【禁煙外来体験談】タバコの「依存性」「中毒性」は想像以上!? 禁煙最終外来に密着してみた 〜後編〜
当メディアを運営する株式会社GENOVAでは、「健康経営宣言」の一環として喫煙率低下のためのプロジェクトを実施することが決まり、「我こそは!」と志願した社員17名が「禁煙外来チーム」と「ascure卒煙プログラム(禁煙支援アプリ)チーム」に分かれ、禁煙を目指して2023年1月にプログラムをスタートさせました。
当メディア関係者の大木さん(25歳)は「加熱式タバコ」のスモーカーで、初診時は「ブリンクマン指数」が30(1日10本×3年間)と低値だったものの、「TDSニコチン依存度テスト」が6項目該当し、立派な「ニコチン依存症」と診断されていました。約半年間、通院とオンライン診療で禁煙外来を受診し、禁煙に挑戦した大木さんに密着し、最終外来での結果と実際の診療の流れをレポートします。
監修医師:
天野 方一(eHealth clinic(イーヘルスクリニック))
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を終了。腎臓病学や高血圧学の臨床や研究に従事し、腎臓専門医や抗加齢医学専門医などの資格を取得。大学病院の医師として勤務を行いながら、予防医学やアンチエイジングの重要性を実感。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、eHealth clinicを2022年4月に開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。
腎臓専門医・指導医、抗加齢医学専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。
被験者:
大木 悠貴(株式会社GENOVA 社員)
今回取材に協力していただいたのは、新宿三丁目駅すぐにあるクリニック。複数企業の嘱託産業医としても勤務中で、社員の健康相談や生活改善指導、企業のヘルスケアに関する講演を多数おこなっている天野先生に最終外来も担当していただきました。
■禁煙外来の流れ
・<初診>問診や呼気一酸化炭素濃度測定、ニコチンパッチの説明など
・ニコチンパッチを貼りながら8週間、その後はパッチなしで4週間過ごす
・その間にオンライン診療や電話での診療を3回受診し、禁煙状態が維持できているか確認
・<最終外来>問診、呼気一酸化炭素濃度を再度測定し禁煙を達成できているか確認
目次 -INDEX-
診療前インタビュー
編集部
禁煙を決意したきっかけについて、もう一度お伺いします。
大木さん
ずっと禁煙したい気持ちがあった中で、社内で禁煙プログラムが実施されると聞き、これを機に「禁煙しよう!」と決意しました。
編集部
ニコチンパッチを貼って過ごしている時はどのような感じでしたか? 何か変化はありましたか?
大木さん
「ニコチンパッチを貼っているから、吸いたい気持ちが全くなくなったかというと、そんなことはありませんでした。さらに、パッチを貼って2〜3日目には吐き気を感じました。しばらく我慢していましたが耐えられなくなったのでパッチを外すと、数時間で症状はなくなりました。
編集部
離脱症状は、最初の2~3日間が最も強く出るとのことでしたが、その間はどのような感じでしたか?
大木さん
初回の受診で先生から「パッチを貼った状態でタバコを吸うと、過剰摂取になり身体によくない」と聞いていましたので、怖くて吸えなかったです。吸おうとも思いませんでした。
編集部
禁煙プログラムへの参加期間を通して、最も辛いと感じたのはどんな時でしたか?
大木さん
食事の後や友人との飲み会の時などに、タバコがないと物足りない気がしてしまい、そこを我慢するのが一番辛かったです。
編集部
そのような場面では、どのように乗り切っていましたか?
大木さん
いいえ、乗り切ってないです。飲み会で友人から勧められ、「1本くらいなら」という考えで吸ってしまい、そこから禁煙をやめてしまいました。今日の最終外来のために、ここ数日だけ頑張って吸わないでいるのですが……
編集部
そうだったのですね。では、禁煙プログラムへの参加期間を通して、ご自身の中で「禁煙を達成できそう!」と感じた時はありましたか?
大木さん
気がついたら、以前よりも吸いたいと感じる回数が減っていると実感した時は、「禁煙できるかもしれない!?」と思いました。
編集部
禁煙プログラムは今日の最終外来で終了となりますが、今の気持ちを教えてください。
大木さん
会社全体で健康経営宣言を掲げ、社員の喫煙率を下げるための社内プログラムだったのに、禁煙を達成できず、申し訳ない気持ちがあります。
編集部
禁煙プログラムに参加して良かったことについて聞かせてください。
大木さん
禁煙に成功している人の話をじかに聞くことができたことです。禁煙のコツなどを共有する場で、自分と同じ「社内禁煙プログラム」に参加して禁煙を継続できているメンバーから話しを聞けたのは勉強になりました。次回禁煙に挑戦する時には、そのアドバイスを参考にできるというのがプラスになったと感じます。
編集部
これから禁煙に挑戦する人に向けてアドバイスをお願いします。
大木さん
自分は周りの人がタバコを吸っている中で、我慢ができず失敗してしまいました。一つの失敗例として、参考にしていただければと思います。
最終外来がスタート!
12:00 クリニック到着
予約した12時に到着。最初に受付を済ませます。
12:05 看護師との面談
受付けが終わると、ます看護師さんと面談を行い、禁煙を維持できているかなどの状態を確認してもらいます。
看護師さん
お久しぶりです。吸ってしまったのですね。
大木さん
はい。友人との飲み会で勧められて、つい吸ってしまいました。
看護師さん
大木さんは「友人」がキーワードですね。以前、禁煙に挑戦した時も友人にタバコをもらって吸ってしまったと言っていましたね。
大木さん
はい、その通りです。
看護師さん
では、「呼気一酸化炭素濃度測定検査」を行いましょう。ここ数日だけ、禁煙しているということでしたね?
大木さん
はい。一応、前回の検査の数値よりも下がっていないといけないと思いまして……
看護師さん
18ppmです。前回の結果は10ppmだったので、前回の数値よりも増えていますね。
大木さん
増えていますね……
看護師さん
前回の結果は「ライトスモーカー」だったのが、今回は「ミドルスモーカー」になっています。割と精度の高い検査で誤差などもあまりないので、こちらが正確な結果だと思います。
12:15 医師との面談
次に、医師との面談です。
天野先生
お久しぶりです。吸ってしまったのですね。ニコチンパッチを貼ると気分が悪くなってしまったのですか?
大木さん
はい。私にはニコチンパッチが合わなかったようです。
天野先生
ニコチンパッチが体に合わないという方はいらっしゃいますので大丈夫ですよ。今はメーカーが出荷を停止しているため入手できませんが、禁煙のお薬にはニコチンパッチ以外に飲み薬もあります。次に禁煙に挑戦する時は、入手が可能でしたら飲み薬を試していただくのが良いかもしれませんね。
大木さん
そうなのですね。禁煙外来を受診して、禁煙失敗という方もいるのでしょうか?
天野先生
最終外来にいらした時、禁煙できていないという方も2~3割ほどいらっしゃいますね。
大木さん
けっこう皆さん、禁煙できているのですね。
天野先生
ただ、途中で禁煙を諦めてしまい最終外来に来ないという方もいらっしゃいますので、そういった方も含めると、禁煙できなかった方の割合はさらに増えると思います。
編集部
1回失敗しても、また挑戦して成功する方もいるのでしょうか?
天野先生
いらっしゃいますよ。最終外来では禁煙達成できず、期間を延長して頑張った方もいらっしゃいますし、何年後かに再度挑戦して、「1回目の失敗があったから、その時の教訓を活かして成功できた」という方もいらっしゃいます。一度でも禁煙に挑戦した人は、例えその時は失敗したとしても、次で禁煙達成しやすいのです。大木さんも、また禁煙に挑戦したくなったら、いつでもお待ちしていますよ。
12:25 会計
説明後は受付で会計をして終了。今回の費用は、診療費が930円でした。(保険診療)
診療後インタビュー
編集部
最後の「禁煙外来」を終えた大木さんに、お話を伺いました。
お疲れ様でした。今日はどんなお気持ちで最終外来を受診されましたか?
大木さん
禁煙を頑張ると宣言しておきながら、裏切るような形になってしまった罪悪感があり、正直あまり来たくなかったです。
編集部
「呼気一酸化炭素濃度測定検査」の結果(10→18pm)について、どう思われましたか?
大木さん
検査直前の短い期間に禁煙していただけなので、当然の結果だと感じています。
編集部
禁煙外来はいかがでしたか? また、禁煙に取り組む中で感じたことなどありましたら教えてください。
大木さん
診察を受けやすい環境でしたし、初診の時から今後の治療に進め方について丁寧に説明してくださったので、その点は良かったと思います。ただ、処方されたニコチンパッチが体に合わず、体調を崩してしまったため、その後は薬にも頼ることなく、気合だけで我慢してしまっていました。その分、「なんで自分だけ吸えないのか」「薬も使えないのになんで我慢しているのか」というストレスを感じていました。
編集部
禁煙に挑戦して、生活に何か変化はありましたか?
大木さん
生活の変化でいうと、タバコがないと口寂しく、口の中に何か入っている事が多くなりました。勤務中はミンティアなどのタブレットや、ガムを食べることで気を紛らわせていました。また、食べる量が増えたので体重も増え、お腹も出てきた気がします。実は、今までで一番重い体重を更新しました。
編集部
タバコに対する考え方の変化はありましたか?
大木さん
今までも「タバコは依存性の高いもので、辞めるのが難しい」と、頭ではわかっていましたが、禁煙外来に行き、医療の力を借りても、これだけ辞めるのに苦労するものなのだと、改めて実感しました。やはり、タバコの「依存性」「中毒性」はすごいですね。
編集部
先生が「一度でも禁煙に挑戦した人は、例えその時は失敗したとしても、次で禁煙達成しやすい」とおっしゃっていました。それについてどう感じましたか?
大木さん
いつかまた挑戦したい気持ちはあります。ただ正直なところ、今の自分、今の生活では禁煙を達成できる自信はないです。
編集部
「〇〇だったら禁煙成功できていたかも…?」と思うことがあれば教えてください。
大木さん
治療法ではないのですが、タバコの金額がニュージーランドと同じくらい高くなれば、手を出すのに躊躇して購入を控えるようになるかもしれません。
(注:2023年現在、ニュージーランドではタバコ1箱(20本)が約25〜30NZドル。1NZドル=88円換算で1箱(20本)2,200〜2,640円。)
編集部
どのようなきっかけがあれば、禁煙に再挑戦してみたいと思いますか?
大木さん
またこのような社内禁煙プログラムがあれば、再挑戦したいと思います。今回失敗した経験が生きる挑戦にしたいです。
編集部
ありがとうございました。
編集部まとめ
今回の大木さんの禁煙プログラムへの挑戦は、残念ながら「失敗」という結果で終了しました。初診に同行取材した時は禁煙への決意も固く、禁煙成功への抱負も聞いていただけに、改めてタバコの「依存性」「中毒性」の怖さを実感するかたちとなりました。失敗につながった原因やプログラムに参加したことで得た気づきなどをインタビュー形式でまとめていますので、これから禁煙に挑戦する方はぜひ参考にしてください!
株式会社GENOVAは、今後も社員の健康増進のためのプログラムを実施していく予定です。禁煙プログラムが再度実施されたら、また再チャレンジして欲しいですね!