「慢性胃炎」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】
慢性胃炎は胃の粘膜が長期間にわたって炎症を起こしている状態で、胃痛、胃もたれ、胃部膨満感、胃の不快感などの胃の症状がみられます。ピロリ菌の感染が原因である場合がほとんどで、ピロリ菌に感染している場合は除菌治療を行います。慢性胃炎は胃がんに発展するリスクがあるため、経過や適切な治療が必要です。
今回は慢性胃炎の症状や原因、治療方法について詳しく解説します。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
慢性胃炎とは
慢性胃炎とはどのよう病気ですか?
-
長期間にわたって、胃の粘膜が炎症を起こしている状態です。慢性胃炎のほとんどは、ピロリ菌感染によって起こります。
慢性胃炎は、表層性胃炎、鳥肌胃炎、腸上皮化生、萎縮性胃炎などのタイプに分けられます。
表層性胃炎
表層性胃炎とはどのような状態ですか?
-
胃の中の粘膜が線状に赤くなっている状態です。ストレスや暴飲暴食などによる胃酸過多が原因で、無症状の人もいれば、痛みが出る人もいます。痛みがある場合は、生活習慣の改善で症状が緩和します。
ピロリ菌に感染していない人にみられる慢性胃炎です。
鳥肌胃炎
鳥肌胃炎とはどのような状態ですか?
-
胃の出口付近にある、リンパ節の濾胞(ろほう)という部分が増殖し、慢性的に炎症が起こっている状態です。胃の粘膜の表面が、鳥肌が立っているようにみえます。
痛みを伴うことが多く、ピロリ菌陽性の若い女性によくみられます。ピロリ菌陽性の場合は、除菌治療を行います。胃がんとの関連性が指摘されており、リスクが高い慢性胃炎です。
萎縮性胃炎
萎縮性胃炎とはどのような状態ですか?
-
胃の粘膜の炎症が長く続き、胃の粘膜が萎縮した状態です。ピロリ菌感染や免疫異常によって胃の粘膜に炎症が生じる自己免疫性胃炎という病気で起こります。
進行すると腸上皮化生となり、胃がんに発展するリスクがあります。
腸上皮化生
腸上皮化生とはどのような状態ですか?
-
胃の粘膜の萎縮が進んで、大腸や小腸に似た粘膜に変化してしまった状態です。ピロリ菌感染などが原因で起こります。
ピロリ菌の除菌後も腸上皮化生は長期間にわたってみられます。腸上皮化生は胃がんの発生リスクが高い状態です。
慢性胃炎の症状
慢性胃炎ではどのような症状がみられますか?
-
慢性胃炎では、以下のような症状がみられます。
- 胃痛
- 胃部膨満感
- 胃もたれ
- 胃の不快感(重い感じなど)
- 吐き気
- 嘔吐
- 食欲不振
慢性胃炎の原因
慢性胃炎の原因について教えてください。
-
慢性胃炎のほとんどの原因はピロリ菌感染です。自己免疫異常による自己免疫性胃炎(A型胃炎)や、ストレス、生活習慣なども原因になります。
ピロリ菌感染
ピロリ菌感染によって起こる慢性胃炎について教えてください。
-
正式名称はヘリコバクター・ピロリと言い、細菌の一種です。幼少期に、ピロリ菌が口から胃の中まで入り込み、胃の粘膜に感染して起こります。
上下水道が十分に普及していなかった世代の人はピロリ菌感染率が高く、生水の摂取が原因と考えられています。衛生環境や生活環境が改善された現代では、ピロリ菌感染者は減少傾向にあります。両親や祖父母がピロリ菌に感染していて、小さいころに口移しで離乳食をあげるなどした場合は、若い人でも感染がみられます。
ピロリ菌に感染すると、基本的に自然に除菌されることはありません。ピロリ菌が出す毒素などで胃の粘膜が炎症を起こして慢性胃炎を生じます。
自己免疫性胃炎(A型胃炎)
自己免疫性胃炎(A型胃炎)について教えてください。
-
免疫異常によって、自分の免疫細胞が胃の特定の細胞を攻撃し、慢性的な炎症を起こす病気です。A型胃炎とも呼ばれます。
とくに症状はありませんが、貧血になりやすい傾向があります。胃がん発症の原因にもなるため、定期的な胃カメラ検査が必要です。
ストレス・生活習慣
どのような生活習慣が慢性胃炎の原因になりますか?
-
次のような生活習慣が慢性胃炎をもたらします。
- 喫煙、飲酒、過食、早食いなどの胃に負担をかける生活習慣
- カフェインのとりすぎや消化の悪い物を食べるなど、胃酸過多になる生活習慣
- 過労、不眠、不安、心配ごとなどでストレス回避ホルモンが分泌され、胃酸過多になる生活習慣
- 痛み止めや副腎皮質ステロイド薬の服用
慢性胃炎の受診科目
気になる症状があれば何科を受診すれば良いですか?
-
胃痛や胃もたれなど、胃の症状の診断治療を行っているのは消化器内科、消化管内科、内視鏡内科、内科などです。内視鏡検査に特化したクリニックもあります。
慢性胃炎の検査
慢性胃炎ではどのような検査を行いますか?
-
胃内視鏡検査、胃X線検査、病理組織検査を行います。
胃内視鏡検査
胃内視鏡検査はどのような検査ですか?
-
胃カメラ検査とも呼ばれます。口や鼻から内視鏡を胃の内部まで通し、胃の粘膜の状態や色調などを観察します。
胃の粘膜の炎症が進行して、萎縮性胃炎や腸上皮化生を起こしていないかなどを確認し、的確な診断と治療につなげます。
胃X線検査
胃X線検査とはどのような検査ですか?
-
バリウムと発泡剤を飲み、X線を照射して胃の状態を観察する検査です。
胃の中全体に行き届くようにバリウムを付着させて、胃全体の形、大きさ、粘膜の状態などを詳しく観察します。
病理組織検査
病理組織検査とはどのような検査ですか?
-
胃内視鏡検査時に胃の組織を少しとって、ピロリ菌に感染しているかどうかを調べます。
がんなどの病気が疑われた際には、とった組織の病理組織検査を行います。
慢性胃炎の性差・年齢差
慢性胃炎に性差・年齢差はありますか?
-
慢性胃炎の原因として多いピロリ菌感染は、50代以上の方によくみられます。
自己免疫性胃炎には、年齢差はないと考えられています。性差は、ほかの自己免疫疾患と同じように男性よりも女性によくみられます。
慢性胃炎の治療法
慢性胃炎ではどのような治療を行いますか?
-
ピロリ菌の除菌治療、薬物療法、生活習慣の改善を行います。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌の除菌治療について教えてください。
-
ピロリ菌陽性の場合は除菌治療を行います。胃酸の分泌を抑える制酸薬を1種類と抗菌薬2種類の合計3つの薬を7日間続けて飲む治療です。約8週間たってから、ピロリ菌が除菌できたかを検査します。
1回目で除菌できなかった場合は、抗菌薬のうち1種類を変更して再度除菌治療を行います。
薬物療法
薬物療法はどのような治療を行いますか?
-
ピロリ菌以外が原因である場合には、症状の緩和を目的として、胃酸の分泌を抑える制酸薬、胃の粘膜を保護する胃粘膜保護薬、胃の働きを整える薬、漢方薬などを用います。
生活習慣の改善
生活習慣の改善について教えてください。
-
食べ過ぎ・飲み過ぎや、コーヒー・香辛料などの刺激物、飲酒、肉・揚げ物類などの消化の悪いものの摂取を控えて、胃への負担を軽減します。喫煙している場合は、禁煙します。
編集部まとめ
慢性的に胃の粘膜に炎症が起こっている慢性胃炎のほとんどの原因はピロリ菌感染です。ピロリ菌は治療によって除菌できます。
慢性胃炎の状態が続き、胃の粘膜の萎縮や腸上皮化生がみられると胃がんに発展するリスクがあるため、胃の症状が続くようなら早めに医療機関を訪ねましょう。自己免疫性胃炎は胃がんになるリスクが高い慢性胃炎ですが、自覚症状が出ないため、定期的に検査を受けることも大切です。