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隠れ糖尿病に注意! 医師が食後の眠気を招く「血糖値スパイク」の危険性と予防法を解説

 公開日:2023/08/08
隠れ糖尿病に注意!医師が食後の眠気を招く「血糖値スパイク」の危険性と予防法を解説

近年、耳にする機会が増えた「血糖値スパイク」という言葉。糖尿病の予備群ともされており、糖尿病ではない健康な人でも、血糖値スパイクが多くみられることが研究で明らかになっています。一体、血糖値スパイクとはどのような状態なのでしょうか。今回は、血糖値スパイクが起こる仕組み、リスクや予防法などについて、「豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニック」の澤口達也先生に伺いました。

澤口 達也

監修医師
澤口 達也(豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニック)

プロフィールをもっと見る
日本大学医学部医学科卒業。その後、東京医科歯科大学初期臨床研修医、東京都健康長寿医療センターや横浜市立みなと赤十字病院に勤務、獨協医科大学心臓・血管内科 / 循環器内科助教を務める。2023年、東京都江東区に「豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニック」を開院。医学博士。日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内科学会認定内科医、日本医師会認定健康スポーツ医。日本内科学会、日本糖尿病学会、日本糖尿病協会、日本内分泌学会、日本甲状腺学会、日本アレルギー学会、日本ステロイドホルモン学会の各会員。

食後の急激な眠気を引き起こす血糖値スパイク(食後高血糖)とは? 血糖値の急上昇を招く仕組みや症状を医師が解説

食後の急激な眠気を引き起こす血糖値スパイク(食後高血糖)とは? 血糖値の急上昇を招く仕組みや症状を医師が解説

編集部編集部

血糖値スパイクとはなんでしょうか?

澤口 達也先生澤口先生

簡単に言えば、「食後、血糖値が急上昇し、急降下する状態」のことです。健康的な人の場合、血糖値は緩やかに上昇します。しかし、血糖値スパイクの状態になると急激に血糖値が上昇した後、急降下するというように、変化が激しいのが特徴です。食後高血糖」とも呼ばれています。

編集部編集部

なぜ、急上昇・急降下するのですか?

澤口 達也先生澤口先生

通常、食事で糖質を摂取すると、体内では「インスリン」というホルモンが膵臓から分泌されます。インスリンは糖の代謝を調節し、血糖値を下げる働きがあるため、正常にインスリンが分泌されていれば、血糖値が急激に上昇したり急降下したりすることはありません。しかし、なんらかの原因によりインスリンが速やかに分泌されなかったり、インスリンの働きが悪かったりすると、血糖値が急上昇・急降下してしまうのです。なお、体内において血糖値を上げるホルモンは複数存在していますが、血糖値を下げるホルモンはインスリンしかありません。

編集部編集部

なぜ、インスリンの分泌が遅れたり、働きが悪くなったりするのですか?

澤口 達也先生澤口先生

日常的に糖質を過剰に摂取すると、頻繁にインスリンが分泌されることになりますから、やがて膵臓が疲弊してインスリンを分泌する力が衰えてしまいます。また、加齢によっても膵臓の働きが衰えます。

編集部編集部

主に、糖質の取りすぎや加齢が原因ですか?

澤口 達也先生澤口先生

そうですね。そのほかにも、肥満や運動不足によりインスリンの効きが悪くなることも、血糖値スパイクの原因になります。

編集部編集部

血糖値スパイクを起こすと、どのような症状が表れますか?

澤口 達也先生澤口先生

自覚症状として食後、急激に眠くなる場合は血糖値スパイクが疑われます。なぜなら、急激に血糖値が下がると、低血糖症状として眠気やだるさが引き起こされるからです。そのほか、冷や汗、動悸、手の震えなども典型的な低血糖症状です。また、低血糖になると頭痛が起きたり、ひどい場合には失神したり痙攣(けいれん)したりすることもあります。

知っておきたい血糖値スパイクのリスク 食後の重い眠気を引き起こすだけでなく糖尿病・認知症・脳梗塞などの危険がある?

知っておきたい血糖値スパイクのリスク 食後の重い眠気を引き起こすだけでなく糖尿病・認知症・脳梗塞などの危険がある?

編集部編集部

血糖値スパイクのリスクについて教えてください。

澤口 達也先生澤口先生

血糖値スパイクになって血糖値が大きく変動すると、血管の壁が傷つきます。すると血管は弾力性を失って硬くなり、血管の壁は厚みを増し、動脈硬化の状態となります。そうなると将来的に「心筋梗塞」や「脳梗塞」などの重篤な疾患を招くリスクが極めて高くなってしまいます。細かい血管や神経がダメージを受けると「糖尿病神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」といった合併症を発症しやすくなります。

編集部編集部

ほかにもありますか?

澤口 達也先生澤口先生

血糖値スパイクと認知症の間には、相関性があることがわかっています。低血糖の回数が多いと認知症になりやすいということは昔から言われており、血糖値スパイクによって低血糖の頻度が多くなると、認知症のリスクが高くなることが研究により明らかになっています。

編集部編集部

眠気や頭痛だけでなく、重大な疾患を招くリスクがあるのですね。

澤口 達也先生澤口先生

はい。糖尿病でなくとも血糖値スパイクの状態に陥っている人もいらっしゃいますが、その場合は境界型糖尿病や耐糖能異常と呼ばれています。糖尿病の合併症として網膜(眼)の障害や腎機能障害、手足の痺れなどの神経障害が起きることがありますが、糖尿病の前段階の血糖値スパイクでも手足のしびれなどが起きる場合もあります。

編集部編集部

気づかないうちに、様々なリスクがありますね。

澤口 達也先生澤口先生

血糖値スパイクは自覚症状がないことも多く、なかなか気づく機会がないのが怖いところです。健康診断などで血糖値を測定しても異常が見つかりません。なぜなら、健診においては血糖値は空腹時に測定するからです。血糖値スパイクは、食後に血糖値が急上昇しますが、空腹時の血糖値は正常であるため見過ごされやすいのです。

編集部編集部

血糖値スパイクとは恐ろしい状態なのですね。

澤口 達也先生澤口先生

そのとおりです。現在、日本では1400万人以上に血糖値スパイクが起きているという報告や、がんとの関連性を指摘する報告などもあります。こうしたリスクを軽減するためにも、まずは自分に血糖値スパイクが起きていないかを調べることが重要です。

血糖値スパイクの正しい予防法 血糖値の急上昇防止に食べる順番や低GI食品など食事内容を工夫しよう

血糖値スパイクの正しい予防法 血糖値の急上昇防止に食べる順番や低GI食品など食事内容を工夫しよう

編集部編集部

血糖値スパイクを予防するには、どうしたらいいのでしょうか?

澤口 達也先生澤口先生

まずは、日頃の食事を見直しましょう。最初に野菜など食物繊維を摂取して、最後に糖質を摂るといったように、食べる順番を調整すると血糖値が急上昇するのを抑制できます。また、糖質過剰の食事をやめて、野菜やタンパク質などをバランス良く摂ることも予防になります。加えて、血糖値の上がりやすさを示す指標に「GI(グリセミック・インデックス)値」というものがありますが、糖質を摂取する際も、GI値が低い食品を積極的に食べることで血糖値スパイクの予防になるでしょう。

編集部編集部

ほかにも、食事面で注意すべき点があれば教えてください。

澤口 達也先生澤口先生

食事の間隔を空けすぎないことも大切です。食事の間隔が空くと糖分の吸収が良くなり、血糖値が上がりやすくなってしまいます。また、とくに気をつけたいのは夕食です。仕事などの都合で日常的に夕飯が遅くなる人も多いと思いますが、夜遅くに食事をすると「食事誘発性熱産生」が低くなり、基礎代謝が落ちて血糖値が上がりやすくなってしまいます。もし夕食が遅くなる場合には、夕方辺りに適度に補食をする、その分、夕食の量を減らすなどの工夫が必要です。

編集部編集部

日常生活の中でできる血糖値対策はありますか?

澤口 達也先生澤口先生

運動も大事です。「食後1~2時間後に運動をおこなうと、血糖値が上昇するのを緩やかにすることができる」と研究で示されています。その際はウォーキングなど、ゆったりしたペースで有酸素運動をおこなうといいでしょう。

編集部編集部

血糖値スパイクは病院でも治療することができるのですか?

澤口 達也先生澤口先生

はい。まずは食後の血糖値を測定して、血糖値スパイクかどうかを確認します。また、必要に応じてブドウ糖負荷試験をおこないます。その後、まずは食事内容や運動習慣を見直していきます。それでもあまり効果がみられない場合には薬物療法を用いて血糖値の急激な上昇を抑え、糖尿病へ進行するのを抑制します。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

澤口 達也先生澤口先生

血糖値スパイクは健診で気づかれないことも多く、自分で症状から疑わないと発見が難しいという特性があります。今回ご紹介した内容を頭に入れていただき、もし食後に「眠気が強い」「だるい」などの低血糖症状がみられる場合には、早めに専門医に相談しましょう。その際、糖尿病の専門医に相談すると、ブドウ糖負荷試験などの糖尿病の鑑別に必要な検査も速やかに受けることができます。ぜひ、専門医の診察を受け、必要があれば早めに治療を開始しましょう。

編集部まとめ

近年、血糖値スパイクという言葉を耳にする機会が増えました。糖尿病までは進行していなくても、認知症やがんなどの様々な疾患の原因になることもあり、早期発見早期治療は必須です。近隣に糖尿病専門医がいない場合には、かかりつけの医師に紹介してもらってもいいでしょう。

医院情報

豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニック

豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニック
所在地 〒135-0061 東京都江東区豊洲5-2-12 豊洲BAYSIDEクリニックビル5F
アクセス ゆりかもめ「豊洲駅」 徒歩1分
東京メトロ有楽町線「豊洲駅」 徒歩2分
診療科目 内科、糖尿病内科、内分泌内科、皮膚科、形成外科、美容外科、美容皮膚科

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