栄養ドリンクを毎日飲むことで悪影響は起こるのか 飲むタイミングや注意点を薬剤師が解説
「疲れているのにがんばらないといけない」「風邪をひいた」「二日酔いになった」そんなとき、栄養ドリンクを飲むと元気が出たり、早く良くなったりする気がしますよね。忙しい日々を送るみなさんの強い味方である栄養ドリンクですが、毎日飲んでも大丈夫なものなのでしょうか。そんな栄養ドリンクに関する素朴な疑問について、薬剤師の川村さんに伺いました。
監修薬剤師:
川村 文栄(薬剤師)
目次 -INDEX-
栄養ドリンクは毎日飲んでも大丈夫なのか ポイントは「用法・用量を守ること」
編集部
栄養ドリンクは毎日飲んでも大丈夫なのでしょうか?
川村さん
ビンに記載されている用法・用量で「1日1本」と書かれている場合は、飲んでも大丈夫でしょう。この用法・用量はとても大事なものです。これを守って飲むようにしてください。
編集部
1日に過剰に摂取するとどのようなことが問題ですか?
川村さん
カフェインや糖類の摂り過ぎが問題になります。カフェインは中枢神経に働きかけて倦怠感や眠気を取ってくれます。しかし、過剰に摂取すると中枢神経への働きが強くなり、めまいや心拍数の上昇、下痢、嘔吐などの症状が起こることがあります。
編集部
ほかにも問題点があれば教えてください。
川村さん
糖分の摂りすぎが考えられます。糖類は疲労時の脳や筋肉にエネルギー源として使われますが、栄養ドリンクには1本あたり平均15~18gの砂糖が入っています。WHO発表の成人1日の砂糖摂取量目安が25gですので、過剰に飲むと糖分の摂り過ぎになります。また、栄養ドリンクの糖類は吸収しやすく血糖が高くなりやすいので、糖尿病の方は特に注意が必要です。繰り返しになりますが、用法・用量を守ることが重要です。ノンシュガーやローカロリーの栄養ドリンクも販売されており、こちらを選ぶことで糖・カロリーを抑えることができます。
編集部
風邪のときに飲んでも大丈夫ですか?
川村さん
「病中病後・体力低下時、発熱を伴う消耗性疾患時の栄養補給」と用法・用量に書かれている場合、飲んでも大丈夫です。栄養ドリンクにはカフェイン、アルコールが入っているものが多くなっています。少量のカフェインですが、眠れなくなるようであれば、夜に飲むことは避けてください。また、風邪薬との相性が良くない場合、ノンカフェイン・ノンアルコールの栄養ドリンクがおすすめです。
編集部
妊娠中、授乳中に飲んでもいいのでしょうか?
川村さん
「妊娠授乳期、産前産後などの栄養補給」と書かれているものは、飲んでも大丈夫です。またカフェイン・アルコール・糖類については、1日1本程度であれば飲んでも問題ない量ですが、気になる方は上述のようにノンカフェインやノンアルコール、ローカロリーのものが有効です。
栄養ドリンクに含まれる成分と効果、エナジードリンクとの違いを解説
編集部
栄養ドリンクに含まれる成分について教えてください。
川村さん
タウリンやビタミンB群、糖類が主な成分です。ほかに生薬、ビタミンC、ミネラル、アミノ酸、ローヤルゼリーなどが入っているものもあります。
編集部
栄養ドリンクの効果にはどんなものがありますか?
川村さん
疲労回復・予防、滋養強壮、栄養補給、肝機能回復、二日酔い軽減などがあります。タウリンは心臓や肝臓の働きを助ける、アミノ酸に似た物質です。甲殻類や魚に多く含まれ、疲労回復や肝機能回復・二日酔いなどに効き、効果は一時的で体にたまらないまま尿から体外に出ていくため、副作用もありません。ビタミン類は体の中のエネルギーがうまく回るように働くため、疲労回復に効きます。糖類は脳や筋肉のエネルギー源となり、疲労回復・栄養補給につながります。アミノ酸は筋肉や臓器のもとになり、細胞の修復をしてくれます。
編集部
栄養ドリンクとエナジードリンクの違いは何ですか?
川村さん
栄養ドリンクは医薬品・医薬部外品に分類されますが、エナジードリンクは清涼飲料水になります。どちらもタウリンやビタミン、カフェインといった成分が共通しています。医薬品・医薬部外品にあたる栄養ドリンクは有効成分の内容、効能・効果も記載義務があり、逆にどのような症状に効くか買う人に伝えることが許されています。一方で、エナジードリンクは食品の一種になるので、成分などの記載義務がなく期待される効果を言うことが許されていません。そのため「爽快感」「元気が出る」などといった表現しかできないのです。
編集部
成分や選ぶときの違いはありますか?
川村さん
エナジードリンクには炭酸が含まれているものが多く、爽快感を感じ飲みやすくなっています。また、1本あたりのカフェイン量が栄養ドリンクよりエナジードリンクの方が多めですね。カフェインの過剰摂取につながりやすく、海外ではエナジードリンクの飲みすぎでの死亡例や訴訟事故も起こっています。日本産と海外産では成分が異なりますが、それでも注意が必要でしょう。
栄養ドリンクを飲む際の注意点は? 飲んではいけない時期・タイミングはある?
編集部
いつも飲んでいるお薬がありますが、栄養ドリンクを飲んでもいいのでしょうか?
川村さん
少量のアルコールが入っている栄養ドリンクは、睡眠薬や精神安定剤などと一緒に飲むと、薬の作用が強く出る場合があります。気になる場合は医師や薬剤師にご相談ください。
編集部
飲んではいけないタイミングがあれば教えてください。
川村さん
カフェインで嘔気を感じる人もいるので、空腹時は避けてください。カフェイン入りは朝が望ましいです。アルコール入りは車の運転時にはのまないでください。
編集部
栄養ドリンクを飲む際、ほかに注意点はありますか?
川村さん
即効性を感じますが、効果は一時的で本質的な症状は改善しません。過信して栄養ドリンクに頼るより、食生活や睡眠など生活習慣の改善に努めてください。糖類・カフェインは過剰摂取による悪影響があるので、ビタミン剤やサプリメントに切り替える方法もあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
川村さん
風邪や疲れがたまっていても休めないとき、栄養ドリンクは短期的な力を出す助けになる心強い飲み物です。しかし、飲みすぎは良くないので、どうしてものときの切り札として飲むようにしてください。
編集部まとめ
栄養ドリンクが非常時の疲労回復・栄養補給に有効な飲み物であること、また、エナジードリンクとの違いもわかりました。ただし、栄養ドリンクを飲みすぎるとカフェイン・糖類の過剰摂取につながるので、用法用量を守って飲むようにしましょう。