【闘病】「脊髄小脳変性症」 絶望することになった「進行性の治らない病」
遺伝性の脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)を患っている佐藤寿子さん。根治できる治療法はないと言われ、一時はどん底まで落ちたといいます。しかし、自らを奮い立たせ、現在は4歳のお子さんを一生懸命育てながら、生活しています。あまり聞き慣れない「脊髄小脳変性症」とはどのような病気なのか、詳しく教えてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年5月取材。
体験者プロフィール:
佐藤 寿子
1981年生まれ、福島県在住。夫と4歳の娘と暮らしている。21歳で上京した際、ストレスにより突然字が書けなくなり神経内科を受診。社会不安障害と診断され、投薬を続ける。様々な病院で検査を受けるものの異常なしと診断される。正式に遺伝性の脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)と診断されたときは、専業主婦で子育て中(子どもが1歳のときに診断された)。現在は服薬と食事や生活習慣などを見直しながら生活している。ブログ
記事監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
突然字が書けなくなり病院を受診
編集部
まず初めに、脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。以下同)とはどのような病気なのでしょうか?
佐藤さん
平衡感覚を司る小脳が委縮してしまう病気です。症状としては人によって様々なのですが、私の場合「歩くとふらつく」「階段の上り下りに手すりが必要」「まっすぐ立つのが困難(小刻みにふるえる)」といったものが主な症状です。
編集部
それらの症状はどのくらい前から表れていたのでしょうか?
佐藤さん
字をうまく書けなくなったのは、20年ぐらい前からです。歩くときにふらついたり、階段の上り下りに手すりが必要となったりしたのは、ここ3年くらいのことです(取材時)。それまでは、普通にジョギングを楽しむこともできていました。いま思うと進行性というのを実感しますが、いろいろな方の話を聞く限り、私の進行のスピードはかなり遅いようで、「もしかするとこれ以上進まないのかもしれないと思うほど遅い」と言われたこともあります。
編集部
脊髄小脳変性症が判明した経緯について教えてください。
佐藤さん
字が書きにくい状態が続いていたのと、歩行に違和感があったので、最初は幼いころからのかかりつけの接骨院の先生に相談しました。すると「もしかするとね、小脳かもしれないから」と、今通院している病院を紹介してもらい、その病院にてMRIを撮って判明しました。それまでに他院で何度もMRIを撮っても分からなかったのは、画像の切り方によるものだったそうです。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
佐藤さん
今は根治方法が見つかっていないそうで、病状はゆっくり進行していき、最終的には車いすになる。薬でその進行を遅らせるしかないと言われました。
治療法がないと言われ絶望感に襲われた
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
佐藤さん
絶望しかありませんでした。子どものこと、夫のこと、歩けなくなるかもしれないこと……。将来を考えて、夫には離婚を切り出しました。歩けなくなる可能性が高いし、迷惑をかけたくなかったので。でも、すぐに否定されました。「俺より年上だし、介護が少し早まるだけでしょ」と言ってくれました。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
佐藤さん
やはり歩くのが少し困難な部分もあるので、その部分ですかね。でも「ものすごく不自由」とは感じていません。ただ、病気を知らない人の前で歩くときは、やはり少し緊張しますね。
家族の理解が心の支えに
編集部
治療中の心の支えになっているものを教えてください。
佐藤さん
薬の服用していることで、安心感はあります。あとは家族の理解はありがたいですね。子どもはまだ無邪気に手を引っ張って走り出すこともありますが、リハビリと思って「ママはゆっくりねー」と言いながら付き合っています。全速力の遊びは夫が相手をしてくれています。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
佐藤さん
現在(取材時)はランドセンを2錠、セレジストODを1錠、1日2回服用しています。主治医には調子がよかったら1回だけでもいいし、体調見て決めていいと言われています。
編集部
同じ病気で悩んでいる人へのアドバイスなどはありますか?
佐藤さん
体のどこかに不安を抱えているようだったら、周りの人にその不安な気持ちや、手伝ってほしいと思っていることを話してみてください。そうすることで、心が楽になると思います。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
佐藤さん
手を貸してくださったり、薬に対しての不安なことだったりも毎回説明してくださり、とても感謝しています。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
佐藤さん
様々な病気がありますが、多くの方がきっと「克服したい」と思っていると思います。私みたいに一度どん底まで落ち込んでもいいと思いますが、とにかく何か病気を患っても、大好きなことをできる範囲でやりながら毎日を過ごしてほしいです。そうすれば、何かしら克服の手がかりが見つかるかもしれません。私が脊髄小脳変性症を患ったときのストーリーなど詳しくブログに載せています。よかったら読んでみてください(プロフィール参照)。
編集部まとめ
子育てをしていると自由に動き回る子どもを追いかけたり、一緒に鬼ごっこをしたりするなど走る場面が多くあります。思うように走れずもどかしさを感じることもあると思いますが、佐藤さんはご主人の協力を得ながらしっかりとお子さんを育てていらっしゃるのだなと実感させられるお話でした。また、佐藤さんのお話を聞いて、自分の身体に違和感を覚えたら、なるべく早めに受診することが大切だと感じました。