バリウム検査で「慢性胃炎」と診断されたときの対処法を医師が解説 胃カメラは受けた方がいい?
健康診断や人間ドックなどのバリウム検査で「慢性胃炎」を指摘されたという人もいるのではないでしょうか。しかし、自覚症状がない場合には、つい放置してしまうかもしれません。慢性胃炎を指摘されたら一体どうしたらいいのか、胃カメラ検査を受けた方がいいのかなどについて、「よりふじ胃腸科・内科クリニック」の依藤先生にお聞きしました。
監修医師:
依藤 直紀(よりふじ胃腸内科・内科クリニック)
目次 -INDEX-
健康診断や人間ドックのバリウム検査結果で慢性胃炎と言われたら 慢性胃炎の所見が出る症状・原因を医師が解説
編集部
バリウム検査で慢性胃炎と診断されました。一体、どういうことでしょうか?
依藤先生
慢性胃炎は、慢性的に胃の粘膜が炎症を起こしている状態のことです。慢性的に炎症を起こすことで、胃の粘膜が萎縮し、粘膜がただれてざらざらします。この状態を「萎縮性胃炎」とも言います。この慢性的な炎症により、発がん(胃がん)のリスクが上昇してしまうのです。
編集部
慢性胃炎の原因はなんですか?
依藤先生
主な原因に「ピロリ菌感染」が挙げられます。そのほか、自己免疫によって起こるものもあります。なお、ロキソニン(NSAIDs)などの消炎鎮痛剤を内服したり、日常的にストレスがたまっていたり、暴飲暴食によって生じたりする胃炎は、慢性胃炎ではなく「急性胃炎」です。急性胃炎が続いて慢性胃炎へ移行することは、基本的にありません。
編集部
慢性胃炎を発症すると、どのような自覚症状があるのですか?
依藤先生
「胃が痛む」「胃もたれがする」「胸焼けがする」「腹部膨満感がある」「ゲップが出る」などの症状が表れることがあります。ただし、自覚症状が全くない人も多くいます。実際、健康診断でバリウム検査を受け、指摘されて初めて気がつく人も少なくありません。
慢性胃炎を治療せずに経過観察で放置すると胃がんなどのリスクが! 胃カメラを受けた方がいい理由
編集部
慢性胃炎を放置すると、どのようなリスクがあるのですか?
依藤先生
慢性胃炎が進行すると、胃の粘膜が萎縮した萎縮性胃炎という状態になります。そして、長期間の炎症が続くことにより発がんリスクが高まり、胃がんを発症しやすくなります。
編集部
さらに進行すると、どのようなリスクがあるのですか?
依藤先生
胃の萎縮がさらに進行し、胃粘膜上皮が再生を繰り返すと、「腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)」といって、胃の粘膜が腸の粘膜のようになる病変がみられることがあります。この場合はさらに胃がんのリスクが上昇し、「胃がんができやすい胃」となります。
編集部
慢性胃炎を放置することで、胃がんを発症するリスクもあるのですね。
依藤先生
そうですね。さらに言うと、慢性胃炎を起こしている胃の範囲が広いほど、胃がんのリスクも上昇します。そのため、慢性胃炎と診断された場合は、原因であるピロリ菌の有無をまず調べて、陽性であれば除菌(除去)することをおすすめします。
編集部
ピロリ菌を除菌すると、どうなるのですか?
依藤先生
ピロリ菌を除菌することで、胃の粘膜の炎症を抑えることができ、慢性的な炎症によって生じた萎縮した粘膜がさらに広範囲に進行するのを食い止めることができます。さらに、ピロリ菌自体も胃がん発症を促進する因子であることから、除菌することで胃がんの発生リスクを下げることができます。なお、慢性胃炎の原因であるピロリ菌は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こすリスクもありますので注意が必要です。そのため、早めに確定診断をつけ、治療を開始する必要があります。
編集部
そうなると、バリウム検査で慢性胃炎と指摘された場合には胃カメラの検査を受けた方がいいのですね。
依藤先生
詳しく胃の粘膜の状態を調べるため、胃カメラの検査をおすすめします。なぜなら、バリウムで慢性胃炎と指摘された人に胃カメラをおこなうと、早期胃がんが発見されることがあるからです。というのも、胃がんは早期の場合、わずかな隆起やへこみ(陥凹)しか所見がないことが多く、バリウム検査ではわずかな隆起やへこみまでは診断できないからです。
バリウム検査で慢性胃炎が見つかったときの対処法や注意点・治療の流れ
編集部
胃カメラを受けるにはどうしたらいいのですか?
依藤先生
胃カメラ検査をおこなっている医療機関を受診、または予約してください。胃カメラは「ツラい」「しんどい」など不安を持つ人も多いと思いますが、例えば当院では鎮静剤を使って、寝ている間に検査をおこなうことも可能です。また、口から挿入する内視鏡(経口内視鏡)以外に、鼻から挿入する内視鏡(経鼻内視鏡)もあり、少しでも患者さんの負担を減らした検査を受けることもできます。
編集部
胃カメラの検査を受けて、慢性胃炎であることが明らかになった場合は?
依藤先生
胃カメラの検査では必要に応じて胃の組織の一部を採取し、ピロリ菌感染検査の有無を確認します。もしピロリ菌に感染している場合には、内服の薬物治療で除菌治療をおこないます。
編集部
ピロリ菌を除去すると慢性胃炎はおさまるのですか?
依藤先生
症状がおさまる場合もありますが、萎縮した粘膜(慢性胃炎の変化)は元の状態には戻りません。また、ピロリ菌を除菌すると、除菌前よりは胃がんのリスクは下がるものの、依然、健常者と比べると胃がんのリスクは高いことから、年に1回は胃カメラでの定期検査をおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
依藤先生
胃バリウム検査で慢性胃炎を指摘された場合には、より精査をするため、胃カメラでの検査をおすすめします。万が一、小さながんが見つかっても、早期胃がんの場合は内視鏡を使った手術で完治できる可能性が非常に高くなっています。健康診断などで胃バリウム検査を受け、「要精密検査」と指摘された場合には胃腸内科などの内視鏡専門医を早めに受診しましょう。
編集部まとめ
進行がんはバリウム検査でも胃カメラ検査でも見つけることができますが、早期の場合にはバリウム検査では発見が難しいとされています。そのため、慢性胃炎を指摘された場合には、早めに胃カメラを受けることが必要です。「胃カメラの検査をするとえずくのが嫌」「怖い」という場合には、鎮静剤を使った検査が可能な医療機関もあるので、相談してみましょう。
医院情報
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アクセス | JR「島本駅」 徒歩1分 阪急電鉄「水無瀬駅」 徒歩10分 |
診療科目 | 消化器内科、内科 |