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フレイル予防に有酸素運動は効果的! おすすめの種類・頻度について

 公開日:2023/10/20
フレイル予防に効果的な有酸素運動とは?

散歩や水泳などの運動は身体によいといわれますが、加齢によって起こる心身の虚弱状態「フレイル」に対しても適度な有酸素運動は改善や予防効果があるといわれます。そこで今回は、具体的な有酸素運動の取り組み方や注意点に至るまで、鹿児島大学特任研究員で健康運動指導士の立石麻奈さんに解説していただきます。

立石 麻奈さん

著者
立石 麻奈(健康運動指導士)

プロフィールをもっと見る
2020年日本体育大学体育学部卒業、2022年鹿児島大学大学院保健学研究科博士前期課程修了。健康運動指導士として中高年者に向けた運動プログラムの作成及び運動指導を行う。鹿児島県にある指定運動療法施設、株式会社ニチガスクリエート アーバンウェルネスクラブ・エルグでの勤務を経て、2021年より現職。地域在住中高年者を対象にした地域に根差した介護予防・運動処方に関わる調査・研究に従事する。
牧迫 飛雄馬さん

共著者
牧迫 飛雄馬(理学療法士)

プロフィールをもっと見る
2001年国際医療福祉大学理学療法学科卒業、2009年早稲田大学スポーツ科学学術院博士後期課程修了。国際医療福祉大学病院、リハビリ推進センター株式会社、札幌医科大学特任助教、日本学術振興会特別研究員(PD)、ブリティッシュコロンビア大学(Research Fellow)、国立長寿医療研究センター予防老年学研究部健康増進室長を経て、2017年より現職。日本老年療法学会副理事長、日本転倒予防学会理事など。

フレイルに有酸素運動は有効?

フレイルに有酸素運動は有効?

編集部編集部

有酸素運動とはどのような運動のことを指しますか?

立石 麻奈先生立石先生

有酸素運動とは、筋肉を動かす際に酸素を使う運動のことです。具体的には、長時間継続可能な軽度~中程度(楽に会話ができる~息が弾むくらい)の負荷の運動が有酸素運動になります。有酸素運動は筋力トレーニングと異なり、運動時に持続的に呼吸を行うことで十分な酸素を体内に取り入れて細胞のミトコンドリア内で糖や脂肪をエネルギー源に変えることで運動を行います。こういった酸素を用いて持続的にエネルギー源を作り出せる好気的な運動が、有酸素運動です。

編集部編集部

有酸素運動がフレイルに与える影響について教えてください。

立石 麻奈先生立石先生

フレイルは、身体的側面だけでなく認知・精神的側面、社会的側面などさまざまな要因があり、「多面性」があるといわれています。有酸素運動ではこうした多面性を有するフレイルの特徴に対し、脳の活性化や心肺機能の向上といった影響をもたらすことで、加齢に伴う心や身体の機能低下の予防・改善が期待できます。

編集部編集部

有酸素運動はフレイル予防に有効なのでしょうか?

立石 麻奈先生立石先生

適度な有酸素運動は心身機能を向上させることから、フレイル予防におすすめです。また、程よく汗をかきながら代謝を上げる有酸素運動はフレイル発症の原因になる糖尿病や高血圧症などの生活習慣病の予防にもなります。さまざまな運動のなかでも、ウォーキングなどの有酸素運動は無理なく取り組みやすい全身性の運動ですので、高齢者にもおすすめです。

有酸素運動の実践

有酸素運動の実践

編集部編集部

フレイル予防におすすめな有酸素運動にはどのような種類がありますか?

立石 麻奈先生立石先生

おすすめな有酸素運動にはウォーキング、ジョギング、サイクリング、ラジオ体操、エアロビクスダンス、水泳、縄跳びなどが挙げられます。特にウォーキングは60~70代の高齢者が「初めて、もしくは久しぶりに再開した運動」のうち約6割を占めていると報告されており、最も日常的に実施しやすい運動です。また、ウォーキングは特別な器具や設備を必要としないので、身近で取り組みやすい運動としてもおすすめです。

編集部編集部

有酸素運動の効果的な強度や頻度はありますか?

立石 麻奈先生立石先生

有酸素運動は、楽である~ややきつい程度の負荷で10分以上の運動を合計で30分程度、できれば毎日実施することを推奨されています。習慣的に運動を実施していない方の場合は、そこまで強度をあげなくても運動開始後に短時間で心拍数が上昇しやすいので、短い時間からはじめましょう。さらに、生活習慣病を有する方は血圧管理などに注意し、持病や服薬がある方は事前にかかりつけ医と相談してから実施するようにしてください。

編集部編集部

フレイル予防のための有酸素運動を行う際の食事の注意点はありますか?

立石 麻奈先生立石先生

有酸素運動は一般的に軽度~中程度の負荷で数十分~数時間単位で実施される運動であるため、エネルギーの消費が多くなります。体内に蓄積されているエネルギーが不足した状態になると、筋肉に蓄積されているたんぱく質を分解してエネルギーを生成するため筋肉量の減少にもつながります。ですので、有酸素運動を実施する前は炭水化物を十分量摂取し、運動によって傷ついた筋肉を回復させるためにもたんぱく質の摂取を心がけるようにしましょう。

有酸素運動の注意点

有酸素運動の注意点

編集部編集部

有酸素運動を始める前に準備すべきことはありますか?

立石 麻奈先生立石先生

有酸素運動は気軽にできるというメリットがある反面、準備をせずにそのまま始めると関節痛や熱中症などの危険があり、注意が必要です。有酸素運動を始める前の準備としては、直前の食事の管理(運動直前の多食・油っぽいものなどの消化に悪いものを避ける)、血圧や脈などの確認、動きやすい衣服の着用(通気性の良い、伸縮性のあるもの)などに気をつけましょう。さらに、運動中の脱水予防のための運動前の水分補給も欠かさず行いましょう。

編集部編集部

有酸素運動中の注意点や中断すべきタイミングなどについて教えてください。

立石 麻奈先生立石先生

注意点としては猛暑を避け、こまめに水分補給をすることです。特に夏場は熱中症の危険があります。しかし、首に長時間タオルを巻く、汗拭き用のリストバンドをつけるなどでは熱がこもりやすい状況になります。衛生面からも汗を拭くことは大事ですが、首や手首などに物を巻きっぱなしの状況は避けるようにしましょう。さらに、ご自身の体調を考慮し、強い疲労感や身体の痛みを感じるときは強度を下げる、いつもより短時間で切り上げるなどの調整をしてください。

編集部編集部

有酸素運動をしてはいけない条件や覚えておくべき禁忌事項はありますか?

立石 麻奈先生立石先生

体調がすぐれない時や医師の指示がある場合は、有酸素運動の実施を避けましょう。具体的には、痛みなどの強い不快感が生じているとき、安静時血圧・脈拍の過度な上昇が認められるとき(収縮期血圧180mmHg以上、拡張期血圧110mmHg以上、脈拍100拍/分以上)などが挙げられます。特に何らかの持病を有する方は、疾患の特徴や服用している薬の特性によって運動実施が可能な基準が異なるため、かかりつけ医の指示のもと実施の可否や負荷の調整といった判断を行う必要があります。

編集部まとめ

有酸素運動は、フレイルの改善・予防に有効な運動の一つであることがわかりました。ウォーキング以外に縄跳びやエアロビクス、水泳なども有酸素運動に含まれ、自分に合った継続しやすい運動に取り組むことが継続するためにも重要です。一方で、持病や運動前の症状、食事、運動する環境には注意が必要な場合もあるので、読者の皆様も本記事を参考に始めやすい運動を見つけてみてください。

この記事の監修理学療法士