エナジードリンクの飲みすぎによる死亡例やカフェイン中毒の危険性を医師が解説
若い人々を中心に飲まれることが多い「エナジードリンク」。眠気がなくなったり、頭がスッキリしたりするという理由から愛飲する人も増えていますが、飲みすぎによる体への悪影響が気になるところ。そこで、エナジードリンクの効果や飲みすぎによる危険性について、医師の石黒先生にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
石黒 剛(医療法人白青会 いしぐろ在宅診療所岡崎)
目次 -INDEX-
エナジードリンクとはどんな飲み物? エナドリを飲みすぎると健康に悪い・リフレッシュ効果はないという噂は本当?
編集部
エナジードリンクとはどのような飲み物なのでしょうか?
石黒先生
エナジードリンクとは「カフェイン」や「アルギニンをはじめとするアミノ酸」「ビタミン」などを含んだ飲料を指します。糖類を多く含む炭酸飲料が多く、エナジードリンクの多くは眠気覚ましやリフレッシュ効果をうたっています。
編集部
「エナジードリンクを飲みすぎると体に悪い」というのは本当でしょうか?
石黒先生
エナジードリンクを少量摂取するのであれば大きな問題はありません。しかし、飲みすぎると体に悪影響を及ぼす危険性があります。問題となるのは、カフェインや糖質の過剰摂取です。また、海外で作られたエナジードリンクには、アミノ酸の一種であるタウリンなど、国内では医薬部外品とされている成分が多く含まれていることもあり、それらを気づかない間に摂りすぎている可能性があります。
編集部
カフェインは体に悪いのでしょうか?
石黒先生
カフェインには眠気を覚ます効果や集中力を高める効果があり、適量であれば体に良い働きをしてくれます。ただし、多くの量を漫然と摂取すると、体に悪影響を及ぼします。例えば、カフェインを飲み続けると耐性、身体依存が形成され、少ない量で効果を感じられなくなったり、飲むのをやめると離脱症状が生じる「カフェイン依存症」に陥ったりする可能性があります。また、一度に多量のカフェインを摂取すると、「急性カフェイン中毒」になる危険性もあります。
編集部
糖質が多く含まれていることも問題となるのですね。
石黒先生
エナジードリンクというと「カフェインを多く含む」というイメージが強いですが、糖質を多く含んでいる点にも注意が必要です。エナジードリンクとして販売されているものの多くは、甘みの強い糖類を多量に含んだ清涼飲料水です。ほかのジュース類と同様、摂取カロリーが高くなってしまったり、血糖値が急激に上昇したりする恐れがありますので、飲みすぎには注意が必要です。
エナジードリンクの飲みすぎで死亡者が出た原因を医師が解説 致死量の過剰摂取・カフェイン中毒が原因?
編集部
エナジードリンクの飲みすぎで救急搬送されたという例があると聞きました。原因は何なのでしょうか?
石黒先生
エナジードリンクなどに含まれるカフェインの過剰摂取によって救急搬送される例は少なからず存在します。カフェインを短時間で多量に摂取すると、中枢神経系の刺激によりめまい、動悸、不安、手足の震え、下痢、吐き気といった急性中毒症状が表れることがあります。日本中毒学会が行った調査では、2011年から2016年の5年間で101人がカフェインの過剰摂取により救急搬送され、うち3人が死亡したと報告されています。
編集部
エナジードリンクの飲みすぎによる死亡例もあるのですか?
石黒先生
エナジードリンクを常飲していた人が急性カフェイン中毒で死亡し、エナジードリンクの危険性を訴える報道が増えるということが過去にありました。確かにエナジードリンクの飲みすぎは体に大きな負担をかける危険な行為であり、救急搬送されるケースはありますが、エナジードリンクだけで死に至る例はほとんどないようです。過去のカフェイン中毒で死に至った例では、カフェイン飲料に加えてカフェインの錠剤を過剰服用している場合がほとんどでした。カフェインの過剰摂取により救急搬送された人の90%以上がカフェインの錠剤を服用していたという調査も存在します。
編集部
エナジードリンクを飲みすぎると、長期的な悪影響もあるのでしょうか?
石黒先生
エナジードリンクの飲みすぎは健康に様々な悪影響を及ぼします。例えばカフェインの代謝が遅い遺伝子型を持つ人が、カフェインを毎日多量に摂取し続けると高血圧の発症リスクを高めることが、トロント大学の研究で示唆されました。また、妊婦が高濃度のカフェインを摂取し続けると胎児の発育が阻害され、流産や死産、出生時の低体重のリスクが高まる可能性も報告されています。いずれにしても、適度な量を適度な頻度、タイミングで取る分には問題ありませんが、注意は必要です。
エナジードリンクの効果的な飲み方とは? 健康に害のない1日の摂取量・本数、子どもへの与え方などの注意点は?
編集部
エナジードリンクは1日何本までなら飲んで良いのでしょうか?
石黒先生
まずカフェインについてですが、日本においても海外においても、毎日ずっと摂り続けても問題ないという「摂取許容量」は設定されていません。これは体重や体質による個人差が大きいためです。一方で、健康への悪影響を防ぐために推奨されている「摂取上限」としては、1日あたり300〜400mgまでとしているものが多いですね。また、エナジードリンクには前述の通り糖質も多く含みますので、1日1本程度にしておくのが良いのではないでしょうか。また、カフェインや糖類を含む、ほかの飲料を常飲している人は、飲まない方が良いと考えます。
編集部
エナジードリンクは子どもに与えてもよいのでしょうか?
石黒先生
エナジードリンクは子どもには推奨しません。これはカフェインに対する感受性が子どもは大人と比べて高く、少量でも強い効果を発揮してしまうためです。また、妊娠している女性に関しては、カフェインの摂取量を1日150〜200mg程度以下にすることが推奨されているため、避けた方が良いでしょう。WHO(世界保健機関)によると、カフェインの胎児への影響はまだ確定はしていないとしつつも、前述のようなリスクがあるため妊婦はコーヒーでいうと1日3〜4杯までにすることが推奨されています。
編集部
エナジードリンクに頼りすぎるのも良くないということですね。
石黒先生
カフェインはエナジードリンクのみならず、コーヒーやココア、お茶、栄養ドリンクなどに含まれます。これらは私たちの多くが日常的に摂取しているものであり、それによって知らないうちにカフェインを過剰摂取している可能性もあります。エナジードリンクを毎日複数本飲まないと体がだるくて動けないといった状態になってしまうと困りますよね? 疲れた身体や脳が必要としているのは、エナジードリンクに含まれるカフェインや糖質ではなくストレスの軽減や休息なのではないでしょうか。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあれば。
石黒先生
エナジードリンクは適度に飲めば体や頭のパフォーマンスを高める効果を期待できますが、あくまでも短期的な対症療法のようなものです。カフェインという手段に依存するのではなく、日々のストレス、生活環境、スケジュールなど、疲れの根本原因としっかりと向き合っていくことが大切だと思います。
編集部まとめ
エナジードリンクの効果と飲みすぎることの危険性、上手な付き合いかたについて学べました。エナジードリンクに頼りすぎず、職場や学校におけるストレス・疲労の根本原因と向き合うことで、ゆとりのある健康的な生活を送れると良いですね。
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