ストレス緩和に漢方という選択肢! 精神を安定させるおすすめの漢方を薬剤師が紹介
ストレス社会と言われる現代において、日々、様々なストレスの症状に悩まされていることは少なくないと思います。症状の改善を願い、ドラッグストアなどに足を運ぶ人も多くいらっしゃるのではないでしょうか。今回はたくさんの種類がある漢方薬について薬剤師の栗原さんに解説していただきました。
監修薬剤師:
栗原 徹(薬剤師)
目次 -INDEX-
薬剤師おすすめのストレスに効く漢方を紹介 種別の特徴を併せて解説
編集部
漢方薬でストレスに対して効果が期待できる薬剤はどれくらいありますか?
栗原さん
現在、漢方薬は医療用漢方製剤だけでも約130種類あります。その中から、精神症状に関連する効果が期待できるものが非常に多くあるため、選択することが難しいのが現状です。
編集部
それぞれどのような使い分けがされるのでしょうか?
栗原さん
・「抑肝散(ヨクカンサン)」では、イライラによる自律神経の乱れと不眠のある虚弱な体質な方
・「柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)」では、抑肝散と異なり、比較的体力があり、苛立ち・不眠のある方
・「半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)」では、不安や気分がふさいで、のどに異物感があり、眠れない方
・「桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)」では、ストレスによる、神経衰弱・不眠のある方
など、様々な背景から選択されてきます。
編集部
漢方における一般用医薬品と処方箋医薬品の違いについて教えてください。
栗原さん
漢方薬にはドラッグストアでも購入できる市販薬があります。クリニックなどで処方される医薬品との違いは2点あります。1点目は「成分量」です。ドラッグストアで購入できる漢方薬は、安全に使っていただけるように、成分量が少ないものがほとんどです。2点目は「価格」です。医療用漢方は保険適用されますが、市販薬は全額自己負担となります。
ストレスが原因で起こる肩こりや不眠などにも漢方が効果的! 症状別におすすめの漢方を紹介
編集部
そもそもストレスによって身に起こる症状には、どのようなものがありますか?
栗原さん
ストレスによって、引き起こされるBPSD(行動・心理症状)は多岐に渡ります。「だるさ、やる気がでない」といった全身症状は想像しやすいかと思いますが、その他肩こりなどの筋肉系の症状、めまいなどの感覚症状、寝つきが悪いといった睡眠障害、心臓がどきどきする循環器系症状、吐き気などの消化器症状などがあります。
編集部
症状別での使い分けはありますか?
栗原さん
メンタルと共に不眠に効果が期待できる漢方薬には「加味逍遙散(カミショウヨウサン)」「抑肝散」「柴胡加竜骨牡蛎湯」「桂枝加竜骨牡蛎湯」などがあります。加味逍遥散は体力虚弱な婦人で、不安などの精神症状がある方に選択されます。また、肩こりに対しては「当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)」などがあります。「当帰芍薬散」は体力虚弱で冷え症・貧血傾向の方などに選択されます。ほかにも種類がありますので、医師・薬剤師に相談しながら選択してみてください。
編集部
継続服用していた方がいいのでしょうか?
栗原さん
漢方薬には即効性を期待することは難しいです。そのため、数か月服用して初めて効果が出てくることもあります。また、漢方薬は100%安全な薬剤ではありません。服用によって、ほてりや腹痛、不眠など、普段と異なる症状が出る場合があります。「なかなか改善しない」「服用による異常がある」場合は、医師・薬剤師・登録販売者に相談してください。
漢方薬と西洋薬、それぞれの効能を比較 自分の症状から薬を選ぼう
編集部
「漢方薬」と「西洋薬」は何が違うのでしょうか?
栗原さん
違いは2点あります。1つ目は、ターゲットの違いです。漢方薬は「病気を持つ人」の症状・体質を考慮して選択されます。一方、西洋薬は「症状・原因」に対して選択されます。2つ目は、含まれる物質の違いです。漢方薬は「天然物ベース」の生薬が複数種類含まれます。西洋薬は、基本1つの有効成分が含まれています。以上のことから、西洋薬のメリットは、原因がはっきりしている場合に効果が期待できます。デメリットは、症状が多い場合に多種服用しなければならない点ですね。薬剤によっては、特徴的な副作用に注意しなければなりません。
編集部
対して、漢方薬にはどのようなメリットがありますか?
栗原さん
漢方薬のメリットは、複数の生薬が含まれているため、多彩な症状に対応が可能となります。また、検査値など異常がない場合は、病状や体質を考慮し、医師・薬剤師に相談しながら選択できることです。
編集部
メリットについてよくわかりましたが、デメリットはどのようなものがありますか?
栗原さん
デメリットは、数値の改善や除菌効果など、目に見える結果が得られない点です。また、個人差の大きさもあります。効果が出てくるまでに数週間~数か月かかることがあります。また、粉であるため、苦みを伴い服用を嫌がるケースもあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
栗原さん
漢方薬は症状・体質に合わせて選択されます。適切な薬剤選択には、皆さんのことをよく知る必要があります。医師・薬剤師などに相談される際には、お困りの状態を詳細に相談してみてください。きっと良い選択をしてくださります。
編集部まとめ
ストレスとひとくくりにしても様々な種類の漢方薬があることがわかりました。漢方薬のメリットやデメリットについても把握しながら、服用しましょう。具体的に悩んでいる症状から、医師・薬剤師・登録販売者に相談しながら適切な薬剤を選択しましょう。