「シミ取りレーザー」の効果を医師が解説 効率的にシミを消す方法・失敗しないポイントは?
広告などで目にする「シミ取り治療」。気になるシミが取れるなら……と興味を持つ人も多いと思います。しかし、シミ取り治療には様々な方法があり、選択を間違えるとかえってシミが目立つこともあるそうです。そこで今回は「新橋汐留 小林クリニック」の小林先生に、シミ取り治療で気をつけるべきポイントを伺いました。
監修医師:
小林 正弘(新橋汐留 小林クリニック)
目次 -INDEX-
顔や体にシミができる・急に増えるのはなぜ? シミの原因を医師が解説
編集部
顔や体にシミが増えることがあります。なぜでしょうか?
小林先生
多くの場合、シミは紫外線への暴露が蓄積して生じます。そのため、高齢者に生じやすく、医学的に「老人性色素斑」と呼ばれています。ただし、非露出部分もシミができることがあるので、紫外線だけが原因というわけではありません。高齢者だけでなく、若い人でもシミができる可能性はあります。
編集部
紫外線に暴露することでシミができる仕組みを教えてください。
小林先生
皮膚の表皮と真皮の境目である基底層には、「メラノサイト」という細胞が存在します。紫外線が照射されるとメラノサイトはメラニンを産生して、皮膚を紫外線から防御しようとします。その結果、メラニンがたくさん作られて皮膚は一時的に黒くなります。これがいわゆる日焼けです。そして、メラノサイトへの紫外線の照射がますます蓄積すると、メラノサイトは通常よりもメラニンを多く産生するように変化してしまいます。これがシミなのです。
編集部
ほかには、どのような原因が考えられますか?
小林先生
肌の代謝が低下していることもシミが増える原因です。皮膚の細胞は一定の周期で生まれ変わるようにできていて、年齢が上がるにつれて周期が長くなっていきます。肌の代謝を「ターンオーバー」と言いますが、ターンオーバーの周期が一定であればメラニン色素はきちんと排出され、シミにはなりません。しかし、ターンオーバーの周期が遅れるとメラニン色素が沈着して、シミになってしまいます。
編集部
紫外線とターンオーバーがシミの大きな原因ということでしょうか?
小林先生
ほかにも、女性ホルモンのバランスが乱れたり、皮膚の保湿力が低下したりすると、シミができやすくなります。とくに女性ホルモンのバランスが乱れることで生じるシミを「肝斑」と言います。加えて、炎症が原因となってシミができることもあります。例えば、肌をお手入れするときにゴシゴシとこすると、一過性のシミが生じることもあります。
シミ取りのレーザー治療はどれくらい効果があるの? ピコレーザーなどシミ取りレーザーのメリット・デメリットを解説
編集部
シミを取る方法としてレーザー治療が有効と聞きました。どれくらい効果があるのでしょうか?
小林先生
シミ取りレーザーは、シミの部分にレーザーを照射することでシミを除去する治療法です。適切な治療をおこなえば、通常は1回でシミを除去することができます。クリームや飲み薬などでは改善が難しいシミも、レーザー治療で改善できる可能性があります。
編集部
なぜ、レーザーを照射することでシミを除去することができるのですか?
小林先生
シミの部分にレーザーを照射してメラニン色素を破壊することで、その周囲にあるメラノサイトも破壊してシミを除去します。また、「ケラチノサイト」という表皮を構成している細胞があります。健康的な肌ではケラチノサイトは、角質細胞へ変化し、垢となって一定の周期で剥がれ落ちます。ターンオーバーが正常に働かないと古い細胞が表皮にとどまり、シミの原因となります。レーザーはこのケラチノサイトにも働きかけ、ターンオーバーを正常化させることでシミを除去する効果があります。
編集部
レーザー治療といっても、色々な機器があると聞きました。どのような機器があるのですか?
小林先生
例えば、ピコ秒(1兆分の1秒)単位でレーザーを照射してシミを除去することができる「ピコレーザー」という新しいレーザーを使用した治療法があります。ピコレーザーは従来のレーザーと同様に、メラニン色素を熱により破壊する作用と、それに加えて衝撃波によりメラニン色素を微粒子サイズに細かく砕き、排出する作用があります。幅広くシミ治療に用いることができます。ただし、肝斑というタイプのシミには使用できません。肝斑にピコレーザーを強く照射すると、逆に濃くなってしまいます。肝斑の治療は、外用薬や内服薬による治療が基本で、ピコレーザーを弱い出力で繰り返し照射する「ピコトーニング」という治療を追加する場合があります。ピコトーニングと区別するため、従来の強いレーザー治療を「ピコスポット」と呼んでいます。
編集部
レーザー治療の後、ダウンタイムはありますか?
小林先生
シミがあった部分にかさぶたができるなど、1週間ほどのダウンタイムがあります。通常は保護用テープを貼ってカバーしますが、もしダウンタイムをなくしたいというのであれば、副作用やダウンタイムの少ないピコトーニングをおこないます。
編集部
ピコトーニングでもシミは消えるのですか?
小林先生
効果がないというわけではありませんが、ダウンタイムが少ない分、作用も少なくなります。実際は、5~10回くらい繰り返し照射をしてもシミが完全に消失するわけではなく、改善にとどまります。しかし、ダウンタイムのある治療はできない場合の選択肢としてはいいと思います。
編集部
色々な機器の特徴を知って、自分のシミに適したものを選ぶことが大切ですね。
小林先生
そうです。ピコトーニングはダウンタイムがほとんどなく、肌への負担もほとんどありません。一方、ピコレーザー(ピコスポット)は従来のレーザー機器に比べて短いものの、ダウンタイムがありますし、施術時に痛みを伴う場合もあります。このように、レーザー治療にはメリットとデメリットがあるため、シミに適した治療法を選択することが重要です。
気になる顔のシミをより効率的に取るためにはどうしたらいい? 失敗せずにシミを綺麗に取るポイントはある?
編集部
シミ取り治療で失敗したという話を耳にすることがあります。どのような失敗が考えられるのでしょうか?
小林先生
シミが以前より濃くなったり、再発したりすることがあります。色々な原因が考えられますが、そもそもレーザー治療の反応には個人差があり、「一度かさぶたになって剥がれたのにまたシミが戻ってしまう」という場合もあります。この戻りジミのことを「炎症性色素沈着」と言い、反応が強く出る人もいれば、ほとんど出ない人もいるというように、個人差がとても大きいのです。そのため、一度に全顔のシミ取りをするのではなく、段階を踏んでおこなうのがおすすめです。
編集部
具体的には、どのようにおこなうのですか?
小林先生
例えば当院の場合、まずは一番シミが濃い箇所をテストとして治療します。そこで治療後、色が濃く出てしまえば、「強いレーザーは向いていない」と判断して、弱い治療に切り替えます。反対に、色が濃く出ることがなければ、同じ強さでほかのシミについても治療を継続することができます。このように、段階を踏んでシミ治療をおこなうことが大切です。
編集部
レーザー治療後の色素沈着は消えるのですか?
小林先生
はい。通常は治療後1カ月後くらいが一番濃くて、3カ月くらいで消えていきます。なかには半年や1年くらいかかってようやく綺麗になることもありますが、多くの場合、時間が経てば改善します。ただし、消えないで残る場合もあります。濃いシミの治療であれば、色素沈着が残っても治療前より改善した状態です。
編集部
効率よくシミを取るためには、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか?
小林先生
シミごとに治療法が異なるため、様々なシミに適した施術メニューを用意しているクリニックを選ぶことが大切です。単に治療の機器を多くそろえているだけでなく、施術をする医師自身がメニューごとにメリットやデメリットを理解していることも重要です。
編集部
どういうことでしょうか?
小林先生
例えば、ピコトーニングはダウンタイムや副作用がほとんどないので、医師も患者さんも気軽に始めることができるのですが、シミを除去するという観点でいえば効果はピコスポットに劣ります。一人ひとりの肌状況や体質などを考慮しながら、それぞれのシミに適した治療を提案してくれるクリニックを選びましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
小林先生
シミ取り治療の効果や反応は非常に効果が大きく、反応が強く出た場合は一時的に皮膚の状態がひどくなる場合もあります。そのため、一度に全顔の治療をおこなうのではなく、「まずは最も濃いところからやって、反応を見る」といった段階を踏むことが大事です。また、シミの種類によって適した治療法が異なるため、様々な治療の選択肢を用意している医療機関を選ぶことをおすすめします。
編集部まとめ
インターネットの広告などで「全顔シミ取り放題」という文言を見ることがありますが、シミ取り治療には多くの場合ダウンタイムがあることを理解しておくことが大切です。後悔のないシミ取り治療をおこなうために、複数の医療機関でカウンセリングを受けるのも1つの方法だと思いました。
医院情報
所在地 | 〒105-0021 東京都港区東新橋2-5-6 ACN汐留ビルディング2F |
アクセス | 都営大江戸線「汐留駅」 徒歩4分 JR「新橋駅」 徒歩5分 |
診療科目 | 形成外科(あざ・シミのレーザー治療専門) |