「納豆を食べると血液がサラサラになる」のはなぜ? 25回以上混ぜるべき理由【管理栄養士解説】
私たち人間には体中に血管が張り巡らされており、すみずみまで血液が巡ることで必要な栄養素が体全体に行きわたって健康を支えています。健康のためには血液がサラサラであることが大切です。そんな中、「納豆を食べると血液がサラサラになる」と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか? そこで今回は、サラサラな血液づくりに役立つ食べ物とされる納豆について、食べる際のポイントやおすすめの食べ方を管理栄養士の飯田優季さんに話を聞いてみました。
監修管理栄養士:
飯田優季(管理栄養士)
血液がサラサラとはどのような状態? ドロドロだと危険?
編集部
血液がサラサラとはどういう意味があるのでしょうか?
飯田さん
私たちは呼吸や食事によって酸素や栄養素を取り入れています。これらは血液に乗って全身に運ばれエネルギーとして利用され、老廃物や有害物質などを回収し、体外に排出します。これらが滞りなく巡っている状態を「血液がサラサラ」であると言います。
編集部
なるほど。血液がサラサラであるほうが良いのですね。
飯田さん
はい。逆に血流の悪化は冷え・むくみ・肌荒れ・頭痛・肩こりなどさまざまな体の不調の原因となります。
編集部
血流の悪化による病気のリスクはありますか?
飯田さん
偏った食事や、喫煙や運動不足といった生活習慣などによって血液がドロドロの状態になると、血液中で血の塊(=血栓)ができやすく、血栓を溶かす酵素も働きにくくなります。この状態が長く続けば、血栓は溶けることなく蓄積され、どんどん大きくなっていきます。結果として血管が詰まりやすくなってしまい、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす原因となります。
納豆で血液がサラサラになる理由は? 納豆を食べないほうが良い人もいる?
編集部
納豆は血液をサラサラにする作用があると聞きますが、本当ですか?
飯田さん
-
はい。納豆は大豆から発酵する過程でナットウキナーゼという酵素が生まれます。このナットウキナーゼは体の中で
- ①血栓を溶かす
- ②血栓を溶かす作用のある酵素の素を活性化
- ③血栓を溶けにくくする成分の生成の抑制
という働きをするため、血液をサラサラにしてくれます。
編集部
血栓を溶かすだけでなく、血栓そのものができにくくなるのですね。
飯田さん
はい。納豆に含まれるナットウキナーゼによって血管を詰まらせる原因を未然に防ぐことができます。日本人の3割が脳梗塞や心筋梗塞などの血管疾患により死亡していることが報告されていますので、健康に歳を重ねていくためにも日ごろから予防として納豆を取り入れるのはおすすめです。
編集部
納豆を控えた方が良いケースはありますか?
飯田さん
抗凝固薬の「ワルファリン」を服用している方は納豆を控えてください。お薬の中には納豆に限らず、食べ物との飲み合わせに注意しなくてはならないものもあります。薬剤師の指示やお薬の説明書をよく読んでおきましょう。
納豆のおすすめの食べ方は?
編集部
納豆のおすすめの食べ方を教えてください。
飯田さん
食べるときのポイントは①よく混ぜること、②常温に戻すこと、③加熱しないこと、です。しっかり混ぜて粘りを出すことで、ナットウキナーゼが胃酸で溶けてしまうのを防いでくれます。目安として、25~30回以上は混ぜると良いと言われています。またナットウキナーゼは常温で活性化し、70度以上に加熱すると失活してしまいます。そのまま食べる際はあらかじめ冷蔵庫から出しておけば、常温で召し上がることができます。また、チャーハンやパスタなどに使う際は、最後に入れるなどタイミングを工夫してみてください。
編集部
食べた方がいいタイミングなどはありますか?
飯田さん
血液をサラサラにする効果を高めるためには、夕食で納豆を食べることをおすすめします。血栓は深夜から早朝にかけて作られやすいのですが、ナットウキナーゼの効果は8時間程度続くことが分かっているため、夕食で食べるのがベストであると言えます。
編集部
1日にどれくらい食べると良いのでしょうか?
飯田さん
納豆を1日1~2パック程度食べるのがおすすめです。予防のためには継続することが一番大切なので、ご自身の生活スタイルに合わせて定期的にお召し上がりください。飽きないように小ねぎやすりごま、わさびなどの薬味を使ってアレンジするのもおすすめです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
飯田さん
食の多様化により食生活も豊かで便利になりましたが、それに伴って栄養バランスは偏りやすくなり、血液をサラサラに保つことが昔以上に難しくなっているのではないでしょうか。日ごろの食生活に納豆を取り入れて、健康維持に役立ててみてください。
編集部まとめ
今回は、管理栄養士の飯田さんに納豆が血液をサラサラする理由や食べるタイミングについて教えていただきました。予防には習慣的に食べることが大切です。また、熱で効果が失われるので食べるときは注意が必要です。納豆を食べてはいけないケースがあることが分かりました。病院から処方された薬を服用している方は必ず医師や薬剤師の指示に従いしましょう。