「豊胸手術」で後悔しないために 医師がリスク･デメリットを解説 安全にバストアップするにはどうしたらいい？

坂内先生

大きく分けて、豊胸手術には3つの方法があります。「シリコンバッグ豊胸」「ヒアルロン酸豊胸」「脂肪豊胸」です。

坂内先生

まず、シリコンバッグ豊胸は、文字通りシリコンバッグを胸の部分に入れてバストアップを図る方法です。切開する部位は、わきの下またはアンダーバストの2パターンがあります。

坂内先生

ヒアルロン酸を注入してバストアップを図る方法です。注射をするだけなのでダウンタイムが短く、痛みが少ないという特徴があります。傷跡も2mm以下で、ほとんどわからない点もメリットです。

坂内先生

脂肪豊胸は、自分の脂肪を吸引してバストに注入する方法です。シリコンバッグ豊胸やヒアルロン酸豊胸のように異物を使用せず、自分の細胞を移植するのでアレルギーなどの副作用が少なく、ほかの術式と比べて安全性が高いとされています。

坂内先生

まずシリコンバッグ豊胸の場合、傷跡が3～5cm残ります。時間の経過とともに薄くなるとはいえ、大きな傷跡を残したくない人には不向きと言えるでしょう。また、「動きや感触が不自然」「シリコンバッグが破損する場合がある」などのリスクもあります。

坂内先生

そうです。そのため、通常は手術後10年を目処に取り出すと考えておいた方がいいです。また、シリコンバッグの破損の有無にかかわらず、ここ数年でシリコンバッグが原因となる疾患も報告されていますよ。

坂内先生

ヒアルロン酸豊胸は比較的お手軽な方法ですが、その反面「感触が硬くてバストに動きがない」「持続期間が短い」「最大で1カップくらいアップさせるのが限界」という欠点もあります。加えて、ヒアルロン酸がしこりになったり、異物反応が起きたり、術後に胸の上部などの不自然な位置に移動してこぶになったりすることもあります。

坂内先生

そうですね。さらに、ヒアルロン酸豊胸は「一度注入したら取り出せない」こともリスクになります。一応、溶解剤もありますが、完全に溶かすことは難しいのが現状です。

坂内先生

はい。2022年秋には、日本美容外科学会から「ヒアルロン酸豊胸は豊胸目的に推奨しない」という発表がありました。私自身もその意見に賛成です。

坂内先生

脂肪を吸引するため、痩せ型で細身の人には難しい場合もあります。また、ヒアルロン酸豊胸と同様に、しこりができることもあります。それから、医師の技量にも大きく左右されるので、あまり経験のない人が施術をおこなうと、脂肪吸引をした部位が凹凸になってしまったり、バストの形が不自然になったりするリスクもあります。

坂内先生

まずは、豊胸手術の各術式についてメリットとデメリットをしっかり理解することが大切です。ただ単に胸を大きくしたいだけならシリコンバッグ豊胸が適しているかもしれません。しかし、感触などが不自然で、なにより破損した場合には入れ替えが必要になります。たとえ破損しなかったとしても、10年を目安に取り出さなければいけません。

坂内先生

そうですね。どのクリニックでも事前にカウンセリングをおこなっていると思います。その際、実際の症例写真を見せてもらって、仕上がりのイメージについて確認しましょう。また、メリットとデメリットの説明をしっかり受けて、ダウンタイムやリスクについても納得してから施術に臨むことも大切です。

坂内先生

豊胸手術をした後でも、胸部レントゲンやCT、MRIなどの検査は受けることができます。しかし、シリコンバッグ豊胸をした後は、シリコンバッグがばっちり写るのでバレてしまいますよ。また、シリコンバッグ豊胸後はマンモグラフィ検査を受けられない場合があるということも覚えておく必要があります。

坂内先生

マンモグラフィ検査は胸を圧迫して撮影するため、その際にバッグが破損するリスクが高いためです。また、どの術式にも言えますが、豊胸手術後の数カ月間は乳がん検診も受けられなくなります。そのため、豊胸手術を受ける場合は、事前に乳がん検診を受けておくことをおすすめします。

坂内先生

現在、学会が認めているのはシリコンバッグ豊胸と脂肪豊胸の2種類ですが、シリコンバッグ豊胸は、シリコンバッグが原因と考えられる疾患が報告されています。そう考えると、自分の組織でできる脂肪豊胸をおこなうのが安全であると考えます。実際にここ数年でも、シリコンバッグ豊胸よりも脂肪豊胸を受ける人の方が増えており、今後もその流れが続くと思われます。一度で大きくサイズアップしたいならシリコンバッグ豊胸が適しているかもしれませんが、大事なご自分の体ですから安全性や健康被害なども考えたうえで、入念に術式を選択することが必要です。