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【闘病】血小板が正常値の5%以下…「特発性血小板減少性紫斑病」で気づいた健康な体の尊さ

 更新日:2024/02/02
【闘病】血小板が正常値の5%以下…「特発性血小板減少性紫斑病」で気づいた健康な体の尊さ

職場で受けた健診で血液検査の数値異常を指摘され、再検査までの一週間で体にアザができるなどの異変が起こり始めたグッチさん。再検査の結果、「特発性血小板減少性紫斑病」と診断されました。航空自衛隊のヘリコプター整備士をしていたグッチさんが、病気の発覚から治療、家族と一緒にどうやって闘病期間を乗り越えたのか、詳しく話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年月11取材。

●●闘病者氏名●●

体験者プロフィール
グッチ(仮称)

プロフィールをもっと見る

1987年生まれ。岐阜県各務原市在住。妻、小学1年生の娘、年少の息子、0歳の娘との5人家族。2019年2月、航空自衛隊のヘリコプター整備士として在籍していた時の定期健診で血液検査の数値に異常があると言われ、検査をした結果、特発性血小板減少性紫斑病と診断される。ステロイド治療や脾臓摘出を経て、血小板は安定している。現在はヘリコプター整備士の経験を活かし、ヘリコプター運営に携わる仕事に従事。

今村 英利

記事監修
今村 英利いずみホームケアクリニック
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

太ももに突然現れた拳より大きなアザ

太ももに突然現れた拳より大きなアザ

編集部編集部

病気が判明した経緯について教えてください。

グッチさんグッチさん

最初のきっかけは、職場の定期健診でした。血液検査の結果「血小板の数値に異常があるので、再受診するように」と言われました。その時は血小板の重要性やことの大きさにまったく気がつきませんでしたが、衛生隊の人からは「最近アザができたりしました?」と聞かれたんです。「アザはできたことありません」と返事をしましたが、「来週こちらが予約する血液内科のある病院で、もっと詳しくみてもらってください」と言われました。

編集部編集部

そうなのですね。それからどのような変化がありましたか?

グッチさんグッチさん

血液内科での再検査までの1週間で、体に異変が起きました。太ももに突然拳よりも大きなアザができたのをきっかけに、体のあちこちにアザができました。舌には大量の血豆ができ、異常なことに戸惑いましたが、「あと2、3日で検査行くから様子見しておこう」くらいの気持ちで過ごしていました。その期間に訓練でヘリコプターからロープで50mの高さから降下するような訓練にも参加していましたが、生きているのが奇跡だったということを後から知りました。

編集部編集部

突然体の異常が現れたのですね。検査はどうでしたか?

グッチさんグッチさん

自衛隊の健康診断での血液検査ではエラーが出た、と言いましたが、エラーが出るのは白血球の正常値が15~34万に対して、数値が1万より下の場合と後から知りました。血液内科での検査結果、当時の私の血小板の数値は「7000」しかありませんでした。もちろん即入院となり、「正常の最低値が15万の血小板の数値が7000?」と衝撃を受けたことを覚えています。そして、骨髄穿刺を受け、「特発性血小板減少性紫斑病」と診断されました。骨髄穿刺が人生で一番痛かったですね。

※衛生隊:陸上自衛隊の職種の一つで、隊員の健康管理や防疫及び衛生資材等の補給整備等を行う

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

グッチさんグッチさん

まずはステロイド治療、最低でも2カ月の入院が必要」と言われました。そして、「長期のステロイド治療によって筋力が衰えとADL(日常生活動作)の低下が考えられるため、退院しても自宅療養をするように」と言われました。

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

グッチさんグッチさん

実は、この時の自分の心境は不安や心配ではありませんでした。これまで、病気や入院とは無縁の人生だったので「ついに自分も入院する日がくるのか」という気持ちだけでした。治療へのモチベーションがなければ気が滅入るだけなので、とにかく前向きに考えました。妻と子どもにも、楽しく治療を頑張るパパを見せて、不安にさせないように心がけました。治療期間中は安静にしている必要はあったものの、外見は普段と何も変わらず過ごせたので、家族もそれほど思い詰めることがなかったのが何よりも救いでした。

妻の支えがあったからこそ、治療に専念できた

妻の支えがあったからこそ、治療に専念できた

編集部編集部

入院期間中はどのような心境の変化がありましたか?

グッチさんグッチさん

入院したがんセンターは、病棟が無菌室というエリアでした。同じ病棟に入院している人の中には、小さな子どももいました。まだ親と一緒にいたい時期なはずなのに日中は1人で病室にいるのを見ると、自分も子どもを持つ親として他人事とは思えませんでした。今回初めて病気になり入院したのですが、決して「健康であることが普通」ではないことなのだと気づかされました。

編集部編集部

闘病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。

グッチさんグッチさん

妻の存在です。妻も同じ自衛官でしたので、入院期間にやらなくてはいけない職場との手続きなどは妻がすべて担ってくれました。週末の面会時には必要な物を持ってきてくれるだけでなく、手料理を作って持ってくれた時もあり、とても癒されました。妻の存在のおかげで、仕事に対する気持ちの負担が軽減でき、治療に専念できました。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

グッチさんグッチさん

病院にはソーシャルワーカーという職種の方がいて、入院中に感じる仕事や経済的な不安、主治医との関わり方などの相談に乗ってくれます。なので、もっと早くから相談しておけばよかったと思いました。入院当時には、保険の申請方法などほかの職種の方には相談しにくいことをソーシャルワーカーの方に相談させていただき、本当に助けられました。自分を担当してくれたソーシャルワーカーさんとは今も付き合いがあり、心の支えになってくれています。

「子どもに弱い姿を見せたくない」脾臓摘出を決意

「子どもに弱い姿を見せたくない」脾臓摘出を決意

編集部編集部

治療を始めてから現在までの状況を教えてください。

グッチさんグッチさん

私の場合、3カ月の入院とステロイド治療によって筋力が低下してしまったので、リハビリテーション科での運動をしましたが、血小板が正常値を維持することはありませんでした。退院して5カ月間も自宅療養とステロイド治療は続いていました。「特発性血小板減少性紫斑病」は、脾臓による古い血液成分を処理する機能がより高まって起こるものです。脾臓を取るとこで改善に繋がる可能性があると主治医から聞いた時、「脾臓摘出」を迷わず決断しました。子どもに薬を飲み続ける姿を見せるぐらいなら、という思いが強かったのです。

編集部編集部

そうなのですね。手術後はいかがでしたか?

グッチさんグッチさん

骨髄穿刺をも上回る人生一の術後の痛みを耐えた5日後には、リハビリで自転車をこぐほど回復していました。血小板も正常値を常に維持するようになり、ステロイドの服用がなくなり、不眠症やムーンフェイスからも解放されました。脾臓摘出から5年が経ちましたが、今は異常なく過ごしています。お世話になったソーシャルワーカーさんには今でもたまに連絡をし、当時の気持ちを伝えることができています。

編集部編集部

特発性血小板減少性紫斑病を意識していない人に一言お願いします。

グッチさんグッチさん

この病気は小さな子どもも罹患する病気です。自分もこの長くて最初は覚えられなかった病名も今では息を吐くように言えます。子どもに突然アザができても、どこかで走り回った時に転んだのだろうなどと軽く考えず、少しでも注意してもらうと早期発見に繋がるかもしれません。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

グッチさんグッチさん

今回「血液内科」という血液に特化した科があることを初めて知りました。入院や通院を経て、それぞれの病気に寄り添い、どんな病気になっても安心できる科があることに驚きました。これからもそれぞれの病気に向き合う患者の癒しになっていただきたいと思います。医療従事者の方には大変お世話になりましたが、その中でも一番患者に寄り添って、親身になってくれるのがソーシャルワーカーさんでした。担当の先生や看護師さんは忙しそうで何かと遠慮してしまいますが、ソーシャルワーカーさんは相談や支援を専門とされているので本当に助かりました。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

グッチさんグッチさん

まず自分がなった病気はみなさんもインターネットで調べると思います。今の時代は本当に便利です。どの病気にもコミュニティが存在し、同じ症状や悩みを抱えた人とすぐに繋がり、体験を聞くことができます。以前こちらのサイトで同じ病気の記事を書かれたAkiさん(仮称)とも、コミュニティを通して縁があり、今回このような記事で病気について語る機会を得ました。情報の取捨選択は重要ですが、病気になったからとあきらめず、いろんな情報やつながりを大切にしてもらえると嬉しいです。

編集部まとめ

31歳で「特発性血小板減少性紫斑病」になるまで、病気とは無縁だったグッチさん。闘病を通して、「人それぞれどんな病気やけがを負うかわかりません。そんな時は一人で抱えこまず、周りの人に甘えてください。病気を治す1番の処方は人の支えだと思いました」と話されていました。「特発性血小板減少性紫斑病」は小さな子どもでもなる病気です。グッチさんの話を聞いて、保護者はもちろん、子どもに関わる人たちも「特発性血小板減少性紫斑病」についての知識を深めることが大切だと感じました。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師