【闘病】私の「疲れ」の正体は「重症筋無力症」という難病だった
インターネットでたくさんの情報が簡単に手に入るようになった現在、何らかの病気だと診断されたら、多くの人が病名を検索しているようです。そんな時、わかりやすい病気の解説や治療に前向きになれる情報と出会うことが出来るかどうかでも、病気との向き合い方は変わってくるのかもしれません。重症筋無力症を患い、そこから自らも「情報発信する側」となったというamiさん(仮称)に、発症・診断からこれまでの話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年7月取材。
体験者プロフィール:
amiさん(仮称)
1992年生まれ。山口県在住。2016年に重症筋無力症と診断される。現在はダンス講師を続けながら、難病についての理解を深める為に、YouTubeなどで情報発信を行っている。
https://youtube.com/channel/UC-EW0RGnT29HXx7n-GD2OhQ
記事監修医師:
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
最初は「疲れかな?」という程度だった
編集部
最初に不調や違和感があったのはどのような状況でしたか?
amiさん
2016年10月ごろ。24歳の時でした。夜になると、左目の瞼が落ちてきてしまう症状がありました。「疲れかな?」と思っていましたが、段々と腕や足に力が入らなくなってきました。
編集部
病院の受診から、診断に至るまでの経緯を教えてください。
amiさん
昔から扁桃腺炎を繰り返していたのですが、23歳の時に扁桃腺炎による発熱で2回入院したのをきっかけに、扁桃腺の摘出をしました。その際、医師から「腎臓の数値が良くない」と言われたので、近くの腎臓内科で1年ほど経過観察をしました。説明で自己免疫系と言われましたが、詳しくは覚えていません。
編集部
経過観察中に瞼が落ちるようになったということですか?
amiさん
はい。24歳で眼瞼下垂があり、近くの眼科に行きました。その際、この年齢で片方の眼瞼下垂になるのは何かしらの原因があること、また自己免疫関連の検査結果の数値が高く、通院も行っていることから重症筋無力症の疑いがあると言われました。
編集部
そこからどうなったのですか?
amiさん
結局、経過観察で通っていた病院の神経内科で簡単な検査をして、国立病院の神経内科を受診することになりました。2週間の検査入院を経て、「血液検査は陰性だけどテンシロンテストは陽性」とのことで、さらに別の大学病院を紹介されました。そこで、筋電図など詳しい検査をして、確定診断となりました。最初の眼瞼下垂から約3ヶ月が経っていました。
編集部
「重症筋無力症」はどんな病気なのでしょうか?
amiさん
「重症筋無力症」という自己免疫の病気で、筋力の低下、疲れやすさなどがあり、人によって全身型と眼症状のみの方がいます。私は全身型でした。同じタイプでも、詳細な症状や治療内容は、人それぞれ違うようです。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
amiさん
まずは、胸腺の摘出をしてから、ステロイドの服用で様子を見ていくと説明を受けました。重症筋無力症の中でも、いくつかの条件を満たしている患者は、胸腺摘出術の治療を行うとのことで、私もそれに該当したようです。
毎日泣いて過ごしていた
編集部
病気が判明したときの心境を教えてください。
amiさん
夢を叶えるための一歩を踏み出した時だったので、簡単には受け入れられませんでした。症状が出てから病名がわかるまでの3ヶ月間、周囲からは「精神的なものかもよ」「きっと大丈夫だよ」と言われていたので、自分自身もどこかで「精神的なものだから、休めば治る」と思っていたのです。しかし、確定診断がつき、「難病」という現実を突きつけられると、これからどうなるんだろうという不安で、毎日泣いて過ごしていました。
編集部
実際の治療はどのように進みましたか?
amiさん
予定通り、胸腺摘出手術後に、ステロイドの服用を始めました。その時は、初期増悪などもあるため、1ヶ月経過観察入院をしました。その約1年後に、3ヶ月に1回の免疫グロブリン製剤の点滴治療を2セット行ったのですが効果を感じられず、免疫抑制剤「タクロリムス」の服用を始めました。
編集部
治療や闘病生活の中で、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。
amiさん
とにかく薬による副作用が辛かったです。体重増加、ムーンフェイス、むし歯、肌荒れ、不眠、ポリープなど、さまざまな副作用が出てしまいました。
編集部
病気の前後で変化したことを教えてください。
amiさん
人付き合いが楽になりました。改めて「自分の辛い状況の時にそばで支えてくれる人を大切にしよう」と思いました。また、出来ないことよりも出来ること、出来るようになったことに焦点を置くと、ポジティブでいられるようになったと思います。人間なのでイライラすることはありますが、病気になった後の方が物事の捉え方には余裕が出てきたのではないかと思います。もちろん「病気になってよかった」とまでは思えませんが、病気になる前には気付かなかったことに気付くことが出来ましたし、考え方も変わったので「病気になったことにも意味があるのかもしれないな」と思っています。
編集部
今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?
amiさん
何をしていても発病はしていたのではないかと思うので、特に後悔などはありません。同じ病気を患うほかの方も後悔することのないように、またこの病気に対する社会の理解が少しでも深まるように、私の経験が役に立てばいいなと思います。
「検索魔」から「発信者」へ
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
amiさん
現在妊娠7ヶ月(取材時)に入ったところなのですが、実は妊娠してから全く症状が出ていません。妊娠すると一時的に良くなることもあるとは聞いていましたが、幸いにも良い経過です。医師と相談のうえ、薬の服用は続けていますが「薬も要らないのでは?」と思うほどです。産後にまた症状が一時的に悪化するようですが、今はとても調子がいいです。
編集部
医療機関や医療従事者に望むことはありますか?
amiさん
私の場合は、早期発見・診断されたたこと、また治療が私に合っていたこともあり、感謝しかありません。入院や通院時は、担当の先生をはじめ看護師さんなど皆優しく対応してくれたので、質問や相談もしやすかったです。しかし、中には何年も正しい診断がつかず、治療がなかなか思うようにいかなかったという方もいますし、地域によっては専門医がおらず、周囲に理解されずに心無い言葉を言われて傷ついたという方のお話を聞いたこともあります。難病なので、全ての病院で診断や治療をしてもらうのは難しいとは思いますが、もっと難病患者に寄り添ってくれる医療機関が増えるといいなと思います。
編集部
同じ病気で悩んでいる人や疑いのある人へのアドバイスがあれば聞かせてください。
amiさん
症状が出たとき、診断されたとき、治療を始めるとき、様々な不安が襲ってくると思います。私もそうで、検索魔になっていました。それなのに、必要な情報は探し出せず、難しい専門用語ばかりでは、ただでさえ体調不良なのに、心身ともに疲れ果てて負のループに陥っていきます。最も大切なのは、担当医と信頼関係を築くことが出来ているかだと思います。医師との信頼関係は1番の安心材料になるはずです。自分の身体のことなので、遠慮せず、納得いくまで質問してみてください。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
amiさん
自分自身の経験を分かりやすい言葉で少しでも共有したいと思い、YouTubeで病気についての発信を始めました(プロフィール参照)。患者本人だけでなく、周りの方にも理解を深めてもらいたいし、難病への思いやりが深まればいいなと思います。そして、同じ病気に苦しむ方が少しでも穏やかに過ごせる世界になることを願っています。
編集部まとめ
検索をしても「必要な情報はなく、難しい専門用語ばかりだった」というamiさん。自身が発信する側となり、病気についての情報共有の場を作られたことは、ほかの多くの患者さんの役に立っているはずです。一方で「医師との信頼関係は1番の安心材料になる」という言葉も印象的でした。ネットからの情報収集も大事ですが、ぜひ主治医との信頼関係を大切にしてください。