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【薬剤師が解説】高齢者におすすめの便秘薬は? 選択方法や副作用など注意点について

 公開日:2023/10/16
高齢者におすすめの便秘薬を薬剤師が解説 服用時の注意点を併せて解説

日常生活を送る上で「食事、睡眠、運動、排泄、認知」の5つの機能は、快適で健康的な生活の柱となる大切な要素です。その中でも、体内から毒素となる不要物や老廃物を排泄する機能は、ほかの4つの機能にも大きな影響を及ぼす重要な項目です。特に高齢者の場合は便秘症に悩むことが多く、薬の使用を検討している方やご家族も多いのではないでしょうか。そこで、高齢者の方におすすめの便秘薬について、薬剤師の玉井さんに解説していただきます。

玉井 大輔

監修薬剤師
玉井 大輔(薬剤師)

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地域における公衆衛生の拠点として、旅行や医療に関するコンサルタントを主業とした法人を設立し、運営。新卒入社した外資系製薬企業では、MR(メディカル・レプレゼンタティブ)として全社で営業成績が1位となり、特別報奨を授与。その後、調剤薬局(精神科)の管理薬剤師を経て、全国の調剤薬局、並びにドラッグストアーに勤務薬剤師及び派遣薬剤師として勤務しながら、MA(メディカル・アフェアーズ)に関連する職能の幅を広げるに至る。修士号(公衆衛生学)を取得した後は、課題形成、問題分析、対策立案のアプローチにより、開局1年未満の調剤薬局(神経内科・漢方内科)の売り上げを対前年で138%の進捗率にする。

「高齢者は便秘になりやすい」のはなぜ? 生活習慣や薬の副作用が原因で便秘になる?

「高齢者は便秘になりやすい」のはなぜ? 生活習慣や薬の副作用が原因で便秘になる?

編集部編集部

60代を過ぎると加齢によって便秘になりやすいと言われますが、本当ですか?

玉井 大輔さん玉井さん

はい、これは加齢が原因です。年齢を重ねるごとに身体の機能は老化し、栄養素の消化・吸収を担っている消化管も例外ではありません。ホルモンバランスが変化することで体の中も変化し、また生活習慣の変化によって胃腸の筋肉の働きが鈍くなります。また、便を柔らかくしてくれる消化管への水分の分泌量も減り、便を肛門へと運搬する蠕動運動(ぜんどううんどう)が弱まるため、便秘の症状が起こりやすくなるのです。

編集部編集部

高齢者に多いと言われている弛緩性便秘とはどういう状態ですか?

玉井 大輔さん玉井さん

便秘の種類は、消化管において便の通り道に障害のある「器質性便秘」と、便を運搬する行程に問題のある「機能性便秘」に大きく分けられます。弛緩性便秘は機能性便秘に分類され、老化によって便を肛門へと運搬する胃腸の筋肉の収縮力が低下することで便秘が起こる病態を指します。

編集部編集部

薬の副作用によって便秘になる薬剤性便秘とはどういうことですか?

玉井 大輔さん玉井さん

生活習慣病などに代表される複数の疾患を抱えている高齢者の方は、一般的に多くの薬剤を継続して服用しています。薬の種類によっては、消化管に対する副作用として便秘を起こすものもあり、その総称を「薬剤性便秘」と呼びます。例えば、風邪薬として市販されている鼻炎薬の抗ヒスタミン剤や咳止めのコデイン製剤などには、薬理作用によって消化管の運動を抑えて便秘を起こす副作用があります。

高齢者の便秘薬の選び方を薬剤師に聞く どのような種類がある?

高齢者の便秘薬の選び方を薬剤師に聞く どのような種類がある?

編集部編集部

では、まず「弛緩性便秘」に効く便秘薬はどれを選べば良いですか?

玉井 大輔さん玉井さん

高齢者に多く見られる弛緩性便秘には、加齢などによって衰えた大腸の蠕動運動を高めることで、便を肛門へと運搬する機能を改善するための薬が必要になってきます。便秘薬の種類には、「大腸の筋肉に働きかける刺激型」と「水分補給による軟便化を促す非刺激型」に大きく分けられていて、弛緩性便秘には刺激型の便秘薬が有効です。古くから民間薬としても使用されてきたセンナという植物から抽出されたセンノシドを含む製剤や、小児にも汎用されているピコスルファートナトリウム製剤などが刺激型の便秘薬として挙げられます。

編集部編集部

便が硬い場合に適した便秘薬はありますか?

玉井 大輔さん玉井さん

便が硬い場合は、加齢による消化管の蠕動機能の低下だけでなく、食事の減量とともに水分の摂取量が減ることが原因なこともあります。そのような場合は、水分補給によって軟便化を促す非刺激性の便秘薬が有効です。消化管の粘膜における浸透圧を利用することで管内の水分の分泌を促す酸化マグネシウムが、シンプルな構造を持つ安価なお薬として挙げられます。ただし、連用していると耐性が生じ、効果が減弱したり薬剤の量が多くなったりするので注意が必要です。

編集部編集部

高齢者の便秘解消法として良いものはありますか?

玉井 大輔さん玉井さん

加齢に伴うホルモンバランスの変化や、運動量の減少、食事量が少ないなどによって便秘は起こります。市販の便秘薬や健康食品などでセルフメディケーションを心掛けることも良いですが、やはり基本は日々の食事と運動習慣の改善です。便のカサを増すために食物繊維の多い野菜や豆類を中心とした食事を摂り、消化管の運動を促すために30分程度の歩行運動を週3日程度で無理なく続けましょう。

便秘薬を服用する際の注意点まとめ 飲み過ぎによる副作用は?

便秘薬を服用する際の注意点まとめ 飲み過ぎによる副作用は?

編集部編集部

便をやわらかくする酸化マグネシウムの副作用にはどういうものがありますか?

玉井 大輔さん玉井さん

非刺激型の便秘薬である酸化マグネシウムは、金属であるマグネシウムに酸素を反応させて合成しただけのシンプルな構造で構成されています。そのため、適量であればマグネシウムが消化管から体内へ吸収されるなどの副作用はほとんどありません。しかしながら、規定量よりも過剰に摂取することやマグネシウムの吸収を促す作用のあるお薬を併用することによって、高マグネシウム血症という重大な副作用が起こることがあります。

編集部編集部

高マグネシウム血症になるとどういう症状が起こりますか?

玉井 大輔さん玉井さん

高マグネシウム血症とは、体内の血液中に存在するマグネシウム濃度が基準値よりも過剰になる病態を指します。ミネラルとして内臓の筋肉に働きかけて身体の機能を保つ役割を持つマグネシウムは、過剰になりすぎると循環器系の血管や呼吸器系の気管支の筋肉を弛緩させ、低血圧や呼吸障害などを引き起こすことがあります。しかしながら、通常の用量を服用している限りでは極めてまれな副作用です。

編集部編集部

高齢者の便秘で治療が必要とされる目安は何日くらいの便秘が目安となりますか?

玉井 大輔さん玉井さん

排便回数には個人差があり、便秘の明確な定義は曖昧です。そのため、例えば3日に1回程度の排便頻度でも残便感などがなければ、それが個人の便秘でない状態の目安となります。日本消化器病学会がガイドラインで定めているように、便秘症は具体的な頻度ではなく、排便時における快適であると感じる分量が指標です。便の分量が少なく、不快な状態が3ヶ月以上続く場合は医療機関を受診しましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

玉井 大輔さん玉井さん

年齢を重ねると、便秘をはじめとした心身に起こるさまざまな影響を自覚するようになってきます。生活のリズムが乱れることで不安が募り、快適で健康な状態を維持することや向上させることに対するモチベーションが崩れてしまうこともあるかもしれません。ですが、正しい病気や治療に関する情報を受け取っていただき、生活における不安が解消されば幸いです。

編集部まとめ

日常生活の営みのなかで、加齢による生活習慣の影響の大きい便秘症の病状は個人差が多いため、病気としての対処法に迷う方々も多いかもしれません。今回は、薬剤師の玉井さんに高齢者における便秘症の病態や分類、それに応じた治療薬の薬理作用や副作用に基づいた特性、受診の基準などについて解説していただきました。ご紹介したお薬以外にも、新薬を含めたさまざまなメカニズムを持つ種類のものが流通しています。お悩みのある方はぜひ、薬剤師に相談してみて下さい。

この記事の監修薬剤師