【腎臓悪化】症状5選!尿の泡立ちや血尿が出たら危険性あり…?
慢性腎臓病は日本成人の約8人に1人いるといわれ、近年、糖尿病や高血圧に続いて新たな国民病として注目されています。今回は腎臓が疲れている症状について腎臓専門医・eHealth clinic(イーヘルスクリニック)の天野先生に徹底解説していただきました。
監修医師:
天野 方一(eHealth clinic)
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「eHealth clinic」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。 日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。
目次 -INDEX-
腎臓の機能を悪化させる危険因子
編集部
まず、腎臓の役割や機能について教えてください。
天野先生
腎臓の機能は、おしっこを作るだけではありません。大きく4つの機能があります。
① 体にいらない老廃物を外に出す
② 赤血球を作る
③ ビタミンDを作る
④ 血圧を調整する
など多種多様な機能があります。
編集部
腎臓が悪い人はどのくらいいるのですか?
天野先生
慢性腎臓病にかかっている人は日本に約1300万人、世界では10億人といわれています。慢性腎臓病が厄介なのは、腎臓の機能が100点満点中の10~20点まで下がらないと症状が出ないことです。そのため早期発見が重要になります。
編集部
腎臓の機能を悪化させる危険因子を教えてください。
天野先生
腎臓の機能を悪化させる危険因子を5つ紹介します。
① 食生活
② 加齢
③ 肥満や生活習慣病
④ 喫煙
⑤ 健康診断で尿検査の異常を放置すること
です。
編集部
どんな食生活が腎臓機能を悪化させるのですか?
天野先生
具体的には、塩分の過剰摂取です。赤身肉やベーコンなどの加工肉をたくさん食べると、腎臓の機能が悪くなってしまうことがわかっています。
編集部
二つ目の危険因子の加齢はいかがでしょうか?
天野先生
腎臓の機能を表す eGFRという指標があり、年齢が1歳上がるごとに2~3低下するといわれています。eGFRの低下が1年間あたり5を超えると 異常な腎臓の機能の低下が考えられています。
編集部
肥満や生活習慣病についても教えてください。
天野先生
肥満は高血圧や糖尿病のリスク因子であり、腎臓病のリスクであるとも考えられています。具体的にはBMIが25以下の人と比べてBMIが35や40の方は腎臓病になるリスクが2~3倍高くなることがわかっています。
編集部
喫煙も腎臓悪化の危険因子なのですね。
天野先生
タバコを吸ってしまうと血管が収縮してしまい腎臓に行く血流が減ってしまいます。1日20本以上吸っている人は吸っていない人に比べて、末期腎不全や透析になってしまうリスクが2〜3倍も高くなることがわかっています。
編集部
健康診断で尿検査の異常を放置することは、いかがでしょうか?
天野先生
腎臓の機能が低下する前に尿所見が異常になることが多くあり、血尿やタンパク尿が出てきます。こういった所見を放置してしまうと、気づいたら腎臓の機能が悪化してしまい取り返しのつかないことになります。健康診断で尿所見の異常がある場合一回は病院に受診することを心がけてください。
腎臓悪化のサイン
編集部
腎臓悪化の症状を教えてください。
天野先生
腎臓の機能が低下すると体に出てくる5つの症状を説明します。
① 尿の泡立ちや血尿
② 頻尿
③ むくみ
④ 息切れや胸の痛み
⑤ 高血圧
です。
編集部
尿の泡立ちや血尿について教えてください。
天野先生
腎臓が悪くなると、本来体にとって大切なタンパク質や赤血球が尿に漏れてしまいます。尿に赤血球やタンパク質が漏れてしまうことは腎臓が悪化している症状の一つとして考えられます。
編集部
頻尿について教えてください。
天野先生
頻尿も腎臓の機能が低下したときの症状です。腎臓は作られた尿の約99%を再吸収しますが、腎臓の機能が悪化すると再吸収する能力が低下してしまい、尿がだだ漏れになってしまいます。特に夜間寝ている間の頻尿は要注意です。本来、寝ているときはトイレに行けません。トイレに行けないということは、腎臓が寝ているときはトイレに行かないように調整しているのです。それが腎臓の機能が悪化すると、本来トイレに行かなくてもいいときに、尿がだだ漏れになっているので、結果的に目が覚めてしまいます。
編集部
腎臓の機能が低下すると充分な睡眠を確保することも難しくなってしまうのですね。
天野先生
腎臓の機能が低下すると、塩分や水分を体の外に出すことができなくなります。体の中に塩水が溜まってしまい、塩水のプールができてしまいます。人間は基本的に立っている生き物なので、主に足や下腿にむくみが出ることが腎臓の機能が下がったときの症状の一つです。足にむくみが出ること自体は人間の健康にとって影響はありませんが、むくみが出てくるときは1週間で体重が3~5kgも増えている状態になります。恐らく暴飲暴食したとしても1.2kgくらい体重が増えるくらいですが、短期間で3~5 kg以上増えるということは、病的な疾患が背景にないか考えます。
編集部
足にむくみができる分は命の危険性はないのですね。
天野先生
足の場合は命の危険性はないですが、塩水のプールが心臓や肺に溜まってしまうと心不全や呼吸困難になってしまい、最悪の場合、命の危険性もある状態になってしまいます。
腎臓悪化を防ぐ予防法について
編集部
腎臓悪化を防ぐ予防法はありますか?
天野先生
腎臓の機能低下を予防する方法を3つ説明します。
① 食生活の見直し
② 運動習慣
③ ストレスケア
になります。
編集部
腎臓の機能を予防する食生活は巷で色々言われていますが、具体的にはどんな食事がよいのでしょうか?
天野先生
シンプルに2つです。
① 減塩
② 植物性のタンパク質
大豆や豆類、ブロッコリーを多めに摂ることですね。
編集部
減塩は理想の量など決まっていますか?
天野先生
日本人は塩分をいっぱい摂ってしまう人種なので、塩分摂取は気をつけてほしいポイントです。過去の研究によると、日本人の塩分を摂る理由の食品の第1位がラーメンで、第2位がカレーライスです。減塩したい人はカレーライスとラーメンを避けることをお勧めしています。学会で塩分は1日6gを推奨していますが、現実的に6g制限をできる人はほぼいないのです。私は外来では、まず10gを切ることを目標にしています。10gの量は、ラーメン1杯汁まで飲んだら10gです。昼にラーメンを食べて夜にカレーライスを食べたらその時点でNGですので、ラーメンを食べてはいけないという話はではなく、汁を飲まなければ塩分は10gから5gになるのでスープを控えるだけでも違ってきます。
編集部
腎臓機能低下を予防する運動習慣について教えてください。
天野先生
昔は腎臓病の人は安静にしなきゃいけない、運動してはいけないといわれていましたが、最近の研究によると運動したほうが腎臓の機能が低下するスピードが遅かったり、心臓病や脳梗塞を合併したりするリスクが低いことがわかっています。
編集部
具体的にどのくらい運動したらいいのでしょうか?
天野先生
具体的には1日30分の運動を2回行ってほしいと患者さんに説明しています。過去の研究を見ると2回行ってトータル60分ぐらい行ったほうが少しずつアウトカムは良くなるのです。患者さんには、まずできることを30分×2回行ってくださいと説明しています。
編集部
ストレスケアについても教えてください。
天野先生
過度なストレスは血圧を上げてしまい、動脈硬化や高血圧、腎臓が悪化することにつながります。私がお勧めするポイントの一つとしては、マインドフルネスをお勧めしています。
編集部
マインドフルネスとは何ですか?
天野先生
マインドフルネスとは現代の瞑想です。寝る前や朝起きて5~10分でもいいので目をつぶって自分のことに集中することをいいます。マインドフルネスをすることによって、ストレスが軽減します。何か一つのことに集中して他のことを忘れることが大切なので、血圧上昇の予防やほかの生活習慣病の予防に繋がります。