電車の中で急に咳が止まらない…長引く咳の原因・対策・治療法は?【医師解説】
会議中や電車の中などで、突然咳が止まらなくなって焦った経験はありませんか? その場で水を飲んだり咳止め薬を飲んだりしても効かなかった、という経験もあるかもしれません。咳が止まらなくなるのは何なのでしょうか? 考えられる疾患や対策について浦賀メディカルクリニックの柿沼先生に伺いました。
監修医師:
柿沼 一隆(浦賀メディカルクリニック)
目次 -INDEX-
風邪じゃないのに咳が止まらない…長引く咳の症状で考えられる病気とは? (咳喘息・百日咳・マイコプラズマ肺炎)
編集部
咳が止まらなくなることがあります。どんな病気が考えられるのでしょうか?
柿沼先生
医学的には発症から3週間以内を急性咳嗽(がいそう)、3週間以上続く咳を遷延性(せんえんせい)咳嗽、8週間以上続く場合を慢性咳嗽といいます。それぞれにさまざまな疾患が考えられます。
編集部
どんな原因が考えられるのですか?
柿沼先生
急性咳嗽の原因は、ほとんどが風邪などの呼吸器感染症です。それ以上長引く場合にはさまざまな疾患が考えられますが、特に日本で多いのは咳喘息です。これは通常の気管支喘息と違って、胸がヒューヒュー・ゼイゼイ鳴る喘鳴(ぜんめい)がなく「症状は乾いた咳だけ」「主に早朝や夜間に咳が出る」という特徴があります。
編集部
ほかにはどんな疾患が考えられますか?
柿沼先生
マイコプラズマ肺炎や百日咳のように細菌に感染することが原因として発症する疾患もあります。そのほか副鼻腔気管支症候群、胃食道逆流症(逆流性食道炎)、喫煙による慢性気管支炎、感染後咳嗽、薬剤による咳嗽などが考えられます。
咳が続く・長引いたら注意! 咳が止まらない病気に悪影響を与える生活習慣とは?
編集部
咳が続くのは、生活習慣とも関係しているのですか?
柿沼先生
よく見られるのは喫煙が咳を誘発しているケースです。タバコにはニコチン、タール、一酸化炭素など数千種類以上もの化学物質が含まれています。喫煙するとこれらが気管支を刺激するので、咳が出やすくなるのです。
編集部
通常のタバコだけでなく、電子タバコでもそのような影響は出ますか?
柿沼先生
はい、通常のタバコも電子タバコも症状に違いはありません。
編集部
そのほかには、どんなことが関係していますか?
柿沼先生
飲酒も咳の原因になります。体内に摂取されたお酒は肝臓でアセトアルデヒドに分解され、ヒスタミンを増やす働きがあります。ヒスタミンは気道を狭くする作用があるので、お酒を飲むと咳が出やすい、ということがあるのです。これをアルコール誘発喘息といいます。
編集部
タバコ、お酒以外にも原因はありますか?
柿沼先生
そのほか、胃食道逆流症も咳の原因になります。なぜかというと、胃酸が喉や気管支を逆流して刺激し、咳を誘発するからです。また、暴飲暴食も咳の原因になります。
編集部
暴飲暴食もなのですね。そのほか、環境要因などはあるのでしょうか?
柿沼先生
ストレスや大気汚染、気温の変化や寒暖差などが誘因となることもあります。
編集部
必ずしも病気が原因というわけではないのですね。
柿沼先生
はい。ただし咳が長引く場合には、肺がんや心不全のように、命に関わる病気が隠れている場合もあります。2~3週間以上咳が長引く場合は、早めに医師の診察を受けるようにしましょう。
長引く咳の対策を呼吸器内科専門医が解説 咳が止まらない病気の治療法とは?
編集部
咳が止まらない場合、病院ではどのように治療するのですか?
柿沼先生
疾患によって異なります。咳喘息の場合には、吸入のステロイド、気管支拡張剤などを使います。また、喘息と副鼻腔炎を併発していることも多く、その場合には喘息だけでなく鼻の治療も必要になります。
編集部
原因となっている疾患を治療することが必要なのですね。
柿沼先生
はい、そのため咳が止まらない場合には胃食道逆流症など併存疾患があるかを確認し、必要があればそれらの治療を行います。
編集部
感染症などが原因の場合はどのように治療しますか?
柿沼先生
インフルエンザや肺炎など感染症が原因で咳が止まらない場合には、原因となる病原体を特定し、咳止めや去痰薬などと併用して抗菌薬や抗ウイルス薬などを使います。そのほか、咳を誘発する原因が分かっているものはそれを取り除き、それぞれの疾患にあった治療薬を使います。
編集部
咳を予防することもできるのですか?
柿沼先生
特に患者さんが多い咳喘息の場合には、インフルエンザや風邪などにかからないようにすることが大事です。またストレスを溜めない、しっかり睡眠時間を確保するなど日常生活にも気をつけましょう。
編集部
そのほかの予防法はありますか?
柿沼先生
感染症予防のためには、インフルエンザや肺炎球菌ワクチン、コロナワクチンなどの予防接種を受けておくことも役立つかもしれません。感染症の流行期はマスクをつけるほか、咳を発症する要因となるため、喫煙などの生活習慣を改善することも大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
柿沼先生
咳が原因で命にリスクが及ぶということはありませんが、咳が原因で肋骨が折れるなど生活の質を落とすことは珍しくありません。咳が長引く場合の診断は意外と厄介で、そうした症状に慣れた医師でなければ治癒が難しいという場合もあります。咳が2~3週間くらい続いている場合には呼吸器内科の専門医を早急に受診してください。咳が長引くほど治療が難しくなることもあれば、難治性の疾患の可能性もあります。困っていることがあれば、早めに専門医にご相談ください。
編集部まとめ
突然、咳が止まらなくなると誰もが焦るものですよね。咳は決して珍しい疾患ではありませんが、2~3週間以上続く場合には何らかの原因があるのかもしれません。2~3週間を待たなくても、日常生活に支障が生じている場合には早めに専門医を受診するのも良いでしょう。
医院情報
所在地 | 〒239-0813 神奈川県横須賀市鴨居2-6-1 |
アクセス | 京急本線「浦賀」駅より徒歩16分 |
診療科目 | 内科、呼吸器内科、アレルギー科 |