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冬場に起こる辛い腰痛…「自律神経の乱れ」と「冷え」が原因? 薬剤師が解説

 更新日:2024/01/11

椅子から立ち上がるときや寝起き、ふとした瞬間に感じる腰痛。特に寒い冬の季節になると腰痛を感じる人が増えるようです。それもそのはずで、腰痛と体の冷えが関係しているということはご存知ですか? 今回は冬場に腰痛が起こりやすくなる理由と、おすすめの薬や対策方法について、薬剤師の村山さんに解説していただきました。

村山 菜奈

監修薬剤師
村山 菜奈(薬剤師)

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6年制薬学部を卒業後、薬剤師免許を取得。化粧品メーカーの研究員として、スキンケア化粧品の処方開発、製品開発業務を担当。結婚・出産を経て、診療科や処方の幅が広い大学病院の門前薬局で薬剤師として勤務。現在は、2人の子どもを育てながら、薬剤師や化粧品研究員の経験を活かして、医薬品や化粧品の正しい情報をわかりやすく伝えることをモットーにwebライターとして活動中。

冬場のつらい腰痛…「冷え」が関係している? その理由

冬場のつらい腰痛…「冷え」が関係している? その理由

編集部編集部

腰痛が起こる原因はなんですか?

村山 菜奈さん村山さん

腰痛が起こる原因はさまざまで、複数の要因が絡んでいる場合があります。約15%程度は原因を特定できる「特異的腰痛」で、代表的な病気として椎間板ヘルニアや骨粗しょう症などが挙げられます。これらは背骨の神経が圧迫されることによって痛みが起こり、ひどいときには、しびれや脚の筋力低下を伴うため、すぐに病院で診察を受けることが必要です。残りの約85%は、しびれやまひなどの神経症状や基礎疾患がなく、検査しても原因が特定しきれない「非特異的腰痛」です。非特異的腰痛は、中腰や猫背などの姿勢で腰や背中の筋肉が緊張し続けたときや、運動不足で腰を支える筋肉が弱っているときなどに起こります。気温が低くなる冬場も腰痛が起こりやすくなります。

編集部編集部

冬場に腰痛が起こりやすくなるのですね。

村山 菜奈さん村山さん

はい。理由として、冬場は寒さで筋肉が緊張して硬くなるためです。肌で感じた寒さが脳へと伝わると、熱を逃がさないように脳が指令を出し、筋肉を縮ませて硬くします。背骨を支える筋肉が硬くなると骨盤や腰椎が歪みやすく、腰痛の原因になります。また、寒さで体が前かがみになり姿勢が悪くなることも腰痛の一因です。

編集部編集部

身体の「冷え」も腰痛に関係しているのでしょうか?

村山 菜奈さん村山さん

身体の「冷え」は自律神経の乱れや血行不良によって起こりますが、腰痛にも関係があります。寒くなると身体が硬くなるのと同様に血管も硬くなり、血流が悪くなります。血流が悪くなると、毛細血管まで血液が行き渡らなくなり、血管が収縮してさらなる冷えにつながります。寒さによって筋肉の血行が悪くなると、筋肉に疲労物質が蓄積して炎症を起こし、痛みを感じる原因になります。特に身体の軸となる腰は痛みが発症しやすいと言われています。

腰痛に効く! 薬剤師が解説する薬の選び方(市販薬・漢方薬)

腰痛に効く! 薬剤師が解説する薬の選び方(市販薬・漢方薬)

編集部編集部

腰痛に効く薬にはどのような種類がありますか?

村山 菜奈さん村山さん

腰痛治療には、痛みや炎症を抑える解熱鎮痛消炎剤が使用されます。具体的には湿布(しっぷ)や塗り薬などの外用薬と、痛み止めや漢方薬などの内服薬(飲み薬)があります。代表的な痛み止めの有効成分には、ロキソプロフェンナトリウム水和物やジクロフェナク、フェルビナク、インドメタシンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)アセトアミノフェンなどがあります。

編集部編集部

腰痛の薬はどのように使い分けたらいいですか?

村山 菜奈さん村山さん

腰痛を抑えたいときは、市販の痛み止めを上手に活用しましょう。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、痛みだけでなく炎症を抑える効果があり、炎症が主体となっている腰痛に効果的です。

編集部編集部

痛み止めを飲むと胃が痛くなることがあるのですが、どうすればよいですか?

村山 菜奈さん村山さん

非ステロイド性抗炎症薬は、副作用として胃が炎症を起こして痛くなることがあるため注意が必要です。市販の痛み止めの中には胃を守る成分が一緒に配合されているものもあります。胃が弱い方は胃薬と併用するか、胃に優しい痛み止めを選びましょう。

編集部編集部

胃に負担をかけない痛み止めはありますか?

村山 菜奈さん村山さん

アセトアミノフェンは解熱剤としても使用される痛み止めですが、比較的作用が緩やかで炎症を抑える効果はほとんどありません。非ステロイド性抗炎症薬と比べて胃に負担をかけにくく、安全性が高いため、子どもや妊娠中の方にも使用できます。薬によって成分や効き目が異なるため、どれを選べばいいか迷ったら薬局の薬剤師や登録販売者に相談してください。

編集部編集部

湿布や塗り薬など、外用薬の使い分けも教えてください。

村山 菜奈さん村山さん

湿布には冷たく感じる冷湿布と、温かく感じる温湿布がありますが、鎮痛成分は同じものを使用している場合が多く、感じ方が違うだけです。痛みの箇所が炎症を起こして赤くなっているまたは熱を帯びている場合は冷湿布を、痛みの箇所が冷たくなって慢性的に痛みが続いている場合は温湿布を選ぶのが一般的ですが、薬の効果は同じことがほとんどなので、好みで選びましょう。湿布が貼りにくい部位やかぶれやすい方は、ゲルやローションなどの塗り薬がおすすめです。

編集部編集部

痛み止めの飲み薬と外用薬は一緒に使っても大丈夫ですか?

村山 菜奈さん村山さん

痛みが強い場合は、内服薬と外用薬を同時に使う場合もあります。ただし、市販の内服薬と外用薬を併用するときは、必ず決められた用法・用量を守って使用してください。迷ったときは、薬局の薬剤師や登録販売者に相談しましょう。市販薬を使っても強い痛みが改善しない場合は、整形外科やペインクリニックなどの医療機関を受診し、医師に相談してください。

編集部編集部

腰痛に効く漢方薬もありますか?

村山 菜奈さん村山さん

腰痛に対してよく用いられる漢方薬には「八味地黄丸(はちみじおうがん)」や「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」などがあります。

編集部編集部

それぞれの使い分けを教えてください。

村山 菜奈さん村山さん

「八味地黄丸」や「牛車腎気丸」は、腎の働きが弱くなる高齢の方によく使われる漢方薬です。八味地黄丸は、体を温める作用や体全体の機能低下を改善し、慢性的な腰痛に効果があります。体力は中程度以下で、疲れやすく、カラダがだるい、下半身が冷えやすい方向きです。牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)は、8つの生薬からなる八味地黄丸に、むくみ、しびれをとる牛膝・車前子を加えたものです。とくに、尿量減少、腰痛、下肢のむくみが強い方に用いられるほか、痛みやしびれの改善に作用するため、足腰の痛みが強い方や排尿トラブルがある方におすすめです。

編集部編集部

当帰芍薬散はどんな効果がありますか?

村山 菜奈さん村山さん

「当帰芍薬散」は体を温める作用があり、冷えや女性特有の悩みによく使われる漢方薬です。体力虚弱で疲れやすく、冷え性で貧血の傾向がある方によく用いられます。生理不順、生理痛、更年期障害、産後の不調など女性特有の症状のほかに、めまい、むくみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え性やしもやけなどにも使われます。ただし、胃の弱い方には注意が必要です。

編集部編集部

芍薬甘草湯はどうでしょうか?

村山 菜奈さん村山さん

ぎっくり腰などの急性の腰痛には、筋肉や筋の緊張を和らげる「芍薬甘草湯」を用いることもあります。漢方薬は自分の体質や症状が起きた原因によって選ぶことが重要です。ドラッグストアなどで気軽に購入できるものもありますが、何を選べばいいかわからないという方は、漢方薬に詳しい医師や薬剤師に相談しましょう。

冬の腰痛対策におすすめの生活習慣は?

冬の腰痛対策におすすめの生活習慣は?

編集部編集部

腰痛を予防するために気を付けることはありますか?

村山 菜奈さん村山さん

つらい腰痛を予防するためには、生活の中にある腰痛の原因を取り除くことが重要です。立ち仕事やデスクワークの多い方は、姿勢を改善して腰に負担のかからない立ち方・座り方を身につけましょう。同じ姿勢を長時間とらないように気を付け、30分に1度は腰を回したり体を伸ばしたりするなど、すきま時間に軽い体操やストレッチを取り入れることがおすすめです。適度な運動を習慣にして、腰痛になりにくい体を作りましょう。

編集部編集部

そのほかに冬場におすすめの腰痛対策はありますか?

村山 菜奈さん村山さん

冬場は身体が冷えて硬くなりやすいので、40℃前後のぬるめのお湯に10分以上つかることがおすすめです。入浴によって血行が良くなって筋肉の緊張もほぐれるので、腰痛改善に効果的です。お気に入りの入浴剤などを使えば、よりリラックスできてストレス解消になり、入浴効果も高まります。腰痛の原因となる冷えを緩和するために、腰のあたりを腹巻きやカイロなどで温めるのもおすすめです。ただし、ぎっくり腰などの急性の腰痛は温めることで逆に痛みが増してしまう場合があるので注意してください。

編集部編集部

睡眠をとるときに気を付けることはありますか?

村山 菜奈さん村山さん

睡眠時の姿勢や寝具選びも重要です。やわらかすぎるベッドで寝ると腰が沈んで腰痛がひどくなることがあるため、適度な硬さで快適な寝相を保ちやすい寝具を選びましょう。仰向けで寝る場合は、ひざの下に折りたたんだ毛布やクッションなどを置いて寝ると、腰の痛みがやわらぎます。横向きに寝る場合は、足を曲げて少し背中を丸めて寝ると、腰の筋肉の緊張をやわらげて楽に寝ることができます。その際、両膝の間にクッションやバスタオル、枕などを挟んで寝るとより効果的です。腕の重さを支えながら姿勢を維持できる抱き枕もおすすめです。

編集部編集部

冬の腰痛対策におすすめの食材はありますか?

村山 菜奈さん村山さん

体を冷やす食べ物は避け、体を温める食べ物を摂るようにしましょう。鶏肉などの肉類や、イワシ、カツオなどの赤身魚・青魚、ショウガ、にんにく、カボチャ、カブ、長ネギ、ニラなどの野菜、納豆や味噌などの発酵食品などがおすすめです。一般的に冬が旬の食材は体を温めてくれるものが多く栄養価も高いので、旬の食材を選んでください。筋肉や神経の疲れを緩和するビタミンB1を多く含む食材(豚肉・ごま・大豆・玄米など)や、血行を促進するビタミンEを多く含む食材(卵・アーモンド・かぼちゃなど)、骨を強くするカルシウムを多く含む食材(小魚・乳製品など)も腰痛予防に効果的なので、積極的に取り入れましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

村山 菜奈さん村山さん

姿勢を正し、腰痛予防のストレッチや適度な運動、身体を温める入浴・食事を心がけて、腰痛になりにくい身体を作りましょう。市販薬を使用しても痛みが長期間続くときや、しびれと痛みが同時に起こる場合は重い病気が隠れている可能性があるので、医療機関を受診して医師に相談してください。

編集部まとめ

冬場に腰痛が起こりやすい理由と、その対策方法について解説していただきました。腰の痛みが気になる方は、ぜひ腰痛予防の対策方法を実践してみてください。強い痛みが続くときやしびれがある場合は、我慢せずに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修薬剤師