性器にぶつぶつができる尖圭コンジローマ、治療薬「ベセルナクリーム」の効果・副作用を薬剤師が解説
国立感染症研究所によると、国内における性感染症の感染者数は年々増加傾向にあります。その中でも、過去10年で最多を記録した「尖圭コンジローマ」は、かゆみや痛みなどの自覚症状に乏しくがん化することもあるため、早期発見・早期治療が望まれる疾患の一つです。今回は、若年層の方々を中心に身近な性感染症となった尖圭コンジローマの病態と治療について、薬剤師の玉井さんに解説していただきました。
監修薬剤師:
玉井 大輔(薬剤師)
目次 -INDEX-
尖圭コンジローマとは? 原因や症状、感染経路を解説
編集部
尖圭コンジローマとはどのような病気ですか?
玉井さん
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の6型及び11型などが皮膚や粘膜におけるわずかな傷口から侵入することで感染する病気です。平均3ヶ月くらいの潜伏期間を経て発症し、病状によっては発症した部分からがん化することもあります。
編集部
尖圭コンジローマにはどのような症状がありますか?
玉井さん
原因ウイルスの主な感染部位となる外陰部、肛門、子宮頚部などに鶏のトサカや野菜のカリフラワーに似たような形をした赤色もしくは褐色状のイボが形成されるのが特徴で、かゆみや痛みなどの自覚症状はないことが多いと言われています。
編集部
尖圭コンジローマの原因となるウイルスはどのように感染するのですか?
玉井さん
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、主に性行為による皮膚や粘膜からの接触感染を経て感染します。ほかには、アトピー性皮膚炎などの皮膚のバリア機能に支障がある方も、原因ウイルスが容易に侵入しやすいことから感染するリスクが高くなります。
尖圭コンジローマ治療薬「ベセルナクリーム」の効果とは 正しい使い方を併せて解説
編集部
尖圭コンジローマの治療にはどういうものがありますか?
玉井さん
尖圭コンジローマでは、体内に侵入した原因となるウイルスを完全に除去する根治療法はありません。病状を改善し、再発を予防するための対症療法として、液体窒素による患部の除去を中心とした外科療法と、原因ウイルスの増殖を抑制する作用を持ったベセルナクリームに代表される薬物療法とに分けられます。
編集部
ベセルナクリームを塗る頻度はどのくらいでしょうか?
玉井さん
原因となるウイルスの増殖を抑える作用を持つ「ベセルナクリーム」は、副作用として重度の炎症反応が現れることがあります。そのため、連日の使用は避けて、月・水・金や火・木・土のように週に3回の隔日での塗布に留めると指定されています。
編集部
ベセルナクリームを使用するとどのくらいの期間で治りますか?
玉井さん
病状を完治させることが困難な尖圭コンジローマの治療薬として用いられているベセルナクリームは、重度の皮膚炎を始めとした副作用の発現に配慮して、原則として16週間までの使用期間が定められています。そのため、およそ4ヶ月の治療期間が一つの目安となります。
ベセルナクリーム使用時の注意点を薬剤師に聞く 副作用はある? かゆみがあるのは大丈夫?
編集部
ベセルナクリームの使用時の注意点はありますか?
玉井さん
ベセルナクリームは重度の皮膚炎を起こす可能性のある薬剤であるため、1日1回就寝前の塗布を週に3日、隔日で行うという用法を守りましょう。また、6時間から10時間ほど経過した時刻にあたる起床後には、石鹸を用いて水または温水で洗い流すことが必要となります。
編集部
ベゼルナクリームの副作用はありますか?
玉井さん
尖圭コンジローマの症状は鶏のトサカや野菜のカリフラワーに似た形のイボが形成されるのが特徴ですが、かゆみや痛みなどの自覚症状が起こることは少ないため、ベセルナクリームの使用後にそのような症状が強くなった場合は副作用の可能性も考えられます。
編集部
ベセルナクリームについてその他の注意点などはありますか?
玉井さん
ベセルナクリームは医師の処方箋を必要とする医療用医薬品であるため、市販薬として薬店などで購入することはできません。また、高温条件において安定性が保たれない理由から、入手後は凍結を避けた上で25℃以下の室内に保管する必要があります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
玉井さん
国立機関のデータが示しているように国内の性感染症は増加傾向にあります。新型コロナも5類に移行したことで海外渡航を含めた対人交流の機会も増え、性的接触による感染リスクについても配慮していく必要があります。
編集部まとめ
性感染症の中でも自覚症状に乏しい疾患については、無意識のうちに大切なパートナーに感染させてしまうことも考えられます。今回は、薬剤師(MPH)の玉井さんに尖圭コンジローマの病態と、治療薬「ベセルナクリーム」の主作用や副作用について解説していただきました。病気の治療に使用するお薬に関する疑問などがある場合は、ぜひ薬剤師に相談してみて下さい。