「心筋梗塞」の初期症状と予防・対策を医師が解説! 生活習慣の見直しで心筋梗塞を防止しよう
冠動脈が詰まって心筋が壊死し、突然死の原因にもなる「心筋梗塞」。心筋梗塞を引き起こす原因はいくつかありますが、生活習慣を見直すだけでも予防につながることがあります。今回は、どのような点に気をつければ心筋梗塞を予防できるのかについて、「KENカルディオクリニック柏」の中村先生に解説していただきました。
監修医師:
中村 賢(KENカルディオクリニック柏)
目次 -INDEX-
動脈硬化などの「心筋梗塞」の主な原因・症状・診断方法を医師が解説
編集部
まず、心筋梗塞について教えてください。
中村先生
簡単に言えば、心臓に酸素や栄養を送る冠動脈が詰まって、心臓の筋肉(心筋)が壊死している状態のことを指します。心筋梗塞によく似ている疾患に「狭心症」があり、心筋梗塞と狭心症をまとめて「虚血性心疾患」と呼んでいます。
編集部
狭心症と心筋梗塞は何が違うのですか?
中村先生
心筋梗塞は完全に冠動脈が詰まってしまい、心筋に酸素や栄養が行き届かなくなる状態です。その一方、狭心症は冠動脈で狭窄が起きる、あるいは冠動脈で痙攣(けいれん)が起きることによって血液の通り道が極端に細くなり、心筋に酸素や栄養が流れにくくなった状態のことを言います。狭心症の場合は、わずかでも心筋に酸素や栄養が届くので、心筋梗塞の方がより重症度が高いと言えます。
編集部
心筋梗塞の症状について教えてください。
中村先生
突然、強い胸痛が表れるのが特徴です。「圧迫される感じ」「押しつぶされる感じ」など、人によって捉え方が異なりますが、これらの症状が突然起きます。また、冷や汗や吐き気などを伴うこともあります。そのほかに、痛みが肩・腕・首・歯に広がる場合もあります。
編集部
痛みはどれくらい続くのですか?
中村先生
狭心症は5分程度で痛みが消えますが、心筋梗塞の場合は最低でも20分以上痛みが持続します。痛みが生じる範囲は、心筋のどこで梗塞が起きるか、もしくは梗塞の範囲がどれくらい広いかによっても異なり、梗塞の範囲が広ければ左肩・顎・背中などに痛みが生じることもあります。
食生活の改善で心筋梗塞の予防を 心筋梗塞・動脈硬化の防止で医師がおすすめする食べ物とは?
編集部
心筋梗塞の原因はなんですか?
中村先生
多くの場合、柔軟な血管が弾力性を失って硬くなる「動脈硬化」が原因で心筋梗塞が起こります。動脈硬化が進むと、血管の壁が厚くなって血液の通り道が細くなります。そこへコレステロールなどが沈着すると、お粥のようにドロドロとした病変が形成されます。「粥腫(じゅくしゅ)」または「アテローム」と言い、これによって血管が塞がれてしまうのです。
編集部
その粥腫が心筋梗塞の原因になるのですか?
中村先生
このような状態の動脈硬化を「アテローム性動脈硬化」と呼び、アテロームが時間の経過とともに隆起したものを「プラーク」と言います。アテローム性動脈硬化のプラークが破れて破綻すると、そこに血小板が集まり血栓が作られることがあります。この血栓が冠動脈で詰まることで、心筋梗塞が引き起こされるのです。
編集部
なぜ、動脈硬化が起きるのですか?
中村先生
動脈硬化が起きる最大の要因は、「生活習慣病」です。高血圧の状態が続くと血管は血液を強い力で押し出そうとして壁が厚くなります。つまり、血管にとって高血圧は多大なストレスになるのです。それから、脂質を摂りすぎるとコレステロールが血管の内壁に溜まり、動脈硬化が進行します。
編集部
そのほか、動脈硬化を引き起こす要因は?
中村先生
喫煙、運動不足、肥満、高塩分食なども動脈硬化につながります。また、加齢やストレスも動脈硬化を引き起こすとされています。
編集部
動脈硬化や心筋梗塞を予防するのに適している食べ物はなんですか?
中村先生
お魚に含まれる「不飽和脂肪酸」の摂取がおすすめです。特に、いわし・さば・さんまなどの青魚に含まれる「EPA(エイコサペンタエン酸)」は、血液を固まりにくくして動脈硬化を予防する働きがあるとされています。
編集部
ほかにはどんな食べ物がおすすめですか?
中村先生
「食物繊維」も積極的に摂りましょう。食物繊維は動脈硬化の予防になるほか、ナトリウムや脂質を吸着して排出する働きがあるので、脂質異常症や高血圧などの改善にもつながります。
編集部
ある程度、食事で予防することもできるのですね。
中村先生
そうですね。基本的には塩分が高くない食事を心がけましょう。また、糖質・脂質・タンパク質のバランスがとれた食事を摂ることも大事です。
日常の生活習慣から心筋梗塞を予防 運動は心筋梗塞の対策として効果的?
編集部
心筋梗塞を予防するために、日頃からどのような点に気をつければいいでしょうか?
中村先生
まず、肥満の人は減量をしましょう。肥満は動脈硬化の原因になります。また、運動習慣を身につけて、適度に体を動かすことも心筋梗塞の予防につながります。筋肉が増え、基礎代謝が上がると肥満の予防にもつながり、動脈硬化の予防が期待できます。ただし、強度が高すぎる運動は心臓への負担が強いため、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動がいいでしょう。
編集部
どれくらいの強度が目安ですか?
中村先生
私が患者さんに指導するときには、「心拍数が110~130におさまるくらいの有酸素運動をするように」とお話ししています。これくらいの強度が好ましい理由は、「好気性代謝」につながるからです。好気性代謝とは、酸素を使ってゆっくりと時間をかけてエネルギーを作る代謝のことを指します。使用するエネルギー量が多いため、脂肪を燃焼させるのに適しています。反対に、心拍数が130以上になると「嫌気性代謝」となり、体内で酸化物質を増やしてしまいます。血管に悪影響なので、心筋梗塞を予防するには110以下の心拍数に抑えることが必要です。
編集部
具体的には、どのような運動が良いでしょうか?
中村先生
- ウォーキング
- ジョギング
- 水泳
- 水中歩行
- サイクリング
編集部
運動をする際の注意事項はありますか?
中村先生
自分の年齢やライフスタイルなども考慮しながらメニューを選択しましょう。30代の人がするべき運動と、60代の人がするべき運動では質も量も違います。30代の人ならジョギングや水泳が向いていますが、高齢者はウォーキングや水中歩行でも十分効果が期待できます。
編集部
年齢などを考慮して、自分に相応しい運動を選ぶことが大切なのですね。
中村先生
そうです。例えば、70歳や80歳の方に「健康にいいから」といって、無理に運動をすすめるのは、いいことではないでしょう。自分が好ましいと思うライフスタイルを自由に選んでいただき、それを維持できるような健康状態を周囲がアシストしてあげるという考えが必要です。しかし、30代や40代の人なら、これからの人生を考えて、もっと積極的に運動すべきだと考えます。このように、年齢やライフスタイルに応じた運動を取り入れましょう。
編集部
ほかにも、日常生活で気をつけることはありますか?
中村先生
動脈硬化の予防で重要なのは、「いち早く兆候を見つけること」です。そのため、少なくとも年1回は健康診断を受け、血圧・血液検査・心電図で異常がないか確認しましょう。とくに動脈硬化は加齢とともに発症率が上がりますし、女性の場合は女性ホルモンの変化によって閉経後の発症率が上昇します。そうした年代になったら定期的に健康診断を受けて、異常を見逃さないようにしましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中村先生
現在、日本では死因の第2位が心疾患です。日本政府は、胃や大腸などの内視鏡検査を推奨したり、乳がん検診を促したりすることには熱心ですが、心臓をしっかり検査するということについては、なぜかアナウンスが弱いという現状があります。一般的に、健康診断では心電図検査をおこなう程度で、心臓の働きを精査する機会があまり用意されていません。35歳になったら1年に1回は心臓の検査を受けてほしいです。定期的な検診が、心筋梗塞などによる突然死の予防にもつながります。ぜひ、検討してみてください。
編集部まとめ
突然死のリスクも高い心筋梗塞。たしかに重篤な疾患ではありますが、普段から食事や運動などに気をつけることで、ある程度の予防が可能です。それと同時に、心臓の異常をいち早く見つけるために、定期的に検診を受けることが重要とのことでした。ぜひ、心臓にも目を向けてみてくださいね。
医院情報
所在地 | 〒277-0856 千葉県柏市新富町1丁目2-34 2F |
アクセス | JR「南柏駅」 徒歩12分 |
診療科目 | 内科、循環器内科、心臓外科、小児科 |