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【闘病】「まさか足を失うとは…」痛みの原因は希少がん”滑膜肉腫”で足を切断

 公開日:2024/01/11
「まさか足を失うとは思っていなかった」痛みの原因は希少がんの”滑膜肉腫”足切断とリハビリの日々

普段とは違う、体の痛み。気のせいかなと思っていたら、実は重篤な疾患である可能性はゼロではありません。今回闘病体験の話を聞いたのは「左膝窩部の滑膜肉腫」という発症頻度の低い希少がんになった清松絵里さんです。清松さんは普段から健診を定期的に受けるなど体に気をつかっていましたが、最終的には足を切断するという決断をされたそうです。そこで今回は、病気が発覚するまでの経緯や手術を決断された清松さんの想いなどを聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年7月取材。

清松 絵里さん

体験者プロフィール
清松 絵里

プロフィールをもっと見る

1976年生まれ、福岡県北九州市在住。夫と2人暮らし。診断時の職業は夫婦でカフェと輸入雑貨の店舗を経営。2021年9月に「滑膜肉腫」が発覚し、手術や化学療法を受ける。現在は3カ月に一度の胸部CT検査などで経過観察をしながら在宅勤務をしている。

佐久間 大輔

記事監修医師
佐久間 大輔(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

歩くのも困難なほどの痛みが、まさかの「滑膜肉腫」だった

歩くのも困難なほどの痛みが、まさかの「滑膜肉腫」だった

編集部編集部

清松さんの病気が判明した経緯について教えてください。

清松 絵里さん清松さん

2021年3月頃に突然左足が痛くなりました。片足立ちができないほどひどかったので、家の近くの内科に行きました。翌日に整形外科でレントゲンを撮ってもらったところ、「膝蓋骨(膝の皿)が傷んでいるから、運動して痩せた方がよい」と言われ、その日は湿布をもらい帰りました。ですが一カ月経っても治らなかったので、整形外科で鎮痛剤(カロナール)をもらい飲むものの、日に日に痛みは増すばかり。鍼灸整骨院で電気治療を受けながら痛みをごまかして生活していました。

編集部編集部

なかなか痛みが治らなかったのですね。そこからどうしましたか?

清松 絵里さん清松さん

同年7月になるといよいよ足の痛みで歩くのが困難になり、MRIが撮れる個人病院で検査をしてもらいました。その結果、膝の裏に大きな腫瘤が見つかったんです。そこで、専門医のいる大きな病院を紹介してもらい、レントゲンとエコー検査をした結果、左膝裏にピンポン玉ぐらいの腫瘤があることが分かりました。翌月は造影剤を用いたより詳しいMRI検査をしたところ、腫瘍内科の先生に診てもらうことになりました。その先生には、腫瘍の周りの水を抜いて検査してもらったものの原因は見つからず。そして翌月9月に生検で腫瘍に針を刺して調べたところ、「左膝窩部滑膜肉腫」と診断されました。

編集部編集部

見つかるまで相当苦労されたのですね。

清松 絵里さん清松さん

はい。最初に家の前の内科を受診したのは、感じている足のしびれやふらつきが脳・精神的なのか外科的な痛みなのか判断つかず、とりあえずの相談へ行ったんです。痛みがひどいと相談したところ、「大学病院のような大きな病院の脳神経内科は、紹介状を持って受診してもらうまで時間がかかる。早く原因を特定するためにも、まずは個人病院の整形外科で診てもらうのが良い」と言われたので、翌日整形外科で診察してもらったという流れです。

編集部編集部

確定診断を受けてから、どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

清松 絵里さん清松さん

医師からは「腫瘍が血管や筋肉も巻き込んでいるので、足を切断するしかない」と言われました。正常な組織でくるんでひとかたまりにして取る広範切除術で、左膝の上から切断することになりました。

いよいよ足を切断することに。リハビリと仕事、生活の変化

いよいよ足を切断することに。リハビリと仕事、生活の変化

編集部編集部

足を切除されることに迷いはなかったのでしょうか?

清松 絵里さん清松さん

実は足を残す選択肢もあったのです。私が手術してもらった病院は「血管を繋ぐ技術を持つ先生がいないので、大学病院でないと手術できない」と言われ、2カ所の大学病院に話を聞きに行きました。ですが、「足を切断する手術は2時間ほどで終わるが、足を残す手術のほうが難しく、8時間ぐらいかかる」と言われました。手術をしてみないと足が残せるかわからず、最終的に切断になるケースもあると説明を受けました。切断を決めた理由としては、不自由な足を残すよりはむしろ義足の方が慣れれば問題なく歩けるようになるのではないかと思ったからです。ただ、残念ながら足の切断の有無に関係なく転移の確率は一緒とのことでした。

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

清松 絵里さん清松さん

最初はショックで頭の中が真っ白になりました。足を失うということ、手術への恐怖、そして抗がん剤治療もやりたくないと思いました。

編集部編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

清松 絵里さん清松さん

当時仕事は立ち仕事だったので休業し、まずは治療に専念しました。

編集部編集部

闘病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。

清松 絵里さん清松さん

自宅で猫を飼っていたので、「猫が待っているから早く元気になって退院しなければ!」と思っていました。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

清松 絵里さん清松さん

もう少し痩せておいた方が良いよ!」ということですね。義足の練習も身軽な方がずっと良いと思います。

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

清松 絵里さん清松さん

2021年11月から2022年2月にかけて抗がん剤治療を行い、2022年3月に足の切断手術を受けました。一応がんは切除できたので現在は経過観察ですが、肺転移の頻度が高いとのことで油断が出来ません。いつでも抗がん剤治療が出来るように鎖骨下に埋め込んだCVポートを月に1回生理食塩水を通して、詰まらないようにケアしています。あとは2022年11月から12月にかけて40日ほど同病院のリハビリテーション科にて、義足の歩行練習をしました。現在は自宅で練習中ですが、あまり思うように上手くいっていません。本当は一日でも早く歩行をマスターして、社会復帰を目指すつもりでした。ですが、昨年末から始めた在宅ワークが自分に合っていたこともあり、ここ半年は毎日座った状態で業務を行っています。

まさか足を失うなんて思っていなかった。健康を気にしていてもいつか病気にはなってしまうと痛感

まさか足を失うなんて思っていなかった。健康を気にしていてもいつか病気にはなってしまうと痛感

編集部編集部

あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。

清松 絵里さん清松さん

私自身用心深く、定期健診に加えて、乳がん検診・胃カメラ(毎年)・1年おきの大腸内視鏡検査を受けるなど、健康に気を配っているつもりでした。こんな自分が、まさか足を失い身体障害者になるなんて夢にも思いませんでした。自分だけは大丈夫と思わず、健診など体のメンテナンスは大事だと思います。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

清松 絵里さん清松さん

今回の病気で合計150日ほど入院しましたが、先生や看護師さん、看護助手の方、リハビリの先生、義肢装具士の先生、作業療法士の先生など様々な方が関わってくださって、長い入院生活も楽しく過ごすことができました。当時も今も変わらず、とても感謝しています。

編集部まとめ

健診などをしっかり受け、健康に気を使っていらっしゃった清松さん。ご自身の経験を踏まえて、「健康診断で安心するのではなく、不調があれば早めに病院を受診することをお伝えしたいです」と言われていました。治療に専念するためには、仕事を休業する必要があります。「いざというときに備えて、医療保険や生命保険、がん保険は必ず加入しておいたほうがよいと思います」といったアドバイスもいただき、保険の重要性についても考えさせられました。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師