【パパママ必見】子どもの分離不安ってどんなもの? 児童精神科医に聞く
子どもが親から離れるのを嫌がるのは病気なのでしょうか? 小さい頃にはどの子どもにも見られるようにも感じますが、学校が始まってからも離れられなくなる子どももいます。子どもの「分離不安」について児童精神科医の岡琢哉先生にお話しを伺いました。
監修医師:
岡 琢哉(株式会社カケミチプロジェクト)
分離不安とは 何歳ぐらいまで起こるもの?
編集部
はじめに、分離不安とはどのようなものか教えてください。
岡先生
分離不安とは、子どもがお父さんやお母さんといった主な養育者から離れることに対して抱く不安です。
編集部
分離不安は病気なのでしょうか?
岡先生
分離不安自体は病的なものではなく、1歳未満の乳児では正常な発達の過程として現れるものです。生まれたばかりの乳児は外の世界を正確には認識できておらず、分離不安も生じません。このような不安が生じるのは少しずつ外界を認識し、他者(乳児の場合は主な養育者)という異なる存在を認識できるようになった証拠でもあります。
編集部
何歳ぐらいまでであれば、正常な範囲なのでしょうか?
岡先生
正常な分離不安のピークは9〜18ヶ月あたりで、2歳半までに消失し、就学前には両親から離れても安心して過ごせるようになります。また、子どもが初めて登校するときに一過性の分離不安がみられることは正常な反応です。登校して、学校の中が安心できる空間であると認識し、そこにいる先生や子ども達が自分を脅かす存在ではないと認識できれば自然と両親から離れることができます。
分離不安症ってどんな病気?
編集部
分離不安症とはどんな病気でしょうか?
岡先生
分離不安症とは、両親や主な養育者となる家族から離れることができず、離れることを強く拒むようになってしまう病気です。正常な分離不安がおさまる年齢を越えても強い不安があり、社会生活上の困難が生じる場合に診断されることがあります。
編集部
具体的にはどのような症状が表れるのでしょうか?
岡先生
分離不安症では、主な養育者から離れる際に「お父さんが事故に遭ってしまうのではないか」「お母さんが悪い人に殺されてしまうのではないか」「離れている間に自分がさらわれてしまうのではないか」といった周囲からすると現実ではなかなか起こり得ないような不安を抱いてしまいます。このような強い不安を解消するために分離することを強く拒み、時にはかんしゃくを起こしてしまうこともあります。
編集部
症状が出るのは家から離れる時だけでしょうか?
岡先生
外出時以外でも起こる場合があります。ひどい場合には家の中にいても家族が出かけるのを嫌がったり、「トイレのドアを開けたままにして欲しい」と言って周囲の行動を制限してしまったりすることもあります。
分離不安の原因は? 親の育て方の影響はある?
編集部
分離不安症の原因は何なのでしょうか?
岡先生
生活上の強いストレス、例えば親戚や友人、ペットが亡くなってしまうことや転居、転校といった出来事がきっかけで分離不安症を誘発することもあります。また、遺伝的に不安に対する脆弱性をもつ人もいるといわれています。
編集部
子どもが分離不安症になってしまった場合、どのように対応したら良いのでしょうか?
岡先生
強い不安が背景にあるため、「離れても安心できる」という体験ができるよう、家族以外の人のサポートも受けて、子どもが安心して過ごせる環境を増やすことが重要です。
編集部
分離不安症になってしまうのは親の育て方の影響もあるのでしょうか?
岡先生
親の育て方は一切関係ありません。むしろ親や家族のことを「安心できる対象」と感じているからこそ、分離不安が生じます。以前、「親の愛情不足が原因だからたくさん一緒にいてあげてください」という助言があったせいで、本来行うべき「親から離れても安心できる環境を作る」のと真逆の対応が行われているケースに出会ったことがあります。先程答えたような「避けられない強いストレス」や「元来持っている性質」によって生じるものであり、予防することよりも「発症した場合のケア」の方が重要です。
編集部まとめ
分離不安は正常な反応としても見られる一方で、分離不安症の症状として表れることもあります。親や子どもの生活に支障が出るような強い症状がある場合や長い期間続く場合には家庭の中だけで悩むのではなく、専門家に相談して一緒に乗り越えるための方法を考えていくことが重要です。決して自分たちの育て方の問題のせいだと思わないようにしましょう。