新たな国民病? 「慢性腎臓病(CKD)」の治療法や食事・薬物療法を医師が解説
新たな国民病ともいわれる「慢性腎臓病(CKD)」。自覚症状が乏しいため、気づいたらかなり病気が進行していた、ということも少なくありません。なぜ、国民病と呼ばれるようになったのか、そして慢性腎臓病にはどのような治療法があるのでしょうか? 今回は、東池袋きむら内科クリニックの木村先生に慢性腎臓病についてうかがいました。
監修医師:
木村 庄吾(東池袋きむら内科クリニック)
目次 -INDEX-
新たな国民病と言われる慢性腎臓病(CKD)とは? 進行度別の症状や原因について
編集部
慢性腎臓病(CKD)とはなんですか?
木村先生
慢性腎臓病とは個別の疾患名ではなく、「腎臓の障害」もしくは「腎機能低下」が3か月以上持続している状態の総称です。最近注目されており、日本の慢性腎臓病罹患率は成人全体で8人に1人、80歳代では2人に1人と高齢になるに従って高くなることがわかっています。
編集部
腎臓の障害や腎機能低下は、どのようにして見つかることが多いですか?
木村先生
一般的には、尿検査で異常を指摘されることが多いです。たとえば蛋白尿や尿潜血などを指摘されることがありますが、そのときには腎機能の障害・低下が疑われます。また、画像診断や血液検査、病理所見で腎機能障害が見つかることもあります。
編集部
では、慢性腎臓病を発症する原因は何ですか?
木村先生
加齢のほか、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などさまざまな要因が考えられます。生活習慣病を原因として発症することが多いため、言い換えれば「誰にでも発症のリスクはある」ということになります。
編集部
そのほかに原因として考えられることはありますか?
木村先生
慢性糸球体腎炎やネフローゼ症候群など、腎臓の疾患が慢性化して、慢性腎臓病を発症する場合もあります。
慢性腎臓病(CKD)治療のための食生活とは?腎機能を低下させない食事療法には塩分制限が必要?
編集部
慢性腎臓病と診断された場合、どのような目的で治療が行われるのですか?
木村先生
慢性腎臓病の治療の目的は、2つあります。一つは、腎代替療法(透析や腎移植)が必要な末期腎不全への進行を遅らせること。そしてもう一つは、心血管疾患になるのを防ぐことです。慢性腎臓病を発症すると心臓への負担も大きくなり、心筋梗塞や心不全など心血管疾患を発症しやすいのです。
編集部
そのためにはどのような治療を行うのですか?
木村先生
まずは食事や運動など生活習慣を正すことから始めます。特に重要なのは日々の運動量に合わせた食事量にすること。運動量が多い人と少ない人とでは必要な食事量が違いますし、とりわけ都市部の人やデスクワークの人は運動量が少ないにも関わらずつい食べ過ぎてしまい、肥満に陥りがちです。そのため、自分のライフスタイルに合わせて食事量を決定することが大切です。
編集部
そのほか、食事で気を付けることはありますか?
木村先生
食事の内容では、塩分の摂取を制限することが大切です。
編集部
塩分の摂取制限が必要なのですね。
木村先生
腎臓は余分な塩分を体外へ排出する働きをしているため、腎機能が落ちているときに大量の塩分を取ると、腎臓に負担をかけてしまいます。腎臓が塩分を処分しきれない結果、体に塩分が溜まることになり、血圧が上昇してしまう可能性もあります。さらに高血圧が続くと腎臓の血管に負担がかかり、ますます腎臓の機能が低下します。このように、高血圧が続くと腎機能はさらに低下するという悪循環に陥ってしまうのです。
編集部
そのほか、食事で気を付けることはありますか?
木村先生
慢性腎臓病は病期によって食事療法の内容が異なり、腎機能が低下するにつれて食事制限(タンパク質、カリウム摂取など)が必要になります。また糖尿病を併発している場合には、これに加え、血糖をコントロールすることも必要になります。
食事療法以外にもある慢性腎臓病(CKD)の治療法を医師が解説 人工透析、腎移植、薬物療法など
編集部
食事療法のほかにはどのような治療を行うのですか?
木村先生
・血圧を調整する薬(降圧薬や利尿薬)
・腎臓の働きをサポートし、尿毒素を外へ排出することを促す薬(経口吸着炭素製剤)
・貧血を改善する薬(腎性貧血治療薬)
・体液量やイオンバランスを調整する薬(カリウム吸着薬、リン吸着薬、SGLT2阻害薬)
そのほか、糖尿病の方は血糖をコントロールする薬も必要です。
編集部
食事療法や薬物療法でも効果が期待できない場合はどうしますか?
木村先生
腎臓の機能がほとんど失われてしまった場合には腎代替療法といって、人工的に腎臓の働きを代替する治療が必要になります。具体的には透析療法や腎移植があります。
編集部
病期が進むとそのような治療が必要になるのですね。
木村先生
はい、いずれにしても一旦失われた腎臓の機能は再生されず、治療は「いかにして病気を進行させないか」ということに主眼が置かれます。そのため自覚症状がなくても慢性腎臓病と診断されたらできるだけ早めに治療を開始すること、そして定期的に検査を受け病態を確認しておくことが必要になります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
木村先生
慢性腎臓病に用いられる薬剤にはさまざまなものがありますが、なかでもSGLT2阻害薬は病気の進行を緩やかにする効果が認められ、近年注目されています。eGFRという検査数値が60未満の場合には保険適用となったこともあり、多くの方がこの治療を開始しています。eGFRの項目は、通常の健康診断では測定されていないかもしれませんが、血清クレアチニン値・年齢・性別の3つがわかればWEBサイトなどで計算式を調べることができ、ご自分でも数値を確認できます。通常eGFRは加齢とともに低下していきますが、1年に5以上数値が下がっている場合には慢性腎臓病の可能性があるので早めに専門医の診察を受けましょう。また、血清クレアチニン値は筋トレを習慣的に行っている方や、若い頃スポーツを熱心にしていた方の場合高値を示しやすいという特徴があります。その場合には、医療機関で運動履歴をお話しいただき、eGFR値を測定してもらうことをおすすめします。
編集部まとめ
新たな国民病とも言われる慢性腎臓病。初期にはあまり自覚症状がないため、気づかないうちに放置している人も少なくありません。しかし悪化すれば人工透析や腎移植が必要になることもあります。そうしたリスクを軽減するためにも、毎年1回は健康診断などを受けて尿検査の結果やeGFRなどの腎機能に関する数値をチェックするようにしましょう。
医院情報
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アクセス | 東池袋駅1番出口直結 |
診療科目 | 内科、腎臓内科、糖尿病内科、脂質代謝内科、呼吸器内科 |