糖尿病性腎症の食事療法を医師が解説 血糖コントロール・栄養管理だけではダメ?
糖尿病には、さまざまな合併症があると聞きます。「糖尿病性腎症(糖尿病性腎臓病)」もその一つです。糖尿病性腎症への食事療法について、内科医の山川貴史先生(LSクリニック東京理事長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
山川 貴史(LSクリニック東京)
目次 -INDEX-
糖尿病の合併症に多い糖尿病性腎症とはどんな病気か内科医が説明
編集部
糖尿病について教えてください。
山川先生
糖尿病は膵(すい)臓から出るインスリンというホルモンの働きが不十分となり、ブドウ糖が適切に体内に取り込まれず、血糖値が上昇する病気です。糖尿病には、さまざまな合併症があります。
編集部
どんな合併症があるのですか?
山川先生
「糖尿病神経障害」「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症(糖尿病性腎臓病)」が3大合併症と言われています。ほかにも、心血管疾患や末梢血管疾患となる人も多く、さらに末梢の神経や血管が障害されることで、足の潰瘍なども非常に起こりやすくなります。
編集部
「糖尿病性腎症(糖尿病性腎臓病)」について、詳しく教えてください。
山川先生
腎臓は、主に体内の老廃物や余分な水分を取り除き、尿を作り、体内の毒素や余分な物質を排出する機能を持っています。長期的に高血糖が続くと、腎臓の微小血管(糸球体)や尿細管などがダメージを受け、腎臓の機能に影響を及ぼします。これが糖尿病性腎症(糖尿病性腎臓病)です。進行すると腎不全に至ることもあります。
編集部
何をもって、糖尿病性腎症と診断されるのですか?
山川先生
一般的に、尿検査でタンパク質またはその主成分のアルブミンの量を測定して診断します。尿中にアルブミンが30mg/gCr以上検出されると、早期の糖尿病性腎症と診断されます。正確な診断には「腎生検」という検査が必要ですが、ほかの腎臓病の可能性もある場合に必要に応じて行われます。尿たんぱく値または尿アルブミン値、血液検査のeGFRという項目で腎臓の機能を評価しています。
糖尿病性腎症の人が食べてはいけないものとは? 普段の食事でタンパク質やカリウムは制限される?
編集部
糖尿病性腎症の人が食べてはいけないものは何ですか?
山川先生
糖尿病の人は糖、つまり炭水化物の摂取に注意が必要ですが、糖尿病性腎症を発症すると、重症度に合わせて、塩分やタンパク質、カリウムなどを摂りすぎないことが大切になってきます。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
山川先生
編集部
塩分を制限するにはどのようにしたら良いですか?
山川先生
編集部
では、タンパク質は?
山川先生
過剰なタンパク質の摂取は避ける必要があります。どの程度の制限が必要かは腎臓の機能だけでなく、年齢やサルコペニア・フレイルのリスクも考慮する必要があるため、個別に医療機関に相談しましょう。また、タンパク質の質についても意識する必要があります。動物性タンパク質の中でも赤肉や加工肉の摂りすぎは腎不全のリスクを高めることが報告されていますので、注意しましょう。鶏肉、魚介類、卵、豆などを中心に摂取することをお勧めします。
病院・クリニックではどんな栄養指導が受けられる?
編集部
カリウムについても教えてください。
山川先生
血中のカリウム濃度が高すぎると、不整脈や心停止のリスクが高まります。糖尿病性腎症の方は摂りすぎたカリウムを排出することが困難となるため、摂取量を控える必要があるのです。
編集部
カリウムの多い食品にはどんなものがありますか?
山川先生
野菜や果物、芋類、海藻類などに多いですね。ただし、カリウムは水溶性で水に溶ける性質がありますので、野菜や芋類などは水にさらしたり、茹でこぼしたりすることで、カリウムを低減することができます。
編集部
色々と考えなければいけないことが多いのですね。
山川先生
そうですね。糖尿病の食事はさまざまな知識が必要とされ、大変だと思います。糖尿病の患者さんやそのご家族が、適切な食事療法を行えるよう医療機関では、栄養指導を受けることもできます。医師や看護師、管理栄養士などが患者さんそれぞれの状態に合った食事のアドバイスや、制限がある中でも少しでも食事を楽しめる工夫などを指導しています。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
山川先生
最近は、インターネットなどで多くの情報を簡単に得ることができますが、「腎臓病」というキーワードだけで自己流で調べてしまうと自分の状態には合っていない食事を摂ってしまうことになります。まずは医療機関で、自分の腎機能などの評価を適切に受けていただき、医師や看護師、管理栄養士などの専門家から必要な栄養指導を受けていただくことをお勧めします。
編集部まとめ
一言で、「糖尿病性腎症」と言っても、その程度によってステージ分けがされており、食事療法の内容も異なってくるそうです。だからこそ、自分の状態をきちんと評価してもらったうえで、栄養指導を受けられるとより安心できるのではないでしょうか。
医院情報
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診療科目 | 内科、腎臓内科、糖尿病内科、循環器内科、呼吸器内科、泌尿器科、アレルギー科 |