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「脊髄小脳変性症(SCD)」の初期症状や原因・余命への影響はご存じですか?

 公開日:2023/07/27
「脊髄小脳変性症(SCD)」の初期症状や原因・余命への影響はご存じですか?

脊髄小脳変性症とは、脊髄・小脳の神経細胞が何らかの原因で壊されることによって様々な症状が起こる神経の病気の総称です。1つの病気の名称ではなく、病型が多々あります。そのため、病気の進行・経過・症状も異なります。

今回は、脊髄小脳変性症の症状・原因から、検査・治療に至るまでをまとめました。過去にドラマで取り上げられたことから認知度が上がっている疾患ですが、正しい知識を深めてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

脊髄小脳変性症(SCD)の症状と原因

頭に手をあてる女性

脊髄小脳変性症(SCD)はどのような病気ですか?

小脳を始めとして様々な神経に障害が起こることによって生じる疾患の総称です。病気の総称なので、多くの疾患をまとめて脊髄小脳変性症と呼びます。変性とは、はっきりとした原因がわからないことをいいます。
小脳の他にも大脳・脳幹・脊髄・末梢神経などに原因不明の障害が起こるため、変性が起こった場所によって症状・疾患名は異なるのが特徴です。身体を上手く動かせないといった運動失調・歩行障害・パーキンソン症状などは、すべて脊髄小脳変性症に含まれます。
日本では、30%が遺伝性・70%が非遺伝性です。非遺伝性の疾患は孤発性ともいわれます。非遺伝性は多系統萎縮症・皮質性小脳萎縮症の2種類に分かれ、遺伝性は常染色体優性遺伝・常染色体劣性遺伝・X連鎖遺伝・ミトコンドリア遺伝の4つに分かれます。遺伝性の90%以上が常染色体優性遺伝です。

脊髄小脳変性症(SCD)の原因を教えてください。

日本においては、30%は遺伝が原因です。欧米と比較すると遺伝性と非遺伝性の割合が大きく異なるので、日本の場合の話になるのですが、日本と海外で割合が異なる理由は分かっていません。遺伝子疾患の研究が進み、たとえ同じ遺伝子が原因であったとしても関連する染色体は異なっており、発症年齢・症状・進行度が違うことが分かっています。
遺伝性の中でも、頻度が高い病気については原因となる遺伝子が何か分かっていますが、遺伝による発症を防ぐ方法は分からないままです。そのため、病気を予防することはできません。
遺伝が全く関係のない残りの70%の原因としては、脳細胞に存在しているバークマングリアという細胞が関与していることが分かっていますが、それ以上は未だ研究段階にあります。現在も原因の研究は続いており、原因が分かれば病気を予防する方法も見つかることでしょう。

脊髄小脳変性症(SCD)の症状を教えてください。

小脳・脊髄は、身体を支えたり言葉を発したりするための筋力バランス・歩行の調整を担当しています。そのため、歩行障害・呂律が回らない・手の震え・四肢の突っ張り・けいれん・ジストニアといった症状が代表的です。全く動かせない麻痺と違って、動かせるけれど上手く動かせないといった症状が中心です。
病気によって症状の重症度・進行度は異なります。中には幻視・失語・失認などの認知症症状があったり、進行してくると自律神経にも障害が出てきたりするため呼吸・血圧の調整が難しくなり、自宅での生活ができなくなることもあります。

それぞれの病型にはどのような特徴がありますか?

この病気は大きく7つの病型に分類されます。以下に示します。

  • 皮質性小脳萎縮症
  • 脊髄小脳失調症1型
  • 脊髄小脳失調症2型
  • 脊髄小脳失調症3型
  • 脊髄小脳失調症6型
  • 脊髄小脳失調症31型
  • 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症

皮質性小脳萎縮症は高齢者に多く、ゆっくりとした進行が特徴です。脊髄小脳失調症1型は30〜40代での発症が多く、呂律が回らない・よく転ぶなどの典型的な症状の他、パーキンソン症状・認知機能症状・末梢神経障害症状がみられます。
脊髄小脳失調症2型は幅広い年代での発症がみられ、初期の段階から眼の異常・末梢神経障害が起こるのが特徴です。脊髄小脳失調症3型は日本で最も多い遺伝性の脊髄小脳変性症といわれており、症状が様々なため更に分類されます。
脊髄小脳失調症6型は病気の中でも2番目に多い病型で、呂律が回らない・よく転ぶなどの典型的な症状のみです。脊髄小脳失調症31型は日本だけに存在する病型であり、典型的な症状以外はあまりイレギュラーな症状がありません。
歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症は発症年齢によって、症状が異なる特徴をもっています。

脊髄小脳変性症(SCD)の診断と治療

医師と話す男性

初期症状を教えてください。

物を落とす・歩行がおぼつく・呂律が回りにくいといった運動失調症状があるならば、脳に異常をきたし始めているサインです。まず神経内科を受診しましょう。
四肢のふるえ・動きの緩慢さ・すくみ足はパーキンソン症状にあたりますから、やはり受診を検討してください。この病気は病型によって症状が異なるため、初期症状も異なるのですがいずれも運動失調症状が中心となります。
もし運動失調がこの病気によるものでなかったとしても、違う病気の可能性があります。いつもと違うと感じたら受診を検討しましょう。

脊髄小脳変性症(SCD)はどのように診断されますか?

まずは、これまでの病気や生活習慣などの問診と神経学的診察が行われます。小脳失調症状だけでなく、パーキンソン症状・末梢神経障害症状などの詳しい診察を受け、その後採血・神経学的検査・CT・MRI・脳血流シンチグラフィーといった必要な検査を行うことで診断が可能です。
遺伝子診断に関しては、遺伝性の病気は本人・家族にとって精神的に大きな負担となることが予想されることから安易に行ってはいけません。成人していること・遺伝性かどうかを診断して欲しいという本人の自発的な意思があることの2つが揃った場合に限り実施されます。
ただし家族の中に症状がある人がいなくても、遺伝性でないとは限りません。これまでの研究で、家族に病歴がないのにも関わらず遺伝性脊髄小脳変性症と診断されたケースが報告されています。

脊髄小脳変性症(SCD)の治療方法を教えてください。

現時点で治療法は研究段階であり、確実な薬はみつかっていません。そのため症状に対しての対症療法やリハビリテーションによる筋力保持が行われます。
運動失調症に対しては甲状腺ホルモンを刺激するセレジスト(タルチレリン)という内服薬が一般に用いられていますが、この病気は様々な疾患が組み合わさっているため、1つの内服薬によって治るわけではありません。症状に合わせて軽快を目的とした内服薬が処方されますが、治療薬ではないため注意が必要です。
担当医と相談しながら前向きに治療を行いましょう。

脊髄小脳変性症(SCD)の注意点

介護

余命に影響はありますか?

病気の型によって進行度は異なりますし、個人差も大きいため予後は人によって違います。ただ病気の症状が直接的な死因になることはありません。
進行によって寝たきりになったり合併症を発症したりすることが原因のため、余命の正確な判断は非常に難しいことです。進行がゆっくりな場合は、10年・20年といった長い年月をかけて段々と寝たきりになり、天寿をまっとうします。
身体の機能が少しずつ衰えていき、寝たきりになって、床ずれや骨折などの2次障害が発症すると余命に影響するといえます。

日常生活で気をつけることはありますか?

病気が進行してくると出来ないことが少しずつ増えますが、決して悲観的にならず前向きに治療に取り組みましょう。病気によって、運動失調が起こっても筋力が低下しているわけではありません。ゆっくりと正確に行えば動作の維持が可能な場合もあります。
運動失調を理由にやってみることを諦めてしまうと、筋力が低下してしまいます。自分の身体の状態を理解して、できそうなことは継続しましょう。使うことで身体の機能の維持に繋がります。

介護する上で意識すべきことを教えてください。

この病気の患者は、運動失調によるふらつき・口腔内機能の低下が顕著に現れます。歩行にふらつきがみられて転んでしまうと、怪我・骨折などの2次障害が発生するため、まずは転倒予防を行いましょう。
飲食時の飲み込みにくさから誤嚥の恐れもあるため、その時の口腔状態を把握し、本人に合った形態の食事を用意します。何より、本人の精神的支えとなるよう前向きな姿勢が大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

この病気は治療法が確立されていない難病ですが、1人で悩まず担当医・看護師・理学療法士・家族など周りの人を頼ることが大切です。症状を軽くする薬を内服したり、リハビリテーションを行ったりすれば現状を保つことができる場合もあります。
本人・介護する家族をサポートする制度もあるため、公的機関に相談して使用できるサービスは取り入れましょう。

編集部まとめ

車椅子の女性
脊髄小脳変性症は小脳を中心とした神経に何らかの障害が起こることで発症する疾患の総称です。発症する症状は人によって異なりますが、運動失調が主体となります。

現時点では確実な治療法は分かっていませんが、遺伝性の場合、どの染色体異常によるものかが判明しているため治療法の研究が進んでいます。

今現在も研究は行われているため、どうか前向きな姿勢で治療に取り組んでください。

この記事の監修医師