方法によっても費用が変わります。詳しい費用については、受診している医療機関にご確認ください。
「幹細胞治療」とは? 整形外科での適応症例や効果・治療の流れ・費用
編集部
そのほかにも、変形性膝関節症に対しておこなわれている再生医療はありますか?
藤間院長
PRP療法と並んで、幹細胞治療という方法もあります。幹細胞治療は、膝関節機能の改善や組織の修復を促す治療法です。
編集部
どのように治療をおこなうのですか?
藤間院長
体の組織を採取し、培養したり遠心分離機にかけたりして幹細胞を作成し、患部に注射します。
編集部
それにより、どのような効果が得られるのですか?
藤間院長
もともと幹細胞には、傷ついたり弱ったりした細胞を修復する働きがあります。そのため、幹細胞を患部に注射することで、擦り減ってしまった軟骨や本来の働きができなくなった臓器に働きかけ、損傷部の修復が始まります。また、幹細胞には抗炎症作用があるので、痛みの緩和も期待できます。こうすることで、本来の機能を正常に戻すというのが、幹細胞治療の目的です。
編集部
幹細胞治療も日帰りで治療を受けられるのですか?
藤間院長
幹細胞の作成方法によって異なります。遠心分離機にかける場合には当日、治療が可能ですが、培養する場合は時間が必要になるため、4~6週間後に注射することになります。
編集部
PRP療法と幹細胞治療の違いはなんですか?
藤間院長
PRP療法は、修復に必要な細胞を集めて、修復のプロセスをスタートさせます。間接的に組織の修復を促進する作用があるため、直接、組織の修復を促すことはできません。一方で、幹細胞治療の場合には細胞自体の作用によって、直接的に組織の修復を促すことが期待できます。この点が、両者の大きな違いです。
編集部
組織を修復するのは幹細胞治療の方が優れているということですね。
藤間院長
はい、そう思います。どちらも機能の改善や組織の修復を促す作用はありますが、組織を修復するという点においては、幹細胞治療の方が効果を期待できるということになります。
編集部
幹細胞治療を受けることで、どのような効果がありますか?
藤間院長
例えば、変形性膝関節症の治療において手術をしない保存治療が効かなかった場合は、骨切り術や人工膝関節置換術などの手術が勧められます。しかし、幹細胞治療をおこなうことで手術を避けることができるかもしれません。また、関節の変形が進む前に予防的に幹細胞治療を受けることで症状が進行するのを防ぐこともできます。
編集部
幹細胞治療の費用感も知りたいです。
藤間院長
自由診療なので培養技術や培養手技、幹細胞の品質などによって金額は異なります。また、PRP療法と比較して高額になることがあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
藤間院長
幹細胞治療は各医療機関に独自性があり、治療の内容や料金なども異なります。どの医療機関で治療を受けたらいいのか悩む人も多いと思いますが、治療を検討している場合には、細胞の質(作成方法や安全性)や投与手技、ケア指導、リハビリなどを総合的に考慮し、納得できる医療機関を選択することが必要です。
編集部まとめ
「PRP療法と幹細胞治療のどちらを受けたらいいのか?」「どの医療機関で受けるべきか?」など、わからないこともたくさんあると思います。また、決して安価な治療ではないので、信頼できる医療機関や医師を選ぶことが必要です。可能であれば治療実績なども見せてもらいながら、納得のいく選択をしましょう。
医院情報
所在地 | 〒105-0022 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝 サウスタワーPIER MALL 3F |
アクセス | ゆりかもめ「竹芝駅」 徒歩2分 JR「浜松町駅」 徒歩10分 |
診療科目 | 整形外科 |