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スポーツ選手が使う「マウスガード」、子どもの部活でも使うべき? 歯科技工士に聞いてみた

 公開日:2024/01/07
スポーツ選手が使う「マウスガード」、子どもの部活でも使うべき? 歯科技工士に聞いてみた

スポーツ選手が歯につける「マウスガード」。体がぶつかり合うスポーツや格闘技だけでなく、最近では、陸上選手や高校球児も身に付けている場面を見たことがある人もいるのではないでしょうか。「マウスガード」には、どのような効果や種類があり、どんなスポーツをする子どもが使うべきなのでしょうか。歯科技工士の黒澤史織さんに詳しく解説していただきました。

黒澤 史織さん

著者
黒澤 史織(歯科技工士)

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2019年東北大学歯学部附属歯科技工士学校を卒業。2019年東北大学病院に入職し、技工業務全般をおこなうほか、腓骨再建のシミュレーションなど医科歯科連携した業務にも携わっている。2022年東北大学大学院歯学研究科に入学し、スポーツマウスガードについて研究をしている。
石川 聡さん

共著者
石川 聡(つだぬまオリーブ歯科クリニック 院長)

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日本歯周病学会歯周病専門医。歯学博士。東京医科歯科大学歯周病学分野非常勤講師。専門は歯周治療、臨床医として個人に最適な治療を提案するため日々研鑽を積む。専門分野における学術活動も積極的に行う一方、YOBO-LABOなどの活動で様々な予防医療啓発活動にも力を入れている。

マウスガードとはどんなもの? 概要・種類を解説

マウスガードとはどんなもの? 概要・種類を解説

編集部編集部

マウスガードとはどんなものですか?

黒澤 史織さん黒澤さん

スポーツ中の選手の歯や体をケガから守るために口の中に装着するものをスポーツマウスガードといいます。基本的には上顎の歯に装着して、形は歯列を全体的に覆う様にU字形になっています。材質は弾力のある柔らかい材料で、ポリオレフィンやEVA樹脂というプラスチックでできています。色はカラフルで、厚みは競技種目によって異なりますが基本的には3mm程度のものが多いですね。

編集部編集部

マウスガードにはどのような種類があるのですか?

黒澤 史織さん黒澤さん

市販品で調整ができないストックタイプ、市販品で調整ができるマウスフォームドタイプ、歯科医院で作るカスタムメイドタイプがあります。

編集部編集部

マウスガードはどのような場面で使われるのですか?

黒澤 史織さん黒澤さん

主に選手同士が接触するコンタクトスポーツ時に使います。ボクシングやアメリカンフットボール、アイスホッケー、総合格闘技などでは義務化されており、試合時は必ず装着しなければなりません。また、サッカーや野球、バスケットボールなどのスポーツでも装着している選手がいます。重量挙げやアーチェリーなど選手同士が接触しないノンコンタクトスポーツでも使用します。試合時だけではなくて、普段の練習から使用することをお勧めします。

マウスガードの効果とは?

マウスガードの効果とは?

編集部編集部

マウスガードには歯を守る効果がありますか?

黒澤 史織さん黒澤さん

あります。歯を守る効果があるだけではなく、口腔内組織(歯ぐきや唇、頬、舌)を守る効果もあります。衝撃から顎や顎関節、頭を守り、脳震盪や脳へのダメージを軽減する効果も報告されています。また、自分のことを守るだけではなく、自分の歯で相手を傷つけることを防ぐ効果もあります。

編集部編集部

スポーツマウスガードを着けると競技のパフォーマンスが上がるのですか?

黒澤 史織さん黒澤さん

マウスガードにより保護されているという安心感から、より思いきったプレーができるという心理的効果があると言われています。

編集部編集部

プロ選手が使用する物とアマチュア選手が使用するものに違いはありますか?

黒澤 史織さん黒澤さん

基本的には同じです。しかし、選手によって材料を変える場合があります。例えばサッカーの遠藤航選手はカーボンファイバーとケブラーの合成素材を使っているみたいですね。野球の王貞治さんは現役時代に歯を強く食いしばったために歯がボロボロになったという話は有名ですし、スケートの浅田真央さんもジャンプの時に奥歯を噛みしめて歯が欠けたことがあると語られていました。競技はそれぞれ違いますが、歯に負担がかかることは同じと言えます。

自分に合うマウスガードの選び方を知る

自分に合うマウスガードの選び方を知る

編集部編集部

カスタムメイドと市販品のマウスガードの違いについて教えてください。

黒澤 史織さん黒澤さん

カスタムメイドは、歯科医師が患者さんの歯型を取って、一人ひとりの歯や歯ぐきの形に合ったフルオーダーのものです。歯科医師か歯科技工士が製作するため精密なものになります。市販品のマウスガードは、スポーツ用品店などで安価に購入できますが、自分で形を調整しなければなりません。お湯で温めて柔らかくしたものを歯に当てて作るか、マウスガードの内面に裏装材を盛り歯列にはめて作ります。精密に作ることが困難でフィット感が得られず、呼吸がしにくい、すぐに外れる、などの理由で一度の使用で断念してしまう方も多いですね。また、厚みが不均一で咬み合わせの調整をおこなっていないため顎関節症を引き起こす可能性もあり危険な場合があります。

編集部編集部

カスタムメイドで作成したい場合は、どこに行けば良いのでしょうか?

黒澤 史織さん黒澤さん

歯科のある大学病院やクリニックに行くことで作成することができます。

編集部編集部

マウスガードの使用に関して知っておくべきポイントについて教えてください。

黒澤 史織さん黒澤さん

マウスガード使用後は、流水でよく洗って、洗浄スプレーをかけ、専用のケースに入れて乾燥状態で保管してください。洗う時に柔らかい歯ブラシを使用すると効果的です。マウスガードは熱に弱いので熱湯消毒はNGです。消耗品のため劣化や破損はつきものなので、約1年で作り替えることを推奨します。競技種目やレベル、ポジションに配慮し、噛み合わせや咬合力などの検査をおこなったうえで適切なマウスガードを装着しましょう。

編集部まとめ

マウスガードには、ケガの予防やスポーツの際の衝撃を和らげる効果のみならず、噛み合わせを均一にすることによりパフォーマンスが向上する効果も報告されているようです。また、市販品のものに比べ、カスタムメイドのものが一人ひとりに合わせて、専門家が作成するため、より高い効果を期待できるとのことでした。本稿をきっかけに皆様もマウスガードの使用を一度考えてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修歯科医師