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「糖尿病の運動療法で重要なのはトレーニングより日常的な生活習慣の改善」そのワケを理学療法士が解説

 公開日:2023/06/22
「糖尿病の運動療法で重要なのはトレーニングより日常的な生活習慣の改善」そのワケを理学療法士が解説

糖尿病の重要な治療の1つである「運動療法」。しかし、運動に加えて生活習慣の改善も必要かもしれません。日常の生活習慣が糖尿病の原因として隠れている可能性があるそうです。一体、どのような生活習慣が影響しており、どのように改善するといいのでしょうか。今回は、糖尿病患者の日常の生活習慣について「理学療法士」の相澤さんに詳しくお伺いしました。

相澤 郁也

監修理学療法士
相澤 郁也(理学療法士)

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2015年、国家公務員共済組合連合会吉島病院に就職し臨床に従事。2020年、千葉の三咲内科クリニックに招聘。現在は糖尿病患者の運動指導をおこない、糖尿病の発症・重症化予防に貢献。糖尿病に関する多くの研究業績をもつ。2022年、広島大学大学院医歯薬保健学研究科保健学専攻博士課程前期修了。日本糖尿病療養指導士、代謝認定理学療法士、日本糖尿病理学療法学会広報委員会委員、全国臨床糖尿病医会関東・北日本コメディカルの会世話人、千葉県糖尿病対策推進会議世話人。

糖尿病と生活習慣の関係

糖尿病と生活習慣の関係

編集部編集部

糖尿病と生活習慣の関係について教えてください。

相澤 郁也さん相澤さん

生活習慣が発症や進行の要因の1つである「2型糖尿病」では、食べ過ぎ、栄養の偏り(動物性脂肪の摂取過多)、運動不足、肥満、睡眠不足、ストレスなどの生活習慣が関係していると言われています。

編集部編集部

糖尿病の人において、生活習慣はどのような指標に影響を与えますか?

相澤 郁也さん相澤さん

生活習慣は、「血糖(血糖値・HbA1c)」「血圧」「脂質代謝(LDL-C・HDL-C・TGなど)」「体重」に影響を与えます。これらの指標は全て糖尿病による合併症の予防や進行予防のために重要な指標です。その中でも糖尿病の人でとくに大事な指標として、血糖値とHbA1cがあります。血糖値は採血時の状態を表し、HbA1cは採血時から過去1〜2カ月間の平均血糖値を反映して変動します。

編集部編集部

運動療法と生活習慣の改善、どちらが糖尿病にとって有効だとされていますか?

相澤 郁也さん相澤さん

結論としては、どちらも有効かつ、とても重要です。しかし、生活習慣が悪いまま運動療法を実施しても体重に対する効果は限定的なため、まずは生活習慣を改善することが重要であると考えられます。

具体的な生活習慣の改善策を理学療法士が解説

具体的な生活習慣の改善策を理学療法士が解説

編集部編集部

日常的な生活習慣の改善としては、どのようなことから始めるといいですか?

相澤 郁也さん相澤さん

血糖、血圧、脂質代謝の良好なコントロール状態」「適正体重の維持」「禁煙の遵守」が、糖尿病による合併症の発症と進行予防のために重要とされています。そのため、まずは血糖や血圧、体重といった自宅でも測定可能な指標の“継続的”な測定をおすすめします(血糖は自己血糖測定を実施している人の場合)。継続的に測定することで、生活習慣の改善具合もわかりますし、日々のモチベーションにもつながります。また、生活習慣の改善方法の例として、運動不足解消のためのウォーキングや散歩があります。

編集部編集部

日常的な生活習慣の改善において、歩数や消費カロリーなどの目安はありますか?

相澤 郁也さん相澤さん

消費カロリーは個人によって異なりますし、計算が必要です。そのため、「1日の歩数」がわかりやすい目安になると思います。歩数の目安としては、8000歩(そのうち、速歩きの時間が20分)とされています。しかし、普段から2000〜3000歩しか歩いていない人が、いきなり「8000歩を目指して頑張る」ということは大変だと思います。そこで、まずは今より10分でもいいので、より長く歩くのを目標にすることをおすすめします。患者さんの中には「買い物のときにはできるだけ歩いていくようにする」といったように、生活の中で活動量を少しずつ増やしていくところから始める人もいらっしゃいますよ。

編集部編集部

そのほか、睡眠やストレスなどについて意識すべき点は何かありますか?

相澤 郁也さん相澤さん

まずは自分の生活を振り返ることが重要です。可能な範囲で自分の生活時間と行動内容を記録し、自分の生活を振り返ることで、夜更かしや仕事のストレス、飲酒量など、睡眠不足やストレスの原因を把握することができます。原因を把握できたら、改善のために可能なことを少しずつ実施していきましょう。運動は睡眠やストレスの改善にも役立ちますが、場合によっては医療機関を受診して適切な治療を受けることも大事です。

自分で血圧や体重を測定する際の注意点

自分で血圧や体重を測定する際の注意点

編集部編集部

日常的な生活習慣の改善に取り組むにあたって、気をつけた方がいいことはありますか?

相澤 郁也さん相澤さん

生活習慣の改善に取り組むにあたって注意したいのが、「測定方法」です。血糖や血圧、体重といった指標は1日の中でも大きく変わる指標です。そのため、生活習慣は改善されていても測定の方法次第では、測定値が正確ではない場合もあります。それを知らずに測定をして悪い結果が出たときに、「せっかく頑張ったのに、意味がないんじゃないか……」と落ち込まないよう注意が必要です。

編集部編集部

血圧を測る際のポイントはありますか?

相澤 郁也さん相澤さん

血圧は起床時と就寝時に測定して、朝は起床後1時間以内に排尿を済ませ、座ってから1~2分後の食前に2回測定、夜は就寝前に座ってから1~2分後に2回測定することが勧められています。

編集部編集部

体重を測る際のポイントはありますか?

相澤 郁也さん相澤さん

体重も体の中のもの(食事や便など)に左右される指標のため、「起床してトイレに行き、食事をする前」や「布団に入る前」など、測定のタイミングを決めておきましょう。また、血糖値は食事・服薬・運動によって左右されるため、結果を比較するときには比較的近い条件の結果で比較してください。例えば、昼食後2時間後の結果を比べたい場合には、数日前の昼食後2時間で同じような食事のメニューのときと比べましょう。

編集部編集部

運動療法と同時に生活習慣改善に取り組む際、注意すべきことはありますか?

相澤 郁也さん相澤さん

運動療法と生活習慣の改善は、どちらも継続することが最も重要です。そのため、頑張りすぎないことも大切だと考えます。頑張りすぎて息切れしてしまわないよう、どちらも少しずつ自分のできることから実践していくのがいいでしょう。

編集部編集部

医療従事者との連携は、どのようにおこなうといいのでしょうか?

相澤 郁也さん相澤さん

自宅での測定結果(血糖・血圧・体重など)を日頃から記録しておいて、診察などの際に医療従事者に見せるようにすると、ご自身に合わせた治療を受けられます。記録の方法はご自身の続けやすい方法で問題ありませんが、例として日本糖尿病協会が発行している「自己管理ノート」というものがあります。これは血糖値に加えて、血圧、体重、歩数が記録できるようになっているので、記録や医療従事者と連携する際に便利です。自己管理ノートは医療機関で入手可能なので、かかりつけの医療機関に問合わせて、ぜひ活用してください。

編集部まとめ

糖尿病は食べ過ぎや栄養の偏り、運動不足、睡眠不足などの生活習慣が関係しているとのことでした。生活習慣は血糖、血圧、脂質代謝、体重に影響し、血糖値とHbA1cは糖尿病の指標の中でもとくに重要です。運動をおこなうだけでなく、血糖や血圧、体重の継続的な測定、ウォーキングや散歩などの運動の継続による生活習慣の改善も気をつけたいですね。ご自身の生活を振り返り、改善方法を検討して適度な頑張り方にも注意してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修理学療法士