日本人の死因第4位「脳卒中」ってどんな病気? 医師が原因や予防法を解説
「脳卒中」は日本人の死因第4位です。聞いたことがある疾患だと思いますが、「脳梗塞」や「脳出血」とは違うのでしょうか。今回は、なんとなく難しい専門用語が多そうな「脳」の病気について、「上田クリニック」の上田先生に解説していただきました。
監修医師:
上田 啓太(上田クリニック)
目次 -INDEX-
「脳卒中」は病名ではない!? 正式な病名とその種類、原因を医師が解説
編集部
「脳卒中」とは、なんでしょうか?
上田先生
脳卒中は病気の名前ではなく、「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」など、脳の血管が詰まったり、破れたりした状態の総称です。詰まったり、破れたりした血管の太さや場所によって異なる症状が出ます。医学用語としては、「脳血管障害」と呼ばれています。
編集部
それぞれの病気について、もう少し教えてください。
上田先生
脳梗塞は、脳の血管が狭くなったり、詰まったりして血液が流れなくなり、それ以降の脳が虚血になることによって脳細胞が死滅し、機能障害をきたす疾患です。いわゆる血液がドロドロな人や、血液を全身に送り届けるポンプとなる心臓の機能に問題のある人などに起こりやすいと言われています。
編集部
脳出血についても教えてください。
上田先生
脳出血は脳の中で血管が破れて、脳の組織の中に出血してしまった状態で、高血圧の人にとても多くみられます。脳出血もやはり、その先の脳に血液が送られなくなるために、様々な機能障害を引き起こします。
編集部
では、くも膜下出血についても教えてください。
上田先生
くも膜下出血は、脳出血と同じく、脳の血管が破れた状態ですが、脳の隙間を通る太い血管が破れたことで脳の組織の中ではなく、脳を覆っている「くも膜」と脳の間に出血してしまう疾患です。脳の動脈に「脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)」という風船状のコブが破裂するというのが最も多い原因です。
脳卒中は日本人の死因第4位! 死亡者数は減っているが発症者は増えている!?
編集部
脳卒中は日本人の死因として、上位なのですか?
上田先生
脳卒中はかつて、日本人の死因の1位を占めていました。しかし、血圧管理などの基礎疾患治療、MRI検査やCT検査などによる早期発見、血管内カテーテル治療などの外科的治療、内服薬の適切な使用による治療の発展のおかげで、年々、死亡者数は減少傾向にあります。現在は、日本人の死因の第4位となっています。
編集部
減ってきているのですね。
上田先生
そうですね。ただし、減少しているのはあくまでも「死亡者数」であり、脳卒中の発症が減っているわけではありません。例えば、脳梗塞の発症に関しては、食生活の変化や高齢化社会に伴い、現在も横ばいからやや上昇傾向にあります。
編集部
なるほど。脳卒中を発症する人は減っていないのですね。
上田先生
はい。死亡者は少なくなったのですが、その分、脳梗塞後遺症を抱える人が増えています。要介護者についての内閣府の調査では、介護が必要になった主な原因として、脳血管障害(脳卒中)が17.2%で最も多いという結果が出ています。とくに男性での割合が多く、26.2%です。介護を受けている男性の4人に1人が、脳卒中が原因ということになります。さらに、後遺症の内容も「身体のどちらか半分が動かない」「言葉がわからない」「食事が食べられない」などの重篤なケースが多く、介護者・要介護者双方の負担となっています。
脳卒中は予防できる!? 脳卒中の原因から見る予防法を医師が徹底解説!
編集部
脳卒中にならないためには、どうしたらいいのですか?
上田先生
脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の発症原因を意識して、コントロールしていくことが脳卒中の予防につながります。
編集部
具体的には「高血圧」「血液ドロドロ」「心疾患」などですか?
上田先生
そうですね。まずは、ご自身の血圧や血中コレステロール値などを知ることが大切です。また、「糖尿病」や「心疾患」も脳卒中と関連しているので、いわゆる「糖尿病予備軍」と言われたことがある人や、心疾患や慢性疾患がある人は、とくにご自身の健康状態に意識を向けてください。会社や自治体の健康診断を活用し、結果で心配な数値が出た場合は、きちんと対処するように心がけましょう。
編集部
ほかには何かありますか?
上田先生
基本的なことですが、アルコール・タバコなどの嗜好品や暴飲暴食は控えましょう。また、適度な運動やストレスをためないこと、十分な睡眠を取ることなども脳卒中の予防になります。
編集部
くも膜下出血の原因である脳動脈瘤についてはどうですか?
上田先生
脳動脈瘤は発症するメカニズムがわかっていないことも多く、発症していても症状が全くない場合がとても多いのです。しかし、脳動脈瘤はほかの疾患と違い、発見時に手遅れということはありません。脳動脈瘤が破裂していなければ、完治が可能だからです。30歳を過ぎたら、定期的に「脳ドック」を受けて、気になる所見がないか、専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。とくに40代以降の人、脳卒中を罹患したご家族がいる人、糖尿病や心疾患のある人は、ぜひ一度、脳ドックをしている医療機関に相談してみてください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
上田先生
近年、脳卒中の救命率は上がっていますが、重篤な後遺症を抱える人が非常に多い疾患です。しかし、自分の状態を知って、適切に対応していくことである程度防ぐことができる疾患でもあります。「適度な運動」や「アルコールを控えて、喫煙をしているなら禁煙をする」などを頑張っても、すぐには結果が出ないかもしれませんが、定期的に検査を受けていると、少しずつ変わっていくのがわかるはずです。「健康診断で気になる数値が出てしまった」という中高年の人は、とくに意識してみてください。
編集部まとめ
今回は脳卒中の具体的な病名やそのメカニズム、原因などについて解説していただきました。「脳で血管が破れる」「脳細胞が死滅する」などと聞くと恐ろしいですが、自分の状態を把握して適切に対処することで、ある程度は予防できるとのことでした。健康診断などで自分の状態を知ること、そして脳ドックを定期的に受けることで、脳卒中のリスクを少しでも回避していきましょう。
医院情報
所在地 | 〒221-0842 神奈川県横浜市神奈川区泉町6-1 中央ビル黒川2階 |
アクセス | 東急東横線「反町駅」 徒歩6分 |
診療科目 | 脳神経外科、内科 |