「水を飲むと痩せる」はウソ・ホント? 1日に飲む量や注意点を医師が解説
「水を飲むと痩せる」というダイエット法がたびたび話題になります。水を飲むだけでダイエット効果があるというのはとても魅力的な話に思えますが、効果は本当にあるのでしょうか。今回は水を飲むことの健康への影響について、医師の石黒先生にお話を伺いました。
監修医師:
石黒 剛(医療法人白青会 いしぐろ在宅診療所岡崎)
目次 -INDEX-
「水を飲むと痩せる」のは本当? 水を飲む習慣がダイエットにつながる理由を医師が解説
編集部
「水を飲むと痩せる」と聞きます。本当なのでしょうか?
石黒先生
「水を飲むことそのもので体重が減る」というエビデンスはありません。ただし、水を正しく飲めば、体の調子が良くなり、結果的に体重が減るということはあるかもしれません。
編集部
痩せるというエビデンスはないのですね。では、水を飲むことでどのような効果が期待できるのでしょうか?
石黒先生
体重減少に直接つながるわけではないにせよ、水を飲むという行為は体重を落としやすい体づくりに効果的です。例えば、基礎代謝を高める効果や便通の改善、腸内環境を整える効果が期待できます。また最近では、食前にしっかりと水を飲むことで血糖値上昇が抑えられるのではないかという研究もおこなわれています。1日で摂る水分量は意外と不足しがちですので、普段から水をしっかりと飲むことは重要であると考えます。
編集部
水を飲む量が不足していると、どのような悪影響があるのでしょうか?
石黒先生
必要な水分量を継続的に摂ることは、体重だけでなく全身の健康状態にも関わります。水分不足の状態が長く続くと、血液の粘度が増し(さらさらでなくなっていき)、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす動脈硬化の進行リスクが高まるということがわかっています。加えて、尿路結石のリスクが高まることも知られています。水分摂取により直接的に痩せることはないにせよ、1日の水分量が不足している人は非常に多いと言われているので、意識して水分を摂ることは良い習慣でしょう。
健康のためには水を1日にどれくらい飲めばいい? 医師が正しい飲み方を紹介
編集部
では、どれくらいの量の水を、どのように飲めばいいのでしょうか?
石黒先生
人間の体から1日に排泄される水分の量は合計約2.5リットルであり、そのうち最低でも1.2リットルは飲料水から摂る必要があるとされています。もちろん、一度に1.2リットルの水を飲めばいいというわけではなく、こまめに少量ずつ摂ることが重要です。のどが渇くときにはすでに脱水症状が始まっている可能性もあるので、のどが渇く前に飲むこと、起床時や入眠前に飲むことを心がけましょう。
編集部
1日に飲む量は、1.2リットルを超えてしまってもいいのでしょうか?
石黒先生
1.2リットルというのは、あくまでも最低必要量です。例えば、気温が高い夏の季節やスポーツをする日にはより多くの水分が失われ、熱中症のリスクも高まるので、より多くの水分を摂る必要があります。身体活動レベルが高い集団では、3〜3.5リットルの水分が必要であるという報告もあります。なお、お酒を飲むときにはアルコールの利尿作用により水分が体からどんどん出ていきますし、アルコールの分解に追加の水分が必要となります。この場合は1.2リットルの水では、おそらく足りないでしょう。「お酒と同量の水を飲め」と言うこともありますが、それくらいお酒は体の水分を奪っていくという性質があります。
編集部
「食前に水を飲むことで血糖値上昇が抑えられるかもしれない」という話がありましたが、体重が減ったという研究もあるのでしょうか?
石黒先生
バーミンガム大学でおこなわれたダイエット中の肥満成人を対象とした研究では、食事を摂る30分前にコップ1杯の水を飲んだ群は飲まなかった群と比べて、体重の減少量が有意に多かったという報告が出ています。平均すると12週間で1.2kgの差があったとのことです。もちろん、これは体重管理のプログラムをおこなっている人を2群に分けておこなった研究であり、水分摂取そのもので体重が落ちたとは言い切れませんが、食前に水を飲むことでダイエットによる体重減少が促進する可能性はあるかもしれません。
健康改善目的で水を飲む際の注意点は? 飲み過ぎは逆効果? お茶や炭酸水でも痩せる効果はある?
編集部
「毎日水を2リットル飲むと痩せる」という話を聞くことがあるのですが、水を飲みすぎることで、体重が増えたりむくみが生じたりすることはあるのでしょうか?
石黒先生
健康な人であれば、体から排泄される量よりも多くの水分を摂取したとしても、余った分は尿として排泄され、体重が増えたり、むくみがひどくなったりすることは基本的にはありません。ただし、極端に多く水分を摂取すると「水中毒」に至る可能性があるので注意が必要です。
編集部
水中毒とはなんでしょうか?
石黒先生
水中毒とは、腎臓の処理能力をはるかに超える量の水を飲むことで起こる状態です。多量の水分によって血液中の重要なミネラルの1つであるナトリウムの濃度が薄くなり、頭痛やめまいが起こります。ただ、5リットル以上の水を一気に飲むなど無茶な飲み方をしなければ、普段の生活ではそれほど気にする必要はないと考えます。
編集部
水の代わりに炭酸水やお茶を飲むことも効果があるのでしょうか?
石黒先生
はい、同様の効果が期待できます。一方、糖質の含まれるジュースやスポーツドリンクの飲み過ぎには注意が必要です。糖質の含まれる清涼飲料水はカロリーが高く、体重が増える原因となります。また、糖尿病などの生活習慣病のリスクも高めます。普段からジュースなど甘い飲料を飲む人は、「水を飲む習慣をつける」というより「日々の飲料を糖類の含まれていない水、お茶、炭酸水などに置き換える」ことをおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
石黒先生
水を飲む習慣はダイエットにとどまらず、身体の健康を維持するために重要な習慣です。何より、今日から誰でも始めることができ、手間や負担も少ない方法です。短期的に体重を減らすというのではなく、長期的にダイエットを続けて健康な体づくりを目指していきましょう。
参考文献
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/oby.21167
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21994426/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12053855/
編集部まとめ
今回は「水を飲む」という習慣について、飲み方のポイントとその効果を学ぶことができました。不足しがちな水分をしっかりと補うことで、健康にダイエットをすることができる体づくりをおこなっていきましょうね。
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