【医師解説】健康診断の「血液検査」はなぜ必要? 検査結果の見方や病気との関係について
健康診断では多くの場合、血液検査を行います。しかし、特に異常がない限り、血液検査の結果の見方や重要性をあまり理解していない人も多いのではないでしょうか? そこで今回は、なぜ健康診断で血液検査を行うのか、どんな病気がわかるのか、末木内科医院の末木先生にお聞きしました。
監修医師:
末木 侑希(末木内科医院)
目次 -INDEX-
健康診断の血液検査の重要度性を医師が解説! 赤血球など検査項目や採血でわかる病気とは?
編集部
健康診断ではなぜ、血液検査を行うのですか?
末木先生
血液検査をすることによって、血液のなかに含まれている細胞、酵素、抗体などの数を数値化でき、病気の早期発見や発症リスクの有無が確認できるためです。健康診断では主に、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症などの生活習慣病を早期に発見するために血液検査が行われます。
編集部
主にどんな病気が見つかるのですか?
末木先生
血液検査には血球検査、肝機能検査、脂質検査、糖代謝検査、尿酸値、腎機能検査といった種類があります。血球検査では貧血や多血症の可能性が評価できます。そのほか肝障害や脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症、腎機能低下についても評価が可能です。いずれの疾患も初期には無症状であることが多いので、健康診断で定期的に血液検査を実施し、早期発見する必要があります。
編集部
血液検査にはさまざまな項目がありますが、具体的にどれを見ればそれらの疾患がわかるのですか?
末木先生
貧血や多血症 | 赤血球数、血色素量(ヘモグロビン値)、ヘマトクリット値 |
白血球増加/低下 | 白血球数 |
血小板増加/低下 | 血小板数 |
肝臓や胆道系の異常 | AST、ALT、γGTP、総蛋白やアルブミン値 |
脂質異常症 | 中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール |
糖尿病 | 空腹時血糖、HbA1c |
腎機能障害 | 血清クレアチニン値、eGFR |
高尿酸血症 | 尿酸値 |
それぞれの数値には基準値があり、大きく変動したところが精密検査の対象となります。
健康診断の血液検査で異常値が出たらどうする? 項目ごとの治療の流れ
編集部
血液検査で異常値が出た場合、どうしたら良いのでしょうか?
末木先生
血球の異常があれば血液内科、肝機能の異常があれば消化器内科、腎機能の異常があれば腎臓内科を速やかに受診されることをおすすめします。生活習慣病の糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などは一般内科でも対応が可能なことが多いので、近くの内科を受診してください。また、HbA1cが非常に高値の場合には糖尿病の可能性がありますので、糖尿病専門の先生に相談するとよいと思います。
編集部
受診した際は、再検査が行われるのですか?
末木先生
はい。異常値が出た場合には考えられる疾患についての精密検査を行うことになります。血液検査だけの場合もあれば、尿検査やレントゲン、CT、内視鏡などの画像検査をする場合もあります。
健康診断の血液検査前に注意すべきことは? 採血前に朝食を食べてはいけないのはなぜ?
編集部
血液検査を受けるにあたり、注意すべきことはありますか?
末木先生
食事は前日の21時までに済ませ、当日は朝食を控えましょう。水分摂取は可能ですが、糖分や脂肪分の入った飲料では検査値に異常をきたすことがあるので、水やお茶を飲むようにしてください。
編集部
絶食をしなければいけないのはなぜですか?
末木先生
血液検査には、食事の影響を受ける項目があるからです。たとえば糖尿病の有無を調べるのに必要な血糖値は、食後すぐに上昇します。糖尿病の有無の診断には空腹時血糖の様子も参考にするので、食事を摂らずに採血を受けるようにしましょう。
編集部
普段から薬を飲んでいる場合はどうすればよいですか?
末木先生
普段、薬を服用している場合には健診の時に医師や看護師へ伝えてください。また健診の際は食事を摂らずに受診しますが、同時に水分も摂らずに過ごしてしまうと血液が濃くなり多血症と間違われることがあります。お水やお茶などを摂取して脱水には気を付けましょう。
編集部
ほかに注意すべきことはありますか?
末木先生
飲み込まないからといってガムを噛むと、わずかにふくまれる糖質が影響することがありますので、ガムやタブレットの摂取も控えましょう。また、1~2日前に筋トレや長距離ランニングなどの激しい運動をした場合には、採血の際に複数数値が異常をきたす場合があります。直前での激しい運動は控えましょう。
編集部
検査前に食事や運動をしてしまい、異常値がみられた場合にはどうすればいいですか?
末木先生
一過性の変動であることが多いですが、やはり改めて再検査して数値が元に戻っていることを確認する必要があります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
末木先生
コロナの影響もあり、ここ2~3年健診を受けるのをためらっていた方も多くいらっしゃると思います。しかし、健診には生活習慣病を早期に発見する目的があります。生活習慣病は高血圧、脂質異常、糖尿病、高尿酸血症などを指しますが、これらを放置すると脳心血管や腎臓に悪影響を及ぼします。無症状のうちに治療介入することで、大きな病気を引き起こす確率を下げられますので、積極的に健診を受けて自身の体調を定期的に評価するようにしましょう。
編集部まとめ
「健康診断が面倒だ」と思っている人もいれば、「健康診断を受けてはいるものの、受けっぱなしで結果を放置している」という人もいると思います。いずれの場合も健康診断の目的を改めて確認し、定期的にしっかり受けることが大切です。健康診断で異常が見つかるのは早期発見のチャンスと捉え、もし診断で「再検査」と指摘された場合も、きちんと医師の指示に従うようにしましょう。
医院情報
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アクセス | JR身延線 甲斐住吉駅から車で5分 |
診療科目 | 一般内科、消化器内科、血液内科 |