「母親が更年期障害かも…」婦人科医に聞く家族の上手な付き合い方
病気や不調は家族関係という面においても、様々な困難となります。とくに、表面からはわかりにくく、本人も自覚がないうちにイライラしたりヒステリックになったりしてしまう「更年期障害」は、周りも対応に悩んでしまうと思います。今回は、更年期障害の原因や症状、家族の対応などについて、婦人科医の土屋先生(土屋産婦人科 院長)に伺いました。
監修医師:
土屋 眞弓(土屋産婦人科)
目次 -INDEX-
更年期障害とは? 原因やホルモンバランスの変化による諸症状を婦人科医が解説
編集部
更年期とは、いつの時期のことを指すのでしょうか?
土屋先生
一般的には、閉経の前後10年間を「更年期」と言います。現在、日本女性の平均閉経年齢は50.5歳なので個人差はありますが、一般的には40~60歳の間ということになりますね。
編集部
では、更年期障害とはなんでしょうか?
土屋先生
閉経前後、つまり更年期には様々なホルモンの分泌に変化がみられます。更年期障害は「エストロゲン」というホルモンの減少によって身体と心に表れる、発汗・肩こり・不眠・イライラなどの様々な不定愁訴やトラブルのことを言います。
編集部
更年期障害は必ず起こるのですか?
土屋先生
閉経に伴うエストロゲンの減少は必ず起こるので、何かしらの変化はあると言っていいと思います。ただし、出現する症状には個人差が大きいため、「ほとんど自覚症状がない」という人もいらっしゃいます。
編集部
更年期障害は、男性にも起こると聞いたことがあります。
土屋先生
そうですね。男性の更年期障害についてはまだ解明されていないことも多いのですが、近年では加齢による男性ホルモンの減少によって起こる「男性更年期障害」が注目されています。発症年齢や症状なども、女性の更年期障害と類似している部分が多いようです。
更年期障害の母親と家族の上手な関係性とは 不調やイライラの対処法や付き合い方
編集部
最近、母親がワガママだったりヒステリックだったりして、「更年期障害かも」と思うことがあります。
土屋先生
先ほどの更年期の年齢に当てはまり、さらに先述した症状がみられる場合には、更年期障害の可能性がありますね。「最近なんとなく喧嘩が多いな」とか「八つ当たりされてる?」と感じたら、更年期障害を疑ってもいいかもしれません。
編集部
更年期障害を見極めるポイントなどはありますか?
土屋先生
多くの医療機関で実際に用いられている「簡易更年期指数(SMI)チェック」というチェックリストがあります。下記の10項目について、症状をそれぞれ点数化し、合計点数によって評価します。
1.顔がほてる
2.汗をかきやすい
3.腰や手足が冷えやすい
4.息切れ、動悸がする
5.寝つきが悪い、または眠りが浅い
6.怒りやすく、すぐイライラする
7.くよくよしたり、憂うつになったりすることがある
8.頭痛、めまい、吐き気がよくある
9.疲れやすい
10.肩こり、腰痛、手足の痛みがある
編集部
チェックリストがあるのですね。
土屋先生
はい。ただし、こちらの評価はあくまで「目安」として捉えていただきたいです。例えば、40~60歳の女性に表れる疲れやすさや動悸などの理由が、必ずしも更年期障害というわけではありません。また、甲状腺の機能障害などでは更年期障害と似たような症状が出ることも多く、セルフチェックだけでは判断しにくいでしょう。そのため、当てはまる項目が多いからといって最初から更年期障害と決めつけるのは避けた方がいいと思います。耳鳴りがあれば耳鼻科、動悸や息切れがあれば循環器科といったように、症状に合った医療機関で検査してもらうことも大事です。
編集部
母親が更年期障害だった場合、接する際のコツやポイントなどはありますか?
土屋先生
更年期障害は「疲れやすい」「気分が落ち込みやすい」といった症状がありますので、家事を手伝ったり、無理のない範囲で趣味や散歩などのストレス解消を促したりしてあげることが大事だと思います。また、「物忘れ」も出てくるケースが多いので、一緒に確認したり、「明日は〇〇の予定だったよね?」などとマメに連絡を取ってあげたりするといいでしょう。
更年期障害の治療は方法がある? 母親の更年期障害が気になる場合、病院の受診を勧めるべき?
編集部
医療機関の受診も検討した方がいいでしょうか?
土屋先生
そうですね。先ほども述べましたが、ほかの病気が隠れていないかを確認することは重要です。また、ほかの病気ではなく更年期障害と診断がついた場合にも、様々な治療法があるので、婦人科をはじめとする医療機関に相談するのがおすすめです。
編集部
更年期障害の治療では、どのようなことをするのですか?
土屋先生
漢方薬や内服薬の処方、ホルモン補充療法などの治療を、症状にあわせておこないます。
編集部
自分でできる対策はありますか?
土屋先生
規則正しい日常生活を送ることで、更年期障害の改善が期待できると言われています。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、いわゆる「健康的な生活習慣」を意識してみましょう。これらの習慣は、更年期障害の「対策」だけでなく「予防」にも効果的とされています。とくに更年期は代謝が落ちやすいので、体重コントロールという意味でも適度な運動が重要です。また、ストレス解消になるような趣味や楽しみを見つけていただくのもいいですね。
編集部
更年期障害は改善を目指すことができるのですね。
土屋先生
はい。更年期で体の不調があった場合、まずは病気がないかを確かめることが第一段階です。はっきりとした異常が見つからなければ、更年期障害の疑いがあるので婦人科にご相談ください。漢方薬や内服薬の処方、ホルモン補充療法などを症状に合わせておこないます。また、ホルモン補充療法のなかにも飲み薬や貼り薬など、複数の方法があるため、一人ひとりに合った治療を相談しながら見つけていきます。加えて、薬に抵抗があるという人も、 婦人科に受診して悩みやストレスを話すだけでも楽になる場合もあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
土屋先生
自分の母親に更年期障害の症状がみられたとき、子側に更年期障害の知識があると、動揺せずに落ち着いて対処できると思います。「母が変わってしまった……」と悲観的になるのではなく、「更年期障害は治療可能なもの」と認識しておくだけでも違うでしょう。余裕を持って接するためにも、若いうちから更年期障害の理解を深めておくことも重要です。
編集部まとめ
更年期障害について、原因や家族としての対応方法などを解説していただきました。土屋先生のおっしゃる通り、きちんとした知識があれば親が更年期障害担った際も落ち着いて対応できると思いました。まずはほかの病気がないかを確認したうえで、婦人科に相談というステップで対応するのがいいとのことでした。更年期障害も治療可能なので、困ったら医療機関に相談しましょう。
医院情報
所在地 | 〒177-0041 東京都練馬区石神井町1-25-12 |
アクセス | 西武池袋線「石神井公園駅」 徒歩2分 |
診療科目 | 産科、婦人科、美容皮膚科 |