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咳が止まらない原因を専門医が解説 「喘息」の咳の特徴や他の疾患との違いとは?

 公開日:2024/09/29

咳が止まらなくて焦った経験がある人も多いと思います。咳が止まらない、長引くのは喘息の症状なのでしょうか? 喘息かどうかの見分け方や治し方について横浜フロントクリニックの尾上先生にMedical DOC編集部が聞きました。

尾上 林太郎

監修医師
尾上 林太郎(横浜フロントクリニック)

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20013年聖マリアンナ医科大学医学部卒業、4月より同大学病院研修医。2015年同大学呼吸器内科診療助手、同大学内科(呼吸器)大学院、2019年同大学院修了、同大学病院呼吸器内科学助教。2021年三浦メディカルクリニック勤務。2024年5月横浜フロントクリニック院長就任。医学博士、日本内科学会認定内科医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)、難病法における難病指定医(呼吸器)。

咳が止まらない・長引くのは喘息の症状? 咳が出てヒューヒューと音がする喘鳴は喘息の発作?

咳が止まらない・長引くのは喘息の症状? 咳が出てヒューヒューと音がする喘鳴は喘息の発作?

編集部編集部

咳が止まらなかったり、咳が長引いたりする時があります。原因はなんですか?

尾上 林太郎先生尾上先生

咳が止まらなかったり、長引いたりすることを慢性咳嗽(がいそう)といいます。医学的には発症から3週間以内を急性咳嗽、3~8週間のものを遷延(せんえん)性咳嗽、8週間以上を慢性咳嗽と定義され、それぞれ原因が異なります。

編集部編集部

どのように原因が異なるのですか?

尾上 林太郎先生尾上先生

急性咳嗽の多くは呼吸器感染症が原因です。しかし、咳が長引く場合には結核、肺がん、副鼻腔炎、咳喘息、喘息、アトピー咳嗽、逆流性食道炎などが原因として考えられます。

編集部編集部

最近では、喘息を発症する人が増えていると聞きました。本当ですか?

尾上 林太郎先生尾上先生

はい。調査によると、喘息の有病率は日本人の約8%とされています。約12〜13人に1人という計算ですから、喘息は決して珍しくない疾患です。これには家屋構造が変化したことでアレルゲンが増加したこと、大気汚染、化学物質の暴露、ストレスや過労の増加、過度に清潔な環境などが原因として挙げられます。

咳が止まらない症状で喘息以外の病気の可能性は? 慢性気管支炎・間質性肺炎・副鼻腔炎・逆流性食道炎とは?

咳が止まらない症状で喘息以外の病気の可能性は? 慢性気管支炎・間質性肺炎・副鼻腔炎・逆流性食道炎とは?

編集部編集部

咳が止まらない場合、喘息以外に原因がありますか?

尾上 林太郎先生尾上先生

先述のとおり、慢性咳嗽の原因として副鼻腔炎、慢性気管支炎、間質性肺炎、逆流性食道炎が考えられます。

編集部編集部

なぜ、副鼻腔炎になると咳が止まらなくなるのですか?

尾上 林太郎先生尾上先生

副鼻腔炎を発症すると副鼻腔に炎症が起き、鼻水が喉の方へ流れ込んできます。すると気管支は異物を追い出そうとして炎症を起こしたり、咳で異物を追い出そうとしたりします。そのため、痰がからんだ湿った咳が続くのです。

編集部編集部

慢性気管支炎とはどのようなものですか?

尾上 林太郎先生尾上先生

文字通り、慢性的に気管支に炎症が起きている状態のことをいいます。具体的には、副鼻腔気管支症候群、百日咳、喫煙に伴う慢性閉塞性肺疾患(COPD)、長期にわたってコントロール不十分な気管支喘息、びまん性汎細気管支炎などがあります。これらはCT検査を行ったとき、気道が通常よりも厚くなっていることで判断がつきます。

編集部編集部

間質性肺炎とはどのような疾患ですか?

尾上 林太郎先生尾上先生

間質性肺炎も咳が長引く病気です。間質性肺炎とは肺にある肺胞という組織の壁に炎症や損傷が起こり、壁が厚くなったり硬くなったりすることで酸素を取り込みにくくなる疾患のこと。少しずつ病気が進行し、呼吸不全になることもあるので注意が必要です。

編集部編集部

最後に、逆流性食道炎で咳が続く理由はなんですか?

尾上 林太郎先生尾上先生

逆流性食道炎になると、胃液や胃で消化途中の食べ物が食道に逆流してきます。すると「おえっ」という咽頭刺激が起きるので咳が出やすくなるのです。

運動後や走った後に咳が止まらない・子供(小児)で咳が止まらないなど、よくある悩み別の対処法と治し方を呼吸器内科医が解説

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編集部編集部

子どもが運動をしたあとや走ったあとなどに咳が止まらないことがあります。

尾上 林太郎先生尾上先生

その場合には「運動誘発喘息」の可能性があります。運動誘発喘息は、運動中や運動後に咳が長引いたりゼーゼーしたり、呼吸困難に陥ったりする疾患のこと。子どもに多く発症しますが、大人でも起きることがあります。

編集部編集部

そのような場合にはどうしたら良いのでしょうか? 運動しない方が良いのでしょうか?

尾上 林太郎先生尾上先生

基本的に喘息の治療目的は「喘息を忘れた生活ができるようになる」ということ。つまり、「喘息だから」といって運動を中断させるのではなく、「運動を行っても喘息が誘発されないように、しっかり治療を行う」ということが重要なのです。もちろん、運動中に発作が出たときには休息が必要ですが、基本的には、運動を行うことは中断する必要はないと考えています。

編集部編集部

どのように治療を行うのですか?

尾上 林太郎先生尾上先生

気管支の炎症を抑えるために、ロイコトリエン受容体拮抗薬の内服薬や吸入ステロイド薬を用います。発作が起きたら運動を中止し、短時間作用性β2刺激薬を使用して発作を鎮めましょう。症状が長引く場合はかかりつけ医を受診してください。

編集部編集部

最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあれば。

尾上 林太郎先生尾上先生

症状があってもなくても、喘息は喘息。「症状がないから」といって、自己判断で服薬を中断するのではなく、継続することが大切です。そのために大切なのは、「長い目で人生を考える」ということ。喘息は治療せずにいると将来的に悪化し、今よりもっと苦しくなることが予想されます。特に子どもの場合には、大人がしっかり管理してあげることが大切。子どもの喘息をきちんと治療せずにいると、肺の成長が制限され、将来的に重症化しやすいことがわかっています。反対に、子どものときしっかり治療を行えば、健康な人と同じくらい肺が成長します。子どもが喘息の場合は親がしっかり管理し、自己判断で治療を中断することのないようにしましょう。

編集部まとめ

喘息による発作の頻度は人それぞれ。まったく起きない人もいますし、季節の変わり目など頻繁に起きる人もいます。しかし、いずれの場合でも医師の指示通り治療をしっかり継続することが大切。「長く症状が出ていないから大丈夫」など油断せず、きちんと治療を継続するようにしましょう。

医院情報

横浜フロントクリニック

横浜フロントクリニック
所在地 〒221-0835 神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町1丁目41 THE YOKOHAMA FRONT 3階 301-C
アクセス 「横浜」駅直結 徒歩1分
診療科目 内科、呼吸器内科、アレルギー科

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